事業を通じたSDGsへの取り組み

これまでの貢献とSDGs

当社は、SDGsが採択される以前から、社是である「科学技術で社会に貢献する」を胸に真摯に社会の課題と向き合い、事業を通じてその解決に直接的・間接的に取り組んできました。
SDGsによって目標、ターゲットが具体的に明示されたことを機に、当社がこれまで取り組んできた社会課題の解決との関係性を見えるようにしました。
これによって、当社の事業がいかに多くの社会課題と関係し、またその解決の一助となってきたのかを示すこととなり、これまでの事業の方向性が社会と一致していたということを再認識することができました。
次に私たちは、SDGsが描く2030年の将来に向け、具体的にどのような事業活動を通じて社会課題を解決するのか“見える化”を試みました。これまでの事業に加え、これから実施していく将来の戦略的CSR活動(事業を通じた社会課題の解決)と基盤的CSR活動(社会の一員としての責任ある活動)の両面から貢献度を見直しました。これにより、共有価値の創造に向け、それぞれの取り組みを加速させていきます。

SDGsに関連した活動の経緯

SDGsに関連した活動の経緯

企業活動とSDGsとの関係

企業活動とSDGsとの関係

SDGsに対する事業での貢献度分布

SDGsに対する事業での貢献度分布

※注
「社会への貢献度」:基盤的CSR活動による貢献
「事業活動での貢献度」:CSV(戦略的CSR活動)と基盤的CSR活動の両面による貢献
 

この分布図は、社員の自社に対する認識を整理するために作成したものです。「社会の一員としての責任ある活動(CSR)」については、外部からの評価と社員による認識にずれがある項目もみられましたが、これは、外部からの評価が高くとも社内では当たり前と認識されている場合があるためだと考えています。

作成方法は以下の通りです。
(1) 全部門が169のターゲットごとに「社会の一員としての責任ある活動(CSR)」と「事業を通じた社会課題の解決(CSV)」の二つの視点で、「現在取り組んでいるテーマ」と「将来取り組もうとしているテーマ」をリストアップ。
(2) リストアップされたテーマを、重要度から高中低の3段階に分け得点化し、CSRとCSVの二つの視点で、17の目標毎に得点を合算。
(3) CSVの得点を横軸、CSRとCSVを合算した得点を縦軸とし、17の目標毎に、現在取り組んでいるテーマの得点を、分布図上の丸印で表した。
(4) CSVの得点を横軸、CSRとCSVを合算した得点を縦軸とし、17の目標毎に、現在取り組んでいるテーマと将来取り組むテーマの得点を合算したものを、分布図上のSDGsロゴで表した。
(5) 17の目標毎に、(3)から(4)への変化を矢印で表した。

SDGsターゲットレベルでの取り組み実績

目標 ターゲット 島津のこれまでの取り組み(一例)
3.2
全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3
2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。
3.4
2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5
薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
  • 薬物乱用の防止・治療の支援
3.6
2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
  • 自動運転開発を支援(自動車の前方衝突回避システムに用いられるミリ波レーダー用成膜装置)
3.9
2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
6.3
2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。
  • 水、大気、土壌中の環境汚染物質や環境ホルモンの測定、モニタリング
    マイクロプラスチックの分析手法
  • 排水管理(半導体製造などの洗浄工程における不純物金属のモニタ機器)
7.3
2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
11.4
世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
  • 文化財保存のための成分分析・内部観察
11.6
2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
  • 環境保全・規制に向けた測定やモニタリング
  • RoHS規制物質を測定するシステムの提供
    RoHS/ELV指令
  • 環境に優しい新素材開発を支援
  • 新エネルギー開発を支援(リチウムイオン二次電池、燃料電池などの研究開発と品質管理、評価の支援)
  • 新素材開発を支援(CFRP(鉄鋼に代わる新素材)の評価装置)
12.4
2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
8.7
強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点で
SDGsを事業機会と捉え共有価値を創造

私たちは、事業との関係性だけでなく、これからの経営における重要な事業機会としてSDGsを捉えるためにバリューチェーン全体で、SDGsが経営に及ぼす影響を検討しました。これによって、今後優先的に取り組むべき課題を明らかにできると考えるからです。
SDGsが示す地球規模の課題は、私たちの事業領域である「人の健康」「安心・安全な社会」「産業の発展」の課題であるともいえ、革新的で有効な解決策を提供することは、事業拡大につながると考えます。
一方で、バリューチェーン上では少なからず負の影響を与えることもあります。これらの課題に対しても、持続可能な社会への配慮に取り組むことで、品質の向上や操業効率の向上、ブランド力の強化といった負から正への方向へと転換させることができると考えています。

「島津製作所の森」の間伐材を使用したSDGsバッジの製作

 

京都モデルフォレスト運動に参画して2008年から森林保全活動を行っている「島津製作所の森」(京都府南丹市八木町)で発生した間伐材を使用して、独自のSDGsバッジを製作しました。 社内外に対してSDGsの啓発を進めることを目的としたもので、当社内で実施した講演会やE-learningにより、SDGsと当社との関係性を理解した国内外の島津グループ従業員及び代理店、サプライヤの方が着用しています。この取り組みを通して、これまでに島津グループ全体でおよそ3,000人の従業員及び代理店、サプライヤの方にSDGsバッジを配布しています。

