トップメッセージ

持続的成長に向け“Excellence in Science“と”Best for Our Customers”の精神で社会課題の解決に貢献します

私たちは、「科学技術で社会に貢献する」という社是に基づき、“Excellence in Science”の精神で社会課題の解決に挑戦し、ロボットやAIも活用した新たな価値の創造と効率的で強固な経営基盤の構築を推進しています。
また、もう一つの大切な精神である“Best for Our Customers”を追求し、世界各地のお客様の様々なニーズに一つひとつ丁寧かつタイムリーに応え続ける努力を継続しています。
これら、“Excellence in Science”と“Best for Our Customers”を両輪に、世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーとして、新たな成長を目指していきます。

今までの150年、これからの150年

島津製作所は明治8(1875)年3月31日に創業し、2025年で150年を迎えました。今日までの150年間、私たちは社是を胸に、科学技術の進展と歩調を合わせて成長し、今日の社会の礎を支えてきました。時代の変化とともに、次々と新しい産業が生まれ、新しい産業には新しい技術が求められます。私たちはお客様の思いを基に、あきらめることなく、新しい技術を加えて、アイデアを“図面”や“ソフトウェアのコード”に落とすという作業を続けてきました。その積み重ねが今日の島津製作所です。
私たちには、創業以来お客様と共に培った150年分の技術が蓄積されています。効率化が求められる時代、すべての技術を保持し続けるのは無駄が多いのではないかと言われることもあります。しかし、技術は一度捨ててしまえば簡単には取り戻せません。技術は常に進化します。進化した技術をもう一度手に入れるには、その技術を開発したとき以上の時間と努力が必要になります。


若手社員と将来の夢について
ディスカッション

技術を蓄積する私たちだからこそ、お客様から期待をいただき、期待に応えるために新たな技術を加えて、新しい“図面”に挑戦することができる。科学技術で社会に貢献するためには、技術を持ち、磨き続け、新たな技術を加え、新たな価値の創造に挑戦し続けることが、何より大切な活動です。
150年という長い年月、社会に貢献し続けることができたのは、この挑戦を続けてきたという証でもあり、素晴らしいことだと自負しています。この区切りの年を迎え、挑戦を続けられた多くの先輩方と同じように、私たちもまた、次の150年に向けて新たな一歩を踏み出していくのだと思うと、身の引き締まる思いがします。

150年先の人や地球がどのようになっているのかは想像もつきません。人は地球の外でも暮らすようになっているでしょうし、エネルギー問題をはじめ、現在の社会が抱える課題の多くは、新しい技術によって解決されているでしょう。しかし、今日を生きる私たちにとっては、現代が抱える社会課題の解決に挑戦することこそが重要であり、その積み重ねが次の時代につながるのだと信じ、業務を遂行していきたいと思います。
今日、人の健康維持は大きな課題の一つです。多くの先進国で人の寿命は延びていますが、健康な状態と命の長さとの間には10年以上の開きがあります。誰もが健康な状態で最期を迎えられる社会を実現する、これは社会全体の持続可能性に関わる大きな課題だと考えています。
地球もまた“健康不安”を抱えています。人は生活する上で膨大なエネルギーを必要とし、食事だけでも1日2,000キロカロリーものエネルギーが必要です。世界人口は増え続けており、30~40年後には100億人を超えると言われています。単純に計算しても、必要なエネルギー量が人口50億人の時代の倍に膨れ上がり、さらに快適さを求めれば、計り知れないエネルギー消費を伴います。世界における石油や石炭などの一次エネルギーの消費量は、1965年以降の約60年で約4倍にも増加しています。地球の大きさは変わらないまま、私たちは限られた空間で膨大なエネルギーを消費し続けています。だからこそ、温暖化などの気候変動、食料問題など、さまざまな課題が引き起こされているのでしょう。
今の私たちに何ができるのかというのは難しい問いですが、最終的にはすべての物質やエネルギーを循環させることが不可欠ではないかと思っています。人間社会だけでなく、ほかの生き物、微生物まで含めたエネルギー循環を研究し技術を開発する。ここにも私たちにできることはたくさんあります。
今はまだ「夢」かもしれません。しかし、これまでも私たちは、夢を思い描き、図面に落とすことで、一つずつ未来を創ってきました。たとえ150年先を見通すことはできなくても、そこへ続く道を一歩ずつ歩んでいこうと考えています。

