血液から病気の因子を測定し新生児における疾患の発症や重症化を予防 :社会課題

島津製作所の取り組み

島根大学との共同研究で確立した「タンデムマス法」で分析時間を大幅に短縮

私たちは、人の健康に関する事業領域で、生命現象を解明するライフサイエンスへの貢献や、医療システムを支える医薬品、診断・治療機器の提供、健康を増進する高機能食品などの開発支援に取り組んでいます。
新生児マススクリーニングは、微量の血液を採取して、生まれつきの代謝異常がかくれていないかを検査することで、障害の発生を未然に防ぐことができます。現在日本では、自治体による医療費公費負担制度に基づいて全ての新生児を対象に実施されています。
私たちは、日本マススクリーニング学会の理事長で有機酸代謝異常研究の第一人者でもある島根大学医学部小児科の山口清次先生(2016年4月より特任教授)との共同研究により、新生児マススクリーニングをより早く、簡単に分析するためのシステムの開発に取り組んできました。
新生児マススクリーニングでは、ガスリー法という検査方法が長く採用されてきました。これは採取した血液を染み込ませたろ紙を使う方法で、1960年代に開発され、検査費用も安いため世界的に普及しました。一方、私たちが開発した方法は、質量分析装置を2台直列につないだタンデム型質量分析装置を用いるもので、「タンデムマス法」と呼ばれています。1検体当たりの分析時間はわずか1~2分で、分析ピークがはっきりと記録紙上に現れることから、1台のタンデムマスで年間6万人を検査でき、しかもガスリー法では検査できなかった20種類以上の病気を一度に検査できます。加えて、ガスリー法に比べて精度も格段に向上し、偽陽性例の数も著しく減ります。患者さんのご家族の生活の質向上に貢献しています。
現在は、この検査方法を日本などの先進国だけでなく、先天性の病気の診断を受ける新生児が全体の1割未満にとどまる新興国にも広げる取り組みを進めています。

パートナーからの声

「タンデムマス法」の導入で偽陽性例の数が著しく減少しました

島津製作所との共同研究で確立した「タンデムマス法」は、ガスリー法に比べて検査の精度が格段に向上しました。これにより、偽陽性例の数は著しく減少し、異常を疑われたお子さんの結果を待つご家族の精神的ストレスの緩和につながっています。また、希少疾患が簡単に診断できるようになったため、小児科救急医療の現場にも大きな変化をもたらしています。今後は、先天的な免疫不全症の子どもたちを救う方法の研究に取り組んでいきたいと考えています。

島根大学医学部 小児科 特任教授
山口 清次 先生

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