お客様を中心とする事業展開へ
当社グループは、目指す姿、および経営理念である「人と地球の健康」への願いを実現するため、中期経営計画において、「世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーへ」を目指しています。その中で、ヘルスケア、マテリアル、グリーン、インダストリーの4つを社会価値創生領域と定め、各領域における“お客様中心”志向への体制に会社を変革していくという考え方のもと取り組みを進めています。
2024年4月、国内の事業部の営業部門を移管し「営業本部」を新設するとともに、「本気の営業改革」を断行しました。ポイントは、製品を軸とする事業展開から、お客様を中心とする事業展開へ大きく舵を切るというものです。営業本部を設立するまでは、各事業部の中にそれぞれ営業部門があり、その事業部の製品だけを販売するという体制でした。そのため、同じお客様のところに複数の営業が訪問していた訳です。それらの営業部門を事業部から切り離し、新たに立ち上げた営業本部に集約することで、各営業は、どの事業部の製品でも販売できるようになりました。これは、お客様の近くで、お客様の言葉でお客様の課題を理解し、トータルソリューションを提供する営業を目指すための体制変更です。
背景として、当社グループには長年ポートフォリオを変革するような新事業が生まれていないという課題があります。プロダクトアウトの発想を改め、営業ドリブンでの開発ができる会社に生まれ変わらないと、柱となる新事業を生み出すことはできないと考えたからです。
お客様ニーズに合わせたトータルソリューションの推進
コロナ禍以前、医用機器事業部の営業は、主に放射線科の先生に対してレントゲンなどの画像診断装置の専門販売のみを行っている状態でした。2020年にパンデミックになり、当社グループは新型コロナウイルス感染症のPCR検査試薬と全自動PCR検査装置を開発しました。それは医用機器事業部ではなく、分析計測事業部の製品です。さて、これを誰が販売しに行くのか?
この時、見事に両事業部の営業の協力関係が構築され、医用機器事業部の営業が前面に立ち、新型コロナウイルス感染症検査システムを病院の臨床検査室に販売することができました。この成功体験をもとに営業本部では、医療関係のお客様を担当するメドテック営業部を新設し、お客様の仕事の各フェーズ(予防・検診、初期診断、確定診断、治療、予後)に合わせたトータルソリューションを提供する営業体制としました。
また、臨床検査市場での応用を事業化するためには、ハードウェアである分析装置の事業だけでは不十分で、検査に用いる試薬とセットで提供し、装置納入後はその試薬で利益を稼ぐというリカーリングビジネスを行う必要があります。そのため、日本水産の子会社であった日水製薬を2年前に子会社化しました。現在は島津ダイアグノスティクスと社名を改め、この臨床検査市場での協業を進めています。
このように、グループ会社や社外提携先の商材も含めたトータルソリューションとして、多くの製品をお客様のニーズに合わせて提案しています。
新たな販売店制度の展開
しかし、営業部門における事業部の垣根を取り払ったことで、一つ大きな問題がでてきました。それは既存の代理店制度です。これまで事業部ごとに異なる代理店制度をとってきましたので、統一する必要が生じました。特に分析計測事業部では「競業禁止」を求めてきたため、「島津代理店」と「島津以外なら何でも取り扱う商社」に分かれているという状態が何十年も続き、統一化のハードルとなりました。
また、代理店にはテリトリー制度を設けていましたので、お客様の地域を跨いだ展開に十分に対応することができず、その結果市場のカバー率が上がらないという課題もありました。さらには、お客様の研究開発も、化学合成を中心としたものから、生物を利用するライフサイエンスを中心とした方向性への転換が進んでおり、その業界を得意とする商社がM&Aで規模を拡大しているという課題もありました。
これらの課題を解決するため、新しい販売店制度に一新しました。まず、テリトリー制度を撤廃し、どの販売店がどのお客様に行っても良いことにしました。そして当社グループの営業部門同様、どの販売店でもどの事業部製品を販売して良いということにしました。また、代理店の枠組みは維持しつつ、競業禁止を求めない「取扱店」という新たな枠組みも設け、先ほどのライフサイエンス業界を得意とする商社を販売チャネルに加えることで、販売総戦力を飛躍的に拡大しました。
「Going for the ONE 営業新時代」へ
さて、これらの大改革を行ってから1年が経過しました。これまでにないお客様から引き合いをいただくなど、成果が出始めてきています。今後の課題としては、国内の改革をしっかりと軌道に乗せて成功体験を積み重ねつつ、これを海外に展開していくことです。海外では、各事業部が別の販売子会社を運営していますので、それらを統合するなど、かなりの労力が必要になりますが、スピーディに進めていきます。
営業担当役員としてのスローガンは「Going for the ONE 営業新時代」としました。「Going for the ONE」というのは、私が2023年4月、営業担当役員に就任した際に示したスローガンです。「Best for Our Customersという一つの目的(ONE Purpose)、を達成するために、ONE Shimadzuとなり、No.1を目指すのだ!」という意味で、3つのONEを実現するという思いをこのスローガンに込めています。
米国新政権における関税など、世界の情勢は混迷を深めています。しかしながら、人々のプラネタリーヘルスへの思いは高まっており、それらを解決することを目指す当社グループにとっては追い風が吹いていると考えています。
私が昔から信条としているのは「仕事は楽しもう」ということです。難易度の高い仕事、新しいことにチャレンジする仕事こそ、楽しいはず。楽しんでこそ前向きに取り組めるという意味です。
当社グループは2025年3月末に150歳の誕生日を迎えました。これまでの変革および戦略のもと業績を拡大し、さらに次の200周年に向けて、この難しい時代を乗り切ることを大いに楽しみたいと思います。
常務執行役員
営業担当
営業本部長 兼 東京支社長 的場 俊英
略歴
1986年4月 | 当社入社 | |
2005年4月 | 島津サイエンス西日本(株)取締役営業本部長 | |
2008年4月 | 分析計測事業部 営業統括部長 | |
2015年4月 | Shimadzu do Brasil Comércio Ltda.副社長 | |
2015年10月 | Shimadzu do Brasil Comércio Ltda.社長 | |
2019年4月 | 営業戦略室長 | |
2020年4月 | 執行役員 分析計測事業部 副事業部長 | |
2023年4月 | 常務執行役員 営業担当 東京支社長 | |
2024年4月 | 常務執行役員 営業担当 営業本部長 兼 東京支社長(現在に至る) |