2024年度の振り返り

中期経営計画2年目の2024年度の世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻や中東紛争などの地政学リスク、中国経済の停滞や米国の関税政策、インフレによるコスト増加など、依然として不透明な状況が続きました。加えて、2023年度第4四半期以降の中国市場の落ち込みを受け、厳しいスタートになりました。このような事業環境の中、私たちは、ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーの4つの社会価値創生領域で、中期経営計画で掲げる5つの事業戦略および7つの経営基盤強化の取り組みを展開し、為替の押し上げ効果も受けて、売上高は過去最高を達成することができました。5つの事業戦略において、具体的には「重点事業※1強化」として、ロボティクスやAI技術などを活用し競合力のある計測機器の新製品開発推進と、お客様のワークフロー全体へのトータルソリューション提供を目指した製品ラインナップの強化に取り組みました。
「メドテック事業※2の強化」としては、臨床市場における事業基盤構築に向けて、臨床市場向け質量分析システム、試薬、ソフトウェアのラインアップ拡充に努め、また、健康寿命の延伸と医療従事者の業務効率化を実現するために医用画像解析にAIやIoT技術を用いた“イメージングトランスフォーメーション”を推進し、2024年4月に光学カメラ搭載のX線撮影システムを発売しました。
「海外事業の拡大」では、北米の開発機能強化のために、2024年4月にR&Dセンターを開所したほか、中国では地産地消体制強化として2024年12月に工場を拡張し製造機能を強化しています。
「リカーリングビジネス※3の強化、拡大」では、2024年4月に北米で計測機器メンテナンスサービス会社Zef Scientific, Inc.と、医用機器の販売・サービス会社California X-ray Imaging Service社を買収して、北米におけるアフターサービス事業の強化・拡大に注力しました。
また、営業面では、お客様(領域)中心志向への体制強化策として、2024年4月から国内営業を本部制に移行し、事業部間連携を強化するともに、お客様への最適なトータルソリューションの提供等の営業活動を推進し、国内事業成長につなげました。
一方で、当社グループの事業を支える主力製品の成長スピードが計画よりも弱く、大きな課題を残した一年となりました。
利益面では、価値訴求を進めたものの、部材価格の高騰、将来に向けての研究開発費やDX投資などの成長投資の増加に加え、定年延長も相まって人的投資も増加しました。これらの費用増により、減益の結果となりました。

中期経営計画の3つのミッション

中期経営計画達成に向けた2025年度の取り組み

中期経営計画の最終年度である2025年度は、米中貿易摩擦の激化とそれに伴う関税政策や経済安全保障政策の強化、不安定化する東欧や中東情勢などの地政学リスクの継続により、世界経済は不透明な情勢が続き、国内経済も米国の関税影響や為替相場の変動などにより不安定な情勢が続くと予想しています。
そのような中、気候変動、持続可能な食糧やエネルギーの実現、各国・地域で進む高齢化や健康志向の高まりなどの社会課題に加え、進化するAI技術の普及による技術革新やデジタル化、さらには人権問題への対応が、当社グループの取り組むべき重要な課題と認識しています。私たちは、これらの課題を事業機会と捉え、地産地消を目指した開発・生産・販売体制を構築することで、貿易摩擦や米国の関税政策などに左右されない企業体質を作り、さらに、グローバルでの情報システムの整備とデジタル・AI技術の活用により、経営と製造の高度化を目指します。加えて、製品や各種システムにもAI技術を取り込み、より簡便で高度なデータの提供を実現し、お客様の業務改革に寄与します。変化の激しい時代であるとの認識のもと、変化する情勢を的確に把握しながらタイムリーに対応し、事業の維持拡大を実現したいと考えています。
また、企業活動の根幹であるガバナンス強化のために、グループマネジメント規定の運用徹底とコーポレート機能拡充に取り組みます。

