トップメッセージ

持続的成長に向け“Excellence in Science“”Best for Our Customers”の精神で社会課題の解決に貢献します

島津製作所は、2025年3月に創業150周年を迎えます。149年間の長きにわたり「社会に貢献し続ける」ことができた理由は、社会課題やお客様が解決したい課題に真摯に向き合い、挑戦を続けてきたことにあります。モノづくりの鍵となるデバイスの開発や、新技術の創出に繰り返しチャレンジし、その積み重ねによって、多様性に富んだ技術の宝庫を築き上げ、お客様から寄せられた課題に対して、いち早くソリューションを提供することができてきたのだと思います。
これからも、当社グループが持続的に成長しプラネタリーヘルスを実現するための鍵は、“Excellence inScience“の精神で社会課題の解決に挑戦し、”Best for Our Customers”を追求し続けることにあります。現在のお客様ニーズは、「モノ=製品」から「コト=データ/ソリューション」に変化しています。そのため、2023年度から開始した中期経営計画では、製品だけではなく、前処理装置、自動化装置、消耗品、制御・解析用ソフトなどを含むトータルのソリューションを社会実装し、お客様が必要とされるデータの提供を事業の軸にすることを定めました。また、当社グループの注力する分野をヘルスケア、グリーン(GX)、マテリアル、インダストリーの4領域と定め、領域ごとにお客様の真のニーズや困り事に向き合う体制へのシフトも始めました。

中期経営計画初年度の進捗と今後の展望

中期経営計画(以下中計)初年度は、成長投資を積極的に行いましたが、円安の追い風もあり過去最高の業績を達成することができました。中計計画時には想定していなかった、中国の市況悪化の影響は、インドや欧州の貢献でカバーすることができました。中計に掲げた成長戦略、経営基盤強化では、順調に推移したものがある一方、課題も見えてきています。特に課題と感じているのは、メドテック事業です。臨床分野は通常の製品・サービスと違い、上市には各国での認可が必要となります。残念ながら、開発、認可共に想定よりも遅れており、戦略変更と人財の強化を行い、スピードアップを図ります。
中計2年目は、お客様が必要とされるデータの提供を事業の軸とする、つまり領域制への体制変革を一層進めます。まず、お客様に一番近い営業部門から変革を行うべく、2024年4月付で営業を本部制へ移行しました。事業部、地域の垣根を越えた連携により、ワンストップサービスの提供拡大を目指します。今後、営業に続き製造も、グローバル戦略強化と製造の効率化を狙い、本部制移行への準備を進めます。
注力している北米は、2024年4月に開所した北米のR&Dセンターを活用し、世界のトップを走るお客様の最先端ニーズの探索を進めます。そのニーズに基づき、現地で試作品を作ってお客様と対話するというサイクルを回すことで、北米のお客様の課題を北米で解決できる体制を作ります。そのために、人財の強化を含めた投資を進める計画です。
また、製薬、食品、メドテック等のヘルスケア領域、有機フッ素化合物(PFAS)、電池、EV、水素、セラミック等のグリーン/マテリアル領域、半導体製造等のインダストリー領域での事業開拓と新事業の創出に取り組みます。

