社外取締役座談会

社外取締役座談会

2025年に創業150年を迎えた当社は、2035年のありたい姿として「プラネタリーヘルスを追求することで4つの顧客領域において社会価値を提供する企業」を目指しています。今回は、当社の現状や、ありたい姿の実現に向けた新中期経営計画に期待することなどについて意見を交わしました。

萩原  

2025年、島津製作所は創業150周年という大きな節目を迎えました。社外取締役の皆さんにも様々なイベントに参加していただきましたが、改めて1年を通じて、島津について再認識されたことはありましたか?

北野   島津製作所が150年の歴史の中で常に自らを革新し続けてきた姿勢と、その根底にある「科学技術で社会に貢献する」という理念の強さを改めて実感しました。2025年には、その理念が世界初のマイクロプラスチック質量解析技術として結実し、食品・水・環境の安全性向上に直結するサステナビリティ成果を生み出した点を高く評価しています。蓄積してきた技術を未来の社会課題解決へとつなげていくことこそ、次の150年に向けて私たちが担うべき責任であると強く感じました。
濱田   データでみるとダイバーシティ、とりわけ女性活躍はまだ道半ばに感じられますが、2025年9月の展示会で、島津のブースに女性社員が多数活躍している姿を見られたことは印象的であり、大変心強く感じました。また、装置の使用者の熟練度の差をAIの活用によって補うソフトウェアなど、「装置+デジタル」で価値を高めている点も大きな進化だと思います。
花井   東京の企業と比べると、島津には独特の「変わらない良さ」があると感じています。社外取締役に就任した当初は、変革すべきことがたくさんあると考えていましたが、守るべき軸をしっかり維持していることが良い意味で文化の芯になっていることに気が付いたからです。一方で、その良さを保ちながら、グローバル競争のなかでどうスピード感を持って変革するかが、これからの課題です。
中西  

150周年の記念行事では、海外のパートナー企業の方々も多数参加され、ネットワークとしてのグローバル化は着実に進んでいると感じました。これからは中身を充実していくことが課題だと思います。それから花井さんと同じく、150年にわたり積み重ねてきた歴史があると、そう簡単には変われない部分もあると思います。ただ最近は、大型のM&A、北米R&Dセンターやインド工場の設立、営業本部・製造本部の設立などに見られるように、経営姿勢が攻めに転じてきているという印象があります。真価が問われるのはこれからであり、今後それらからどれだけ成果につなげられるかが大事です。

萩原   社外取締役の皆さんの議論も後押しとなって、会社が攻めの姿勢に転じてきたと思っていますが、率直に言って取締役会は議論しやすい環境でしょうか?また、業務執行側は、社外取締役の皆さんのご意見に対してきちんと検討し、実行に移していると感じられますか?
濱田   取締役会は、自由に発言ができる環境が担保されており、非常に活発な議論が行われています。反対意見も出ますし、反対票も出ますので、非常に健全だと思います。
「変わらない良さ」の一方で、いま世界はAI・地政学リスク・貿易摩擦など、100年に1度の大変革が起きていると思っています。これから数年で、とてつもない変革が起こるのではないでしょうか。だからこそ、何を残し、何を変えるのかをもっと考えなければいけません。私は、その変革すべきこととして、資本効率の向上が重要であると考えています。決して今の島津の資本効率が日本のプライム企業の中で低いということではありませんが、米国の競合と比較するとまだまだ劣っています。
今後も更なる資本効率の向上を目指していかないといけないと思います。既に多くの議論を重ねているテーマですが、さらにもう一歩踏み込みたいと考えています。
中西   私も同じく、限られた資本でいかに大きな利益を生み出すかといった大局的な議論がもう少しあっても良いと思います。
島津の取締役会資料は精緻で、その分、議論が細部に向かいがちです。取締役会の本来の役割はもう少し大局的に会社の方向性について議論し、一つの指針を出していくことだと思います。そのためには、もう少し議論に時間をかけて、意見を出し合う場をさらに充実させることが望ましいと考えています。
花井   別の視点から言うと、取締役会は十分に機能していて、事前説明も充実しています。社外取締役として十分な情報を得た上で、取締役会で議論しています。しかし、相当議論に時間をかけたにもかかわらず、その後どう進んでいくのか見えにくい部分もあります。社外取締役は執行役員会に出席しないので、執行側でその後どのような議論・検討が行われ、最終的にどう実行されたかをもう一歩可視化してもらえると良いと感じています。
濱田  