より具体的には、世界のパートナーとの関係を強化し、共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーとして、中期経営計画に基づき以下の取り組みを推進し、サステナブルな社会の共創を目指します。

1)4つの社会価値創生領域における事業の取り組み
①ヘルスケア領域
ライフサイエンス分野では、当社グループの主力製品である液体クロマトグラフと質量分析システムを重点機種と位置付け、製薬や食品市場を中心にAIによる分析プロセス革新(AX:アナリティカルトランスフォーメーション)を追求し、お客様の業務の効率化・省力化を実現します。また、パートナーとの連携を深め、医薬品精製装置などの新たなソリューションの追加を加速します。
メドテック分野では、当社グループの持つ分析技術と医用技術を組み合わせることによる新たなビジネス領域として、質量分析システムによる臨床検査ソリューション事業とX線画像診断事業を組み合わせ、健康長寿の実現やシニアヘルスケアへの貢献を目指します。2025年度は、パートナーと共創してアルツハイマー型認知症や感染症に関連した研究開発の展開と、AIやIoT技術を活用した「イメージングトランスフォーメーション (IMX)」事業の展開を進めます。
②グリーン領域
新エネルギーとしての水素利活用研究、バイオものづくり事業でのソリューション開発、温室効果ガス(GHG)測定など、カーボンニュートラル社会の実現に向け、ガスクロマトグラフやカーボン分析などの計測機器の用途開発やニーズに合わせた機能改良を進め、お客様と一体となった事業展開を進めます。また、環境分野では、世界中で規制強化が進む有機フッ素化合物(PFAS)の分析手法確立に取り組みます。
③マテリアル領域
新たな価値の創造に向けて、ヘルスケア、グリーンやインダストリーなどすべての領域で、新材料・新物質開発の重要性が増しています。多岐に渡るニーズに応えるために、分析・計測機器の製品ラインアップ強化と自動化促進に加え、インフォマティクスを用いた複合計測・解析の強化に取り組みます。特に、電池材料やセラミックス複合材料などの革新素材の開発・製造への貢献と、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、新製品開発と事業拡大を進めます。また、注目されるナノ領域の表面観察分野で、販売を開始した走査電子顕微鏡によるソリューション提供を訴求します。
④インダストリー領域
生成AIの需要拡大など活況が続く半導体市場で「世界で評価されるソリューションプロバイダー」を目指し、ターボ分子ポンプ事業を中心に据え、分析や計測機器も並行展開を図ります。半導体製造に欠かせないターボ分子ポンプの開発製造と顧客サポート体制の強化はもちろん、分析・計測機器や太陽光パネル製造装置向けに用途を広げ、事業拡大を目指します。加えて、パートナー企業と協力して半導体市場に適した分析・計測機器を開発し、ターボ分子ポンプのお客様に今まで以上に多くのソリューション提供を行います。

2)リカーリングビジネスの拡大
リカーリングビジネスは、当社グループにとっての大きな成長機会と位置付けており、自社開発・出資・M&A・業務提携など多岐に渡る施策を展開して事業を強化します。試薬・カラム等の消耗品事業と保守・検定・メンテナンス等のサービス事業を両輪として展開を進めており、試薬事業では子会社2社を含めたグループ全体で開発・製造・販売の機能を最適化し、ビジネス立ち上げを急ぎます。カラム事業は、パートナー企業との協力関係を強化してラインアップ拡充を進め、ビジネスを拡大します。また、サービス事業は、計測・医用・TMPの各事業で自社製品へのサポート強化とともにマルチベンダーサービスの拡大も進め、広くお客様に密着したサポートの提供を進めます。

3)新事業の創出と開発力強化
新事業創出と開発力の強化に向けて、人の異動を含めた日本・北米・英国の研究所間連携の強化、事業部門内での開発の体制とプロセスの変更を進め、アジャイル開発とコンカレント(同時並行型)開発を推進するとともに、若手人財の育成を進め、開発の短期間化を目指します。また、AI・DX活用に向けたデジタル人財育成も継続します。
パートナーとの共同開発も強化していますが、その一環として、CVC「Shimadzu Future Innovation Fund」の活動を通してスタートアップへ投資し新規事業の創出を目指すとともに、基盤技術研究部門が行う研究公募プログラム「SHIMADZUみらい共創チャレンジ」の活動を通して、外部の研究者との共創を進めています。

