トップメッセージ

Excellence in Science!
お客様の夢に、私たちの夢を重ね、努力を加え、
“共感あふれる社会”を創ります

就任1年目を振り返って

正直なところ、あっという間に過ぎました。就任直後に中国ロックダウンの影響を受け、2023年3月期第1四半期決算は厳しい結果で終えました。中国のロックダウンが落ち着いたと思ったら、部品部材調達が一段と厳しくなり、モノづくりに支障をきたす状況になりました。さらに2022年9月には、子会社のコンプライアンス事案でステークホルダーの皆様に多大なご迷惑をお掛けすることとなりました。
一方、そのような状況の中で日水製薬株式会社(現島津ダイアグノスティクス)の完全子会社化を実現し、ヘルスケア領域におけるシナジー創出に向けた大きな一歩を踏み出し、また、企業価値向上を図ることを盛り込んだ新中期経営計画(以降、新中計と記載)の策定も行うことができました。
嬉しかったことは、社長就任あいさつで海外各子会社を訪問した際に、日本と違い海外では早い段階でコロナ前の日常に戻っていたこともあり、現地社員皆がパワフルに活動している姿に、とても元気づけられたことです。

前中期経営計画の成果と課題は

前中期経営計画(以降、前中計と記載)では、為替効果があったものの、3期連続で増収増益を達成できました。特に最終年度は、成長投資に加え、部材調達難や原材料価格の高騰など、厳しい逆風の中、公表数値を達成することができました。また、昨年、試薬製造販売会社の日水製薬をグループに迎え、臨床分野への足掛かりを得ることができました。前々中計から「アドバンスト・ヘルスケア」と名付けて計測機器の臨床分野での活用や計測・医用の融合に取り組んできましたが、なかなか目に見える成果につながりませんでした。今回の買収により、「アドバンスト・ヘルスケア」分野への展開に向けた大きな一歩を踏み出せたと考えています。
一方、新型コロナウイルス感染症の影響もありますが、開発の遅延が課題として挙げられます。感染症対策関連の開発では予想以上に早く進んだものもありましたが、部材入手難対策のための設計変更などにも時間を取られ、既存製品群での新規開発と新分野に向けた製品開発に遅れがでました。また、グローバルにビジネスを展開する中で、経済安全保障や地政学リスクの影響が大きくなってきています。地域の目指す方向が異なることを背景に市場の要求が多様化し、また、変化の激しい時代背景から顧客要求への迅速な対応が求められるなど、当社グループを取り巻く事業環境が以前とはずいぶん変わってきています。もう一段成長するためには、海外での企業活動を一層強化する必要があることを痛感しています。そのため、新中計では販売・サービス、それに加えて開発のグローバル化にも力を入れます。もちろん、グループ会社のコンプライアンス事案の再発防止に向けたグループガバナンスの強化や、DXの推進も大きな課題であり、対応を強化します。

新中計の3つのミッションと4つの領域

新中計では3つのミッション「人の命と健康への貢献」「地球の健康への貢献」「産業の発展、安心・安全な社会の実現への貢献」を掲げました。これらは今回新たに考えたのではなく、私が社長就任時に何に取り組みたいかと考えて導いたものです。コロナ禍で一段とクローズアップされたのが「人の命と健康」です。私は、そこに貢献することが、当社グループの大きな使命であると考えています。また、人が健康であることはもちろんですが、人が住む「地球の健康」が気候変動の中で壊されることがあってはなりません。ミッションの中核に「プラネタリーヘルス」という概念を置いていますが、これは人類の健康と地球の健康は切り離せないものであり双方の健康を追求するということで、現在世界に広がりつつある概念です。プラネタリーヘルスは、まさに、当社が1992年から経営理念として掲げている『「人と地球の健康」への願いを実現する』と同じ考え方です。加えて、プラネタリーヘルスを追求するためには、私たちの住空間も含め、持続可能なかたちで「産業の発展、安心・安全な社会」を実現しなくてはいけません。これらの考えを新中計ではミッションと定めました。
4つの領域は、3つのミッションの中で、当社グループとして展開したい事業領域を定義したものです。ヘルスケア領域はライフサイエンス(製薬・食品)とメドテック(臨床・医療)の2つに分けて取り組み、グリーン領域は地球の健康に貢献する事業を展開します。また、産業の発展と安心・安全な社会の実現に重要なのが、マテリアル領域とインダストリー領域の事業です。インダストリー領域は幅広い事業領域ですが、当社グループは半導体関連事業を中心においた展開を考えています。