取締役会で自由活発に意見を言うと、執行役の皆さんは後日検討します、持ち帰って考えます、とおっしゃることがありますが、その後のフィードバックがもっと欲しいです。 もちろん、「取締役会がこう言ったからそうします」だけではありません。当然ながら事業部の考え方があって、「これについては考えが異なる」という回答も一つだと思います。

花井   我々としては、執行側とよりコミュニケーションを取りたいのですが、濱田さんがおっしゃった通り、双方向のコミュニケーションにならないことがあります。後でフィードバックしてくれてもいいですし、取締役会でも積極的に議論したいと思っています。
北野   取締役会は、この1年で報告中心から議論を通じて意思決定を深める場へと大きく進化したと認識しています。今後は、議論内容が施策と成果に適切に反映されているかを検証し、必要に応じて再度議論を行う循環を確立することが重要だと考えています。
萩原   2026年度から新しい3か年の中期経営計画が始まります。取締役会でも時間をかけて議論されました。評価している点、および中計の実現に向けた課題についてお聞かせください。
花井   新中期経営計画については、多くの回数を重ねて議論しました。計測機器事業を中心に、新製品の開発スピードが上がって、収益向上につながることが期待できると思っています。また、リカーリングも、今まで以上に収益を伸ばすための議論を重ね、中計の資料にもしっかりと記載されました。しかし、あえて申せば、もう少し事業戦略に関することを盛り込んだほうがよかったのかなと今は思っています。例えば計測機器事業はいろんな領域に向けて多様な製品ラインナップを持っていますが、これで本当にグローバルに勝てるのか、もっと得意な領域に絞り込んだほうがいいのかなど、引き続き戦略的な議論が必要です。
濱田   私も同じ問題意識を持っています。取締役会は大局的な議論をし、実行については業務執行の皆さんにお任せしています。中計案を検討しながら、その戦略をどうやって実行するのかについての議論を深められなかったと感じています。例えば北米市場の攻略に向けてR&Dセンターを開設しましたが、競合の本拠地で短期的に結果を出すのは容易ではありません。だからこそ10年先を見据えたバックキャストの視点で、「5年後にここまでできていれば成功」といった具体的なマイルストーンまで落とし込む議論が重要であり、もう一度振り返る必要があると思っています。
萩原   今、10年先を見ながらバックキャストで足元や中期の課題を捉えることが重要との意見をいただきましたが、長期ビジョンを描く力についてはどのようにお考えですか。
濱田   島津は従来、技術で戦ってきて、やはりそこに皆さんのプライドもあるし、それは素晴らしいことですが、製品力だけではなかなか勝てない時代になっています。競合は我々よりも規模が大きいので、当然ながら研究開発に携わる人数も違うし、投資額も全然違います。花井さんがおっしゃった、我々がどの分野で勝負するのかということを戦略的にもっと議論していきたいです。
中西   中計はどうしても総花的になりがちです。本来はコンセプトづくりの初期段階で、社外取締役がもっと踏み込んで「こういう中計にしよう」という案を出してもよかったと反省しています。若手も含めた多様なメンバーで将来像を議論し、メリハリのある戦略に落とし込むことが今後のテーマだと考えています。
萩原   新中期経営計画で、期待しているところを聞かせてください。
中西   リカーリングビジネスです。機械系メーカーは、保守・サービスよりも装置の販売を優先する傾向にありますが、リカーリングビジネスは収益性が高く、会社全体の収益力を上げていく上で非常に重要です。その意味で、機械系メーカー特有の風土、文化を変えていくこともポイントだと考えています。
北野  

海外展開は今後の成長を支える重要な柱であり、海外売上比率の高さを踏まえると、引き続き海外市場での事業拡大が不可欠であると考えています。その実現に向けては、グローバル人財の育成が極めて重要です。昨年のNHK「魔改造の夜」で島津の底力を拝見しました。課題に直面した際に力を結集し成果を創出する島津製作所の底力は印象的でした。中期経営計画においても、海外拠点を含む部門横断の連携を強化し、共通の課題に対して議論と迅速に実行を進められる組織への進化を期待しています。

