社外取締役メッセージ

イノベーションを後押しするために、コーポレート部門の変革を促す

社会を苦しめ、停滞の原因になったコロナ禍が、ようやく収まり、市井に活況が戻ってきました。島津は、3期連続過去最高の業績を達成でき喜ばしいことです。しかし、昨年度の実績は、円安に助けられ、実質的には緊迫感を持つべき結果になっています。
私たち社外役員の中で定期的に意見交換し、重要な経営課題を経営トップに提言し、早期の解決や注力を促しています。しかし、昨年度は、皮肉にも私たちの提言が適正であったとわかる事案が発生し、その対処に取締役会の時間が多く費やされることになり、誠に残念でした。島津の長い歴史は、素晴らしい結果ではありますが、未来の成功を担保するものではありません。当社の現在の立ち位置、その成長の可能性を鑑みると、過去の実績やあり様に留まろうとするのはよろしくないと思います。これまでのやり方と訣別するグループガバナンスや、多様な人材の育成などの重要課題の解決のために新しい仕組みを作らなければ、大きな障害となるのは明白です。事業成長のための研究開発やM&Aが順調に進捗したとしても、コーポレート分野の変革が後からついていくアプローチは、せっかくの事業拡大の機会を最大に活用できません。取締役会の実効性を高め、執行体制に必要なガイダンスを提供し、よりスピード感を持って、グローバル企業としてふさわしい姿になるよう行動変容を促してまいります。

社外取締役 和田 浩子

社外取締役 和田 浩子

画期的新製品を生み出すために、自前主義から脱却しよう

島津製作所のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が、本年4月にスタートした。社員がノーベル賞を受賞した実績を持つ島津製作所が自社内に高い技術開発力を有することは、疑問の余地はない。私も、けいはんなにある基盤技術研究所の研究者をはじめ、新技術開発や新製品開発に注力する研究者・技術者の方々と交流する機会があるたびにそのことを実感する。しかし、企業の研究・開発の成功とは、端的に言えば競争相手より早くそして優れた製品に結実することだけである。例えば、分析計測事業部の競合会社はすぐに目に浮かぶが、彼らとの競争に勝利しているかというと必ずしもイエスとは言えないであろう。一番の原因は、製品開発のスピードの差である。私は、製薬分野でキャリアを積んできた人間だが、コロナワクチン開発で日本の製薬会社がファイザー社やモデルナ社に大きく遅れをとってしまったのは、日本の製薬会社の自前主義にあると思う。ファイザー社やモデルナ社はベンチャーを巻き込んだエコシステムを存分に活用して成功を収めた。島津製作所のCVCには、このことに着目して欲しい。もちろん、新しい技術の芽を持つベンチャーに投資して、技術の幅を広げ、自前技術を深化させることは重要である。しかし、今の島津製作所に足らないものは、製品化へのスピードと思う。製品化へのプロセスで、ある時期はベンチャーに任せた方が早いかもしれない。ぜひ、製品化へのアクセルとなる外部のエコシステムを獲得するためにもCVCを活用して欲しい。島津製作所の現在の業績は上向きで安定している。こういう時にこそ、将来の主力品の候補をいくつも仕込んでいただきたい。

社外取締役 花井 陳雄

社外取締役 花井 陳雄

強固なグループガバナンスとフレキシブルな事業ポートフォリオマネジメント

2022年度は円安による追い風を受けたとは言え、3年連続で売上高、営業利益、当期純利益がすべて過去最高値を更新し業績面では順調に推移しました。一方、国内子会社における保守点検業務に係わる不適切行為が明らかとなり、健全な水準にあると思われていたガバナンス体制を根底から揺るがす不祥事が発生しました。これは特にグループガバナンスの実効性の脆弱さを露呈する事案であり、国内子会社はもちろん連結業績で過半を占める海外事業、すなわち海外子会社をいかにマネジメントするかが重大かつ喫緊の課題となっています。既に着手されつつありますが、特に海外の場合、欧米亜中それぞれの地域に責任と権限を与えることによって地域統括体制の確立を加速させることが一つの有効な手段です。そのためには、将来に向けたグローバル人財の育成はもちろんですが、当該地域における現地人財の抜擢、ヘッドハンティングなど積極的な人事施策が求められます。
もう一つの重要課題として持続的な成長に資する事業ポートフォリオが挙げられます。島津を取り巻く事業環境は日々刻々と変化しています。形骸的なポートフォリオの組み替えに留まらず、ROICなど適切なKPIを使いながらフレキシブルにマネジメントしていくことこそ島津独自の強みを磨いていくことになります。ぜひ取締役会で議論を重ねていきたい課題です。事業遂行上のリスクテイクを適切にモニタリングしていくことはもちろん重要ですが、よりダイナミックな戦略をもって島津の強みを磨き、さらなる成長を後押しできるよう前向きな提言を心掛けていく所存です。

社外取締役 中西 義之

社外取締役 中西 義之

持続的成長を果たすためには、経営基盤の強化が不可欠

島津の社外取締役に就任してほぼ一年になりました。取締役会は昨年から社内取締役と社外取締役が同数になり、以前より多様化した人員構成になりました。3月に発表した2025年度までの中期経営計画の内容、完全子会社化した日水製薬のガバナンス、今後不祥事を防ぐための対応策についてなど、取締役会では活発な議論が交わされ、様々な視点が経営目標に反映されていると感じています。2008年の金融危機や2020年のパンデミックも乗り越え、島津は着実に企業価値を向上してきましたが、今後も持続的な成長を果たすためには、今中期経営計画中に経営基盤を強化することが不可欠です。グループガバナンスの見直し、人材育成、リスク管理など会社が一丸となって取り組む必要があり、取締役会で進捗具合をモニターしてまいります。今年初めて外国人の執行役員が誕生しましたが、海外売上比率が56%を超える会社としてはもっとダイバーシティを進化させる必要があります。組織全体の多様化が進めばさらに強い会社になれると信じています。
島津のミッションである人と地球の健康( プラネタリーヘルス)の追求を実現するために島津がチャレンジしたい社会課題が多くある中、市場のニーズ、成長ポテンシャルと島津の得意分野を考えながら、最大インパクトを追求していく必要があります。今期からROICを経営指標に導入し、営業利益率やROEのみならず事業部ごとの投資に対するリターン、EBITDA創出力をより注視していきます。資本効率を意識することの重要性は取締役会で認識されており、財務健全性を確保しながら成長のために効率的なキャピタルアロケーションを後押しし、中長期的な企業価値向上と株主還元が実現できるよう様々な提言を行っていきます。

社外取締役 濱田 奈巳

社外取締役 濱田 奈巳

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