4)地産地消体制の構築と経営基盤強化
北米での開発力強化のために2024年4月開設した北米R&Dセンターでは、特に製薬・臨床分野での最先端ニーズの補足と現地開発によるソリューション提供の拡大を目指し、ボストンとカリフォルニアに東西のサテライトラボを作り、お客様との連携強化を進めています。すでに複数のテーマで共同開発を始めています。また、中国・インドでの製造能力強化のため、中国蘇州工場を拡張し国産優遇策への対応力を強化し、インドでも2027年稼働を目指して工場建設を進めています。加えてインドでは、分析と医用製品を扱う販売サービス統合会社も立上げ、お客様のサポート体制を強化します。
経営基盤の強化として、製品のライフサイクルを通した情報管理、基幹業務システムのグローバルでの統一、CRM(Customer RelationshipManagement)情報の有効活用を実現するため、グローバルで情報システムを整備する五か年計画プロジェクトを走らせます。また、デジタル・AI 技術を活用し経営の高度化を目指す企業体質変革プロジェクトを展開し、ROICを指標とした資本効率の向上を図ります。
人財育成に関しては、変革をリードする多様な視点を持つグローバル人財の育成を目的に次世代リーダー育成プログラム、経営塾アドバンス・経営塾・海外幹部養成講座などを拡充し、当社グループのサステナビリティを確保します。
企業活動の根幹であるガバナンスの強化に関しては、ガバナンス強化指針に基づき、グループマネジメント規定の運用徹底と、地域コーポレート本部制の機能拡充および同本部によるガバナンスモニタリングの充実を図り、事業活動に専念できる体制確立を進めます。

5)持続可能な企業と社会を両立するための健康経営と環境経営
当社グループは事業活動において「プラネタリーヘルス」を追求していますが、企業活動においても健康経営と環境経営を積極的に進めています。
健康経営として、当社グループの活動を支える社員および社員の家族の健康を念頭に、様々な取り組みを推進しています。具体例として、質量分析システムによる血液分析からMCBI診断を行うサービスやPET装置による乳がん検診など、自社技術を活用した社員およびその家族の健康増進の取り組みを進めています。また、健康経営アライアンスの一員として、当社の技術や知見の社会還元にも取り組んでいます。
事業活動を通じた環境貢献の観点から、脱炭素社会の実現に向けた環境経営も推進します。CO2排出量削減につながる消費電力や使用材料削減を行ったエコプロダクツPlus製品の開発と、梱包材の見直し・削減等を進めているほか、国内外の事業所で再エネ電力の活用を進め、企業価値向上に取り組んでいます。また、サーキュラーエコノミーへの移行を睨んで、使用済み製品の再利用や、部分的に装置を更新することで製品寿命の延長と機能向上を実現する取り組みなど、様々な活動を展開しています。
以上ご説明したように、当社グループは、中期経営計画の戦略に基づき、社会課題の解決と企業価値の向上に取り組んでいます。今後も、ステークホルダーの皆様と共に、“共有価値の創造”を追求しプラネタリーヘルスの実現を目指します。

代表取締役社長 山本 靖則 略歴

1983年4月   当社入社
2003年10月   分析計測事業部 試験機ビジネスユニット統括マネージャー
2013年6月   シマヅ オイローパゲーエムベーハー(ドイツ) 社長
2014年6月   執行役員
2017年6月   常務執行役員
2017年6月   製造・情報システム・CS担当
2017年6月   技術研究副担当
2020年4月   経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当
2020年6月   取締役
2021年4月  

専務執行役員

2021年4月   CFO
2022年4月   代表取締役社長(現在に至る)
2022年4月   CEO(現在に至る)
代表取締役社長 山本 靖則

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