事業ポートフォリオについて

現在、当社グループのポートフォリオは計測機器、医用機器、産業機器、航空機器の4事業で構成されています。この中で計測機器を重点事業に位置付け、投資を強化しグローバルでの成長を目指しています。また、航空機器事業は再編事業に位置付けていますが、残り二つは今後も強化する方向です。ただし、両者とも利益率向上が喫緊の課題ですので、短期的には利益率向上策を実施します。
医用機器は、当社グループのミッションでもある“人の命と健康への貢献”を追求する上で重要な事業です。特に今後は、医療費抑制や医師の働き方改革による診療時間短縮などの変化に伴い、病気が発症・悪化する前の早期発見と迅速な治療がグローバルで必要になると考えられます。既に当社グループは、先天性疾患の発症可能性を新生児段階で調べるための新生児マススクリーニング検査や、骨粗しょう症の予防・診断に関して医用機器の画像診断と計測機器の血液検査を組み合わせたソリューション等を提供しています。今後はさらに、計測機器と医用機器の技術を融合した、超早期発見につながるトータルソリューションの提供を目指しています。一方、医用機器事業の利益率の拡大に関しては、AI画像解析などAIやIoT技術を用いた画像診断の“イメージングトランスフォーメーション”により、新たな付加価値提案を進めます。もちろん、お客様にとっても当社グループにとっても重要なリカーリングビジネスの強化も図ります。
産業機器事業については、重点機種のターボ分子ポンプが半導体市場向けでシェアNo.1ですが、今後はさらに経営資源を投入し、半導体以外の市場展開を強化します。一方、油圧は利益率が下がっていることが課題です。今後、欧米市場向けの付加価値商品を強化し、収益性の改善を図ります。また、需要が拡大しているEVフォークリフト向けの静音性の高いギヤポンプや、油圧とモーターを組み合わせた新製品e-Hydroなど、当社グループ独自の高付加価値製品の拡大で収益性を向上させます。

風土改革を引き続き推進

「コンプライアンスは全てに優先する」を基本に、モニタリング、リスクマネジメント、内部統制を統合し、グループガバナンスを強化します。グループ全体で3ディフェンスライン(事業部門・管理部門・監査部門)の構築に取り組んでおり、ベースの部分はできていると思っています。ただ、海外を含めたグループ全体で強固なグループガバナンスが構築できたかといえば、まだ道半ばだと認識しています。当社グループは、企業規模に比して子会社数が多いと考えており、小さな子会社ではガバナンス専門人財を割くことも難しい状況です。そのため、統合してより大きな子会社にして、ガバナンスの有効性を向上させます。2023年度には2社を統合しましたが、今後もこの動きを継続します。また海外では、地域のガバナンスを担う地域統括会社を定め、コーポレート機能を強化して、担当地域の子会社を監査・監督できる体制構築を進めます。
コンプライアンス違反の芽をつむことは、社員が力を合わせればできることだと信じています。コンプライアンスに関するチーム学習を継続し、言いたいことを言いあえる風土にしていきたいと考えています。

挑戦し失敗を重ねることで、夢を実現

当社グループは、プラネタリーヘルスの追求を目指して業務を遂行しています。社員やお客様一人ひとりの思いや夢があり、その思いや夢に共感したメンバーが集まり、挑戦が始まります。もちろん、すべてがうまくいくわけではなく、失敗もすると思います。しかし、失敗は会社にとっても個人にとっても大きな宝物だと思っていますので、社員にはもっと多くのことに挑戦し、成功も失敗も重ねてほしいと伝えています。ただ、昔と違い、今は一つの業務に携わる人数が増え、一人ひとりの裁量範囲が小さくなり、その結果、夢も小さいものになっているのではないかと危惧しています。視野を広げ、より大きな夢を描いていくために、裁量範囲を広げたいと考えています。
人は未来に向かって生きています。過去に向かって生きる人はいません。
向かっていく未来には、一人ひとりの思いや夢があります。互いに夢を語り、互いの夢に共感し、その実現に向けて努力する会社、夢の実現に役立つ会社になることを目指したいと思っています。
ステークホルダーの皆様には、引き続き、私共の夢に向かって挑戦し続ける姿に、ご支援とご理解をお願いできれば幸いです。

代表取締役社長 山本 靖則 略歴

1983年4月   当社入社
2003年10月   分析計測事業部 試験機ビジネスユニット統括マネージャー
2013年6月   シマヅ オイローパゲーエムベーハー(ドイツ) 社長
2014年6月   執行役員
2017年6月   常務執行役員
2017年6月   製造・情報システム・CS担当
2017年6月   技術研究副担当
2020年4月   経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当
2020年6月   取締役
2021年4月  

専務執行役員

2021年4月   CFO
2022年4月   代表取締役社長(現在に至る)
2022年4月   CEO(現在に至る)
代表取締役社長 山本 靖則

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