グループガバナンスの強化、組織風土の改革(統合リスク管理の実践)
当社グループは、組織運営上の重要な仕組みとして、リスクマネジメント(事業に関わるリスク対策)と、コンプライアンス・内部統制(職務執行上のリスク対応)およびモニタリングを一体的に推進する体制を構築しています。DXの活用も含め、経営戦略や事業目的等を達成して、企業価値の最大化を図っていきます。
コンプライアンスの徹底
基本方針
当社グループは、グローバルに様々な事業を展開しているため、安全保障貿易管理、贈収賄防止、競争法など、世界各国・地域の法令や行政による許認可、規制の適用を受けており、その遵守に努めています。
また、法令遵守のみならず、国際規範に則り行動するとともに、社是・経営理念・島津グループサステナビリティ憲章のもと、役員および従業員が共有・遵守すべき倫理規範を「島津グループ企業倫理規定」として定め、当社社長方針の「コンプライアンスは全てに優先する」を実践しています。
- 安全保障貿易管理:国際的な平和および安全の維持に関する管理方針のもと、適正な輸出入管理の実施
- 贈収賄・反競争行為の防止:公務員への贈賄行為や、民間の取引先・関係先への不適切な接待・贈答の禁止
- 医療機関等との関係と透明性確保:医療機関等への資金提供情報の公開
- 臨床研究に関する情報公開:臨床研究に関するオプトアウト等
内部通報窓口の整備
企業倫理に関する問題の予防・早期発見・対策のため、通報窓口(担当:リスク対策室)を社内外に設け、当社グループ全従業員、派遣社員および社内で業務に従事する請負会社従業員に対し、Eラーニング等の手段により周知しています。通報は匿名でも受け付けており、通報に関する情報は通報者保護のため、守秘義務に基づき適切に取り扱っています。また、通報したことや、窓口に協力したことを理由に通報者・協力者に不利益な取り扱いをすることを禁止しています。なお社外窓口「外部ホットライン」への通報は外部弁護士が通報を受領し、監査役が調査を行う、経営幹部から独立した仕組みとなっています。2024年度は、グループ全体で164件の通報がありました。情報提供者を保護するとともに、必要な調査を行い、是正・措置・再発防止策の策定を講じています。
推進活動
当社グループは、企業倫理規定のエッセンスをより分かりやすくまとめた「島津グループ企業倫理行動ガイドライン」を策定し、集合研修やe-Learning等の教育活動により、その内容を啓発・浸透させることでコンプライアンス上の問題発生の予防に取り組んでいます。
- 11の行動基準の深堀り:毎年継続のコンプライアンス実践と人権と多様性の尊重に加えて、事業活動を通じた持続的な経済成長・社会課題の解決、信頼される製品・サービスの提供のレベル、社会への貢献、地球環境の保全をテーマに教育を実施
- 個別教育:島津グループ全体向けに贈収賄防止教育、競争法教育を実施