“Excellence in Science”と“Best for Our Customers”が新中計の基礎

“Excellence in Science”と“ Best for Our Customers”が新中計の基礎となる考え方です。“Excellence inScience”は2012年にブランドステートメントとして制定しました。これは「科学技術で社会に貢献する」という社是を現代風に言い換えたもので、「科学の領域で卓越した存在“Excellence”になる」意志を持ち、「そのために様々なことに挑戦する」という姿勢で、ナンバーワン、オンリーワンを追求するというステートメントです。
“Best for Our Customers”は2007年から社内スローガンで掲げているものです。新中計を進めるに当たって、“Best for Our Customers”の視点で、お客様にとってのBestは何かを今一度考えようと言っています。当社グループが、良い製品を開発しご提供できればそれで良いのか、と問えば、それだけでないことは明らかです。お客様が本当に必要なものは、装置ではなく、分析・測定によって提供されるデータです。加えて、ご提供する装置だけで、お客様が必要とされるデータが手に入るかというと、それだけでは無理で、他に多くのものが必要です。当社グループがナンバーワン製品をご提供できたとしても、お客様にデータをお届けすることはできません。つまり、“Best for Our Customers”にはなれないということです。当社グループが、お客様の分析・測定に必要な準備段階からデータ活用段階まで、すべての装置・技術群をご提供することで、初めて“Best for Our Customers”の会社を目指すことができます。装置、消耗品、ソフトウェア・サービスを含むトータルソリューションをお届けできる会社になることが必要です。そのために、独自の技術開発力を磨き、パートナー企業の方々と協力して、製品、前処理、自動化の技術と装置、消耗品や解析ソフトを開発する力(これを社会実装力と定義しています)を強化し、ナンバーワン・オンリーワンの製品・サービスの提供を実現していきたいと考えています。

ガバナンスの強化

マネジメント体制として、ガバナンスの強化を最優先に取り組みたいと考えています。「企業価値の向上」や「社員のエンゲージメントの向上」「グループ会社との関係強化による国際競合力の向上」といった目的で、ガバナンスの強化は大変重要です。
ガバナンス強化に必要な企業理念や本社のコーポレート・ガバナンス体制はできあがっていますので、組織体制強化として、グループ全体のガバナンス体制強化と風土改革、リスクマネジメントの3ディフェンスライン(事業部門・管理部門・監査部門)の構築に取り組みます。
昨年、グループ全体のガバナンス体制強化に向けて、グループマネジメント規定を制定しました。今年は、この規定をグループ各社の規定に落とし込み、細則を整備しながら周知徹底する活動を展開します。風土改革に関しても、昨年後半から組織別に240人のリスクマネジメント推進責任者を設置し、各組織で業務の見直しを進めています。「この業務の目的は何か?」「遵守すべき法令やルールはあるか?準拠しているか?」「より良い業務のあり方はどうか?」などを、毎週議論し、おかしいと思うルール、慣行や業務手順は変更する。また、場合によっては会社に課題提起し、グループ全体での取り組みとして改善を進めるという活動を展開しています。このような取り組みを継続することで、自分たちの業務の意義を理解し、正しい手順・ルールを理解し遵守し、かつ皆で改善を進める風土を醸成したいと考えています。
3ディフェンスラインは、グループ全体で強化されるべきものですが、現状、本社ではできあがっていますが、残念ながら不足している会社もあります。そのため、外部専門家の力も借りてグループ全体でディフェンスラインが機能する仕組みを作ります。また、モニタリング機能の強化も同時に進めたいと考えています。
リスク対策に関しても、リスク感度の高い風土づくりが重要です。当社グループ社員は、コンプライアンス遵守を念頭に日々業務に邁進しています。ただ、人間は弱い生き物です。ふっと弱さが出た時に、思わぬことが起こります。弱さが出た時にサポートできる仕組みが大切で、もしも自分の周りで何か気になることがあったら、躊躇なく上司や通報窓口に伝えることができる風土を作りたい。当社グループの社員は、他人を尊重する意識とやや遠慮ぎみなところがありますので、おせっかいが得意な人を増やして、サポート力の高い会社にしたいと思っています。

夢の実現に役立つ会社に

学生時代の私は、エネルギー問題の解決に向けて核融合発電を実現したいという夢を抱いていました。当社に入ってからは、担当する材料試験の世界で、ボタンを押したら材料の特性がすべて分かる装置を作りたいと夢見ていました。今の立場では、社員にお願いしていろいろな夢をかなえてもらうしかありません。当社の社員皆が、実現したいと思う夢を恥ずかしがらずに言い合い、共感しあって実現に向けて努力する。実現のために必要なお金や組織は、会社の判断で投資して支援する。そういう会社になれたら良いと思っています。お客様に、「島津に頼めば聞いてくれて、実現してくれる」と思っていただくことができれば、お客様の夢も語っていただけるでしょう。世界中のお客様から、島津があってよかったと言っていただける会社になりたいと思います。
人は未来に向かって生きています。過去に向かって生きる人はいません。その未来には、一人ひとりの思いや夢があります。人の夢に共感し実現に向けて努力する会社、夢の実現に役立つ会社になることを目指したいと思います。
関係するすべての皆様には、引き続き、ご理解とご支援をお願いいたします。

代表取締役社長 山本 靖則 略歴

1983年4月   当社入社
2003年10月   分析計測事業部 試験機ビジネスユニット統括マネージャー
2013年6月   シマヅ オイローパゲーエムベーハー(ドイツ) 社長
2014年6月   執行役員
2017年6月   常務執行役員
2017年6月   製造・情報システム・CS担当
2017年6月   技術研究副担当
2020年4月   経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当
2020年6月   取締役
2021年4月  

専務執行役員

2021年4月   CFO
2022年4月   代表取締役社長(現在に至る)
2022年4月   CEO(現在に至る)
代表取締役社長 山本 靖則

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