濱田   大きな戦略があっても、最終的には実行力が勝負になります。中計の振り返りでも、多くの成果がある一方、達成できなかったテーマも見えてきました。そこには組織風土や意思決定プロセスの課題も含まれます。島津が競合に勝つためには、例えば海外への権限移譲などの組織論やカルチャーの議論を進め、もっと迅速に動けるような変革が今後必要だと思います。
中西   歴史のある企業ほど組織風土改革を実行しますが、これは簡単ではありません。全てを変える必要はありませんが、変えるべき点を見極め、経営トップが繰り返しメッセージを発信し続けることが重要です。現場主導のみで変革を実現することは難しく、トップのコミットメントと、粘り強い継続が鍵だと考えています。
花井  

M&Aも組織風土や会社のカルチャーの変革に有効な手段になり得ます。買収した会社から学ぶべき点もあります。買収先の良い点を学び、自社のカルチャーに取り入れていくことで、新しい風を吹き込むことができます。買収を予定しているTescan社は規模の大きな企業で、島津が見習うべき点も多くあるはずです。これも、ある意味でM&Aの目的の一つかもしれません。

中西   花井さんのおっしゃる点は、非常に重要なことです。子会社になったから全部取り込もうとすると軋轢を生み出します。子会社の良いところは見習うべきだ、と言うだけでは浸透しないので、真摯な対応が求められます。
北野   M&Aも一つのきっかけになるかもしれませんが、グローバル人財の確保・活用も重要です。外部からの人財を迎え入れ、その力を発揮させる風土づくりが欠かせないと思います。加えて、今後は多くの社員が力を発揮し、AI戦略を実現していくための仕組みも重要と考えています。
濱田   違う視点では、東京の会社では若い人の転職・離職が加速しているという現実に直面した危機感を持っています。東京の会社の多くは、自分たちが変革しないと採用にも影響し、せっかく育てた良い人財が流出してしまいます。島津は、良い人財を採用し、そのほとんどが島津でのキャリアを積み上げていますが、日本の人口が減少していく過程で、この流動化の波は避けられません。波が来る前に変わるという意識、危機感が必要だと思います。
萩原   最後に、株主・投資家の皆さまへのメッセージをお願いします。
花井   島津製作所は、技術力・財務基盤・企業文化・人財の質など、多くの面で高い水準にある「良い会社」だと自信を持ってお伝えできます。グローバル人財の登用などいくつか課題はありますが、非常に優れた会社です。投資家面談のフィードバックから、社外取締役として会社を冷静に批判的に見る役割の重要性を改めて認識しました。良い点だけでなく課題も率直にお伝えし、独立した立場から必要な提言・チェックを行う。このプロセスができている会社であることを株主の皆さまに伝えたいと思います。
北野   サステナビリティ経営説明会を通じ、多くの投資家の皆さまと対話する機会をいただきました。技術開発への期待が非常に大きいと感じていますが、今後は人財戦略、リスクマネジメントなど、非財務領域の取り組みについても積極的に情報発信していきたいと考えています。
中西   日経SDGs経営大賞など、サステナビリティ関連の各種ランキングでも高い評価をいただき、田中耕一さんのノーベル賞受賞に代表されるように、技術力への信頼も厚い企業です。その期待に甘んじることなく、常に「期待を上回る」成果を目指していく姿勢が重要だと考えています。
濱田   投資家の皆さまには、日本企業のなかの島津という視点だけでなく、グローバル競合と比較したうえでの率直なフィードバックをお願いしたいと思います。日本企業の中では、比較的安心感のある投資先として見られてきた面もあると思います。ただ、島津の競合相手は、島津よりも規模の大きなアメリカの企業です。その市場の中で島津はどのような戦略で戦っていくのかということを厳しく、長い目で見ていただきたいです。
私たち社外取締役と投資家の皆さまは二人三脚です。会社をもっと良くしていくためにも、投資家の皆さまからは積極的にフィードバックをお願いしたいです。
萩原   本日の議論でいただいた貴重なご示唆を、一従業員としても具体的なアクションにつなげていきたいです。
ありがとうございました。

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