倫理・コンプライアンス意識の把握
各組織・職場の倫理・コンプライアンス意識を把握するために、外部専門家によるアンケート調査を行っています。その分析結果から、各組織・職場でのディスカッションを通じて、改善を図ります。当社グループに共通する改善項目については、各リスク責任部署・各種委員会の統制活動に反映し、対策を実施しています。
職場ごとの取り組み
2011年より毎年7月の「島津グループコンプライアンスの日」に、過去発生した不祥事を振り返り、日常業務における気づきを話し合い、コンプライアンス違反の“芽”を早期に発見して、問題発生の未然防止につなげています。
また2022年度から、適切な業務遂行に必要な知識(業法、規定、業務手続等)と価値観の修得、業務品質の向上および人材の育成を目的に、本社および国内グループ会社において、職場単位での学習制度を導入しました。リスク責任部署が提供する教育資料も活用しながら各チームが学習を進めており、2024年度は当社グループで計18,000回を超える職場学習が行われました。今後、日本国内から海外グループ会社にも展開していきます。
また、活動の中で、職場単位で業務上のリスクを低減するため、過去に発生した問題の再発を防止する取り組みも2024年度から開始しました。
これらの活動を息長く実施することで、当社グループの組織に良好な風土を醸成していきます。
内部統制(職務執行上のリスク対応)
基本方針
当社グループは、役職員の職務執行が法令および定款に適合すること、およびその業務が適正かつ効率的に行われることを確保するための内部統制体制を整備しています。常に事業環境の変化を捉え、過去の考え方や方法にとらわれない体制へと改善し、強化を図っていきます。
内部統制体制
適正かつ効率的な業務執行のために、業務運営に関する諸規定の体系的整備と職務権限を明確化して、経営の透明性を高めるために当社グループの情報が正確かつ迅速に伝達されるための体制を整備しています。なお、違反行為等が発生した場合は、当社グループでその内容と処分等を速やかに共有し、類似行為の発生抑止に努めています。加えて、個人情報の保護や秘密情報の厳正な管理のもと、広報・IR活動やWebサイトにより、適宜適切な対外情報発信・開示を行っています。
また、当社グループのガバナンスに関する基本的な考え方や経営上遵守すべき事項を纏めた「島津グループマネジメント基本規定」を定めて、グループ全体の経営状況の把握および管理体制の継続的な整備・強化していくことで、適正かつ効率的なグループ運営を実現していきます。
財務報告に係る内部統制の構築
当社グループは、金融庁の実施基準に基づき、「財務報告に係る内部統制体制の構築に関する基本規定」にて、内部統制の基本的な枠組みを定め、業務の有効性および効率性の向上、財務報告の信頼性の確保、事業活動に係る法令等の遵守の促進および資産の保全により、事業活動の目的達成を図っています。
その構築にあたっては、適正な財務報告を作成し開示することの重要性を十分に認識し、内部統制を全社的な経営課題として整備、運用するとともに、その内部統制の水準を維持および向上させるために継続して評価し、不備があれば改善(是正)する活動を実施しています。実施範囲については、重要性の高い会社や業務プロセスを対象に重点的に取り組むことで、その実効性を向上させています。
実施範囲外(非対象グループ会社)への補完活動
全社的な統制や業務プロセスの重要項目に絞った点検表をもとに、グループ全社が自己点検でリスクを把握したのち、本社管理部門が連携して、ヒアリング確認を行っています。その結果を分析して、リスク発生を低減するための統制を整備して、問題発生の抑制に努めています。
リスクマネジメント(事業に関わるリスク対策)
基本方針
企業の社会的責任を果たしつつ事業の継続と発展を達成していくために、リスク管理は不可欠な存在です。当社グループは、事業に関わるリスクを適正に管理するための活動として、リスク発現の未然防止に取り組むこと、また危機事象が発生した場合に早期解決に向けて、その損失影響を最小化する措置および真因究明・再発防止の水平展開を行うことを「島津グループリスクマネジメント基本規定」として定め、実践しています。
リスク・倫理体制
当社グループ全体のリスク管理を推進するために、当社社長を議長として半期ごとに「リスク・倫理会議」を開催しています。各階層リスク(グループ共通の優先取組リスク、グループ個社の重点リスクおよび職場単位の業務リスク)対応の進捗状況を議論して、各組織・職場で自律的かつ実効的に取り組めるように、リスクマネジメント担当役員の統括のもと、各リスク責任部署や各種委員会が指導・支援しています。

推進活動
未然防止の活動
毎年のリスクの識別・評価に基づき、リスクへの対応やモニタリングを行い、RM※活動のサイクルを回しています。当社グループの事業活動において、社会からの期待に反する重大な事象の発生、および事業への障害による企業価値の毀損を防止するため、経営層およびリスク責任部署を中心にリスクの識別と評価・優先順位付けを行い、各リスクが適切にコントロールされるよう、優先順位の高いリスクについて全社的な取り組みを行う仕組みを構築しています。2025年度は、グローバルに共通して影響度が高く、優先的に取り組むリスクとして、「サイバーセキュリティリスク」および「新製品の開発遅れリスク」について、対策を進めていきます。
地域別、個社別のリスクに対しては、グループ各社がリスク評価を行い、重点リスクと取り組みを設定して対策を進めます。本社のリスク責任部署からも指導、支援を行い、活動の促進を図ります。
グループ全体でRM活動を継続的に実施するため、本社・グループ会社の関係者に対して、研修を実施しています。
Ⅰ | 当社グループが晒されるリスクを識別(把握)する |
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Ⅱ | ステップⅠで識別したリスクを評価(発生可能性×影響度)で評価する 対応すべき優先取組リスクを決定する |
Ⅲ | ステップⅡで決定した優先取組リスクの所管責任部署による、リスクを低減させるための対応策の設計、実行により、残存リスクを下げる |
Ⅳ | 残存リスクの評価により、リスクへの対応状況を確認する リスクマネジメントプロセス全体をモニタリングする |

危機事象発生時の対応
危機事象が発生した場合に適切な対応を行うため、リスクマネジメント緊急連絡体制を整備しています。「第一報を早く」を原則に、必要に応じて社長を議長とした対策本部を設けて対策を行います。
再発防止策の展開
重大リスク事案が発生した場合、同様の不祥事を二度と起こさないよう、確実な再発防止につなげます。職場内の議論やe-Learningを通じて自部署のリスクを認識し、対策を講じるといった取り組みを展開しています。
モニタリング
基本的な考え方
当社グループは、リスクマネジメント・内部統制・コンプライアンスのすべてが有効に機能していることを、事業・管理・監査の3ラインの各段階で、組織的かつ継続的に検討・評価します。
モニタリング強化の体系
2023年度設置した海外地域コーポレート本部では、中国・アジア・北米の現地体制が主体となって、本社が策定した監査ツールを活用し、往査計画を立てて取り組んでいます。島津グループマネジメント基本規定に則り、各グループ会社でのルール運用を確認し、不適切な手続き等の防止につなげています。内部監査の実施を通じて、グループ内の潜在的なリスクを把握し、問題発生の予防につなげていきます。