
人的資本経営を通じて、変革をやり切る組織をつくる
私はCHROとして、人的資本を「企業価値を生み出す源泉」であると同時に、「経営の意思を現場で実行するための基盤」と捉えています。人的資本経営は、人事施策の集合体ではなく、経営そのものです。成長領域や事業ポートフォリオの変化に応じて、どのような人財を、どのように活かすのかを経営として考え続けることが、CHROの責務であると認識しています。
当社グループは、「科学技術で社会に貢献する」という社是のもと事業を展開し、企業価値を高めてきました。しかし、事業環境の変化が一層激しさを増す中で、戦略を描くだけでは不十分です。変化を的確に把握し、現場で試行錯誤を重ねながら最後までやり抜く組織と人財があってはじめて戦略が成果として結実します。
社員一人ひとりの挑戦と成長を支えながら、それを企業価値の向上へと結びつけていきたいと思います。そして、その挑戦、成長、企業価値向上の好循環を、偶然ではなく「仕組み」として回すことを目指します。
また、人的資本経営と内部統制・ガバナンスは表裏一体であると考えています。挑戦を促すためには、同時に公正さ、透明性、説明責任が担保されていることが前提になります。報酬・評価・異動・登用といった人財に関わる意思決定は、企業リスクとも直結する重要な領域です。判断プロセスが不透明だと、短期的には問題が表出しなくても、組織の納得感や信頼は簡単に損なわれます。それゆえ、私は人事ガバナンスを取り組みの中心に位置づけ、判断基準やプロセスを明確にし、説明責任を重視していきます。
内部統制やガバナンスは、組織を萎縮させるためのものではなく、社員が安心して挑戦できる環境を整え、経営判断の質とスピードを高めるための土台であると思っています。ガバナンスとは「問題が起きた後に機能する仕組み」ではなく、「問題を起こしにくい状態をつくる営み」であり、人財に関わる意思決定が積み重なることで組織文化が形成されます。そのため、一つひとつの判断に一貫性を持たせ、現場が迷わず動ける状態をつくることが、CHROとしての重要な役割であると考えています。
「人と地球の健康」の追求を支える人財と組織のあり方
当社グループが2035年に目指す姿は、「プラネタリーヘルス(人と地球の健康)」の追求を通じて社会価値を創出し続ける企業です。ヘルスケア、グリーン、マテリアル、インダストリーの4領域で、科学技術を社会実装へとつなぐ役割を果たすためには、技術力だけでなく、人財と組織の力が必要です。
私が重視しているのは、専門性の高さに加え、複雑化する課題に対して分野や国境を越えて共創できる力、そして社会からの信頼に応えられる倫理観と判断軸を備えた人財の確保・育成です。コンプライアンスや人権、データ活用など、企業に求められる責任の幅が広がる中で、自ら考え、行動できる人財が、競争力を支えると考えています。
また、多様性を尊重し、異なる価値観を受け入れる組織こそが、イノベーションの前提条件であると同時に、ガバナンスの観点からも非常に重要です。性別や国籍、キャリアの違いに関わらず、誰もが安心して意見を表明し、建設的な議論に参加できる環境を整えることで、心理的安全性と規律が両立した、よりよい組織文化が育まれると考えています。
こうした組織文化の形成こそが、技術や事業を長期にわたって支え、2035年に目指す姿を実現する原動力になると考えています。
新中期経営計画における人的資本・ガバナンスの重点施策
2026年度から始まる中期経営計画(2026–2028)では、AIX(AIトランスフォーメーション)の進展を見据え、経営基盤の高度化、人的資本経営、そして内部統制・ガバナンスの強化を推進します。具体的な取り組みとしては、以下の4つです。
第1に、事業戦略と連動した人財獲得・育成の高度化です。多様で専門性の高い人財を安定的に確保するとともに、次世代の経営リーダーや高度専門人財を計画的に育てます。人財を「点」ではなく「層」として厚くすることで、事業の持続的成長に寄与します。
第2に、エンゲージメントを起点とした組織力の強化です。グループ共通の指標と対話の仕組みによって課題を抽出し、改善につなげるサイクルを定着させます。
第3に、健康経営および安全の深化です。心身の健康と安全は人的資本の最も重要な基盤であり、企業として果たすべき重要な責任です。
第4に、グローカルな人財マネジメントと人事ガバナンスの強化です。国際的に通用するルールやデータ基盤を整備し、公正で透明性の高い意思決定を実現することで、戦略的人財活用とリスク管理の両立を図ります。
私は、これらの取り組みを通じて、人的資本への投資を将来の成長だけでなく、企業としての信頼の確立にもつなげていきます。
専務執行役員
CHRO、総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 青山 恵則
略歴
| 1991年 4月 | 当社入社 | |
| 2013年 1月 | 人事部 人材開発室長 | |
| 2017年 4月 | 人事部長 | |
| 2020年 4月 | 執行役員 総務部長 | |
| 2022年 4月 | 常務執行役員 法務・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 | |
| 2024年 4月 | 常務執行役員 人事・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 | |
| 2025年 4月 | 常務執行役員 CHRO、総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 | |
| 2026年 4月 | 専務執行役員 CHRO、総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 (現在に至る) |