バッジの製作にあたっては、森林組合・製材所の方々の手を経て、京都市内の木工所で加工しており、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」のもと、地域固有の生態系の保全および林業の振興に寄与しています。また、ゴール8「働きがいも経済成長も」に沿い、障がい者の方も製作作業に加わっています。

地域社会における新たな連携

当社は、大学・研究機関、医療機関、自治体、多様な業種の企業などに所属されるお客様に対して、事業活動を通じたソリューションを提供することで、課題解決に向けた取り組みを支援してきました。このお客様が抱える課題の背景には、お客様のステークホルダーが抱えている、さらに上位の課題や社会としての困りごとが存在しています。これらの社会課題を間接的に解決し、新たなイノベーションの創出を支援することが、当社の持続可能な社会の実現に向けた1つの役割であると認識しています。
一方、社会における本質的な課題を迅速に解決していくためには、何よりもまず「社会課題を見つける」ことが出発点となります。その上で、見つけ出した社会課題に対して、既存技術の応用に留まらず、新たな技術や仕組みも活用しながら、「課題解決に向けたソリューションを提供する」ことが必要となります。この一連のプロセスに対して単独の企業のみで取り組むことは極めて難しいため、最先端の技術開発や専門的知見、さらには多様なステークホルダーからの声が集約されたパートナーの存在が不可欠です。
そこで当社は、当社以上に幅広いステークホルダーとのネットワークを有しており、多様な社会課題が集まりやすい環境にある大学・研究機関や、地域金融機関をパートナーとした新たな連携を進めています。まだスタートしたばかりの取り組みではありますが、それぞれのパートナーとの強みや資源を融合しながら新たな社会課題を掘り起こし、持続可能な未来に貢献できる事業活動の拡大を目指しています。

京都銀行と持続可能な社会の実現に向けた包括連携協定を締結

昨今、持続可能な社会の実現に向けて、取引先や地域社会の活動を支援する金融機関が全国的に増加し、その取り組みが活発化しています。金融商品の提供に留まらず、取引先の間を仲介するビジネスマッチングやコンサルティングなどを通じて、様々な社会課題が金融機関に集まりやすい状況となっています。
このような中、当社は同じ京都を本拠地とする株式会社京都銀行(以下、京都銀行)と、 2021年12月に「持続可能な社会の実現に向けた包括連携協定」を締結しました。全国的にも例の少ない製造業と金融機関の包括連携により、双方の経営資源を有効に活用して、地域の持続的な成長や活性化の実現を目指します。
具体的な取り組みとしては、当社は京都銀行の取引先が抱える技術的な課題に対して、分析・計測などの科学技術を通じたソリューションを提供し、新素材開発や環境負荷低減などの取り組みを支援します。また、京都銀行は、島津協力会をはじめとした当社サプライヤの省エネ推進やSDGsの取り組み推進支援などに向けた融資やコンサルティングサービスを提供し、サプライチェーンの強化を支援します。 
この相互連携の取り組みを通じて、それぞれに新たな事業活動やビジネスチャンスの獲得に結び付けながら、地域産業の活性化を通じた社会の持続的な成長に寄与していきます。

協定書を手にする土井伸宏・京都銀行取締役頭取(左)と上田輝久・当社会長(当時、社長) (右)協定書を手にする土井伸宏・京都銀行取締役頭取(左)と上田輝久・当社会長(当時、社長) (右)

京都銀行と持続可能な社会の実現に向けた包括連携協定

 

京都銀行と持続可能な社会の実現に向けた包括連携協定を締結
社会課題の解決に向けて製造業・金融機関で協業

京都銀行のご担当者様からのコメントはこちら

関西大学のSDGsパートナーに認定

学校法人関西大学( 以下、関西大学)と当社は、2019年以降、SDGs達成への貢献をテーマとした意見交換を通じて、相互のリソースや課題認識を共有しながら、両者のパートナーシップの方策を模索してきました。
2021年4月に関西大学がSDGsパートナー制度を創設したことを受けて、当社はSDGsパートナーとしての申請を行い、同年6月に認定を受けました。本制度は、産学官の人的および知的資源を交流させ、物的資源を相互に活用していくことによって、SDGsの達成に向けた活動を一層推進していく取り組みで、様々な業種の企業や自治体などが参画しています。
パートナー認定を受けて以降、当社は関西大学が実施する講義の中でSDGsへの取り組みを紹介したり、関西大学イノベーション創生センターが主催する企業見学会の受入を通じて、起業家を目指す学生の方々に対して創業以来の社会課題解決の歴史を紹介するなど、まずは教育活動を通じた次世代育成に協力してきました。
今後も相互の実践事例を学び合いながら、関西大学における最先端の研究開発への貢献も通じて、さらなる課題解決とSDGs達成への貢献を目指します。

 

関西大学のSDGsパートナーに認定されました
関西大学のご担当者様からのコメントはこちら

関西大学イノベーション創生センター主催の見学会の様子
関西大学イノベーション創生センター主催の見学会の様子

関連情報