島津の人的資本への考え方
当社グループは創業以来、一貫して「人」を大切にする企業文化を守り続けてきました。また、社是「科学技術で社会に貢献する」は私たちのDNAとして深く根付いており、全社員の行動指針となっています。
社員を大切にする姿勢は、企業価値創出の基盤であり、社員の力を引き出して結集することで社会価値を創出し、世界のパートナーと共に社会課題の解決に貢献できると確信しています。当社グループは持続可能な社会の実現に向けて、ESGの観点からも積極的に取り組んでいます。企業の枠を超えた協業を促進し、多様なバックグラウンドを持つ社員が共に課題に取り組むことで、より豊かな未来を築いていくことを目指しています。
中長期的に当社グループの企業価値を向上させるためには、変化する事業環境に適応しつつ、事業戦略と連動した人財育成と社内環境の整備が不可欠です。その上で、多様性を活かし、イノベーションを促進する取り組みを強化することが重要であると考えています。人財育成と社内環境の整備は、現中期経営計画の基本方針「5つの事業戦略」「7つの経営基盤強化」においても重要な役割を果たしています。
社員が活躍できる基盤を整備するために継続的に投資することは、優れた人財の確保にも寄与し、働き甲斐を感じ、心身の健康が保たれることで、エンゲージメントの向上にもつながると考えています。
効果最大化に向けたKPIの設定
当社では、従来独自手法でエンゲージメント調査を実施していましたが、2023年度からグローバルで標準化されたプラットフォームを活用したサーベイを開始しました。このサーベイの結果は、継続的な企業価値の向上と相関関係がある重要な経営指標と位置付けています。今後は、国内グループ会社だけではなく、海外グループ会社にも対象を広げる予定です。経年比較は今後になりますが、現場レベルでの組織課題に取り組むための貴重なデータとしても活用していきます。また、各人財施策の目標については、可能な限り定量化し、KPIを設定して透明性を持たせています。事業環境や事業戦略の変化に応じて、より効果的なKPIを設定することで、施策の効果を最大化していきたいと考えています。
次なる成長に向けた3つの人財施策
(1)継続的な成長に向けた経営リーダーの育成
当社では、職種やポジション、年齢階層に応じた多様な教育プログラムを実施し、継続的な成長を支える経営リーダーの育成に力を入れています。特に、事業戦略および経営基盤の強化を実現するため、経営幹部の育成は重要なテーマと位置付けています。1997年から「経営塾」を通じて当社グループの成長を牽引する経営幹部候補の育成に取り組んできましたが、2023年度からはリニューアルした経営幹部候補育成プログラムを開始しました。このプログラムでは、テーマを設定し、関係者との議論を重ねることで、志を持って経営層に対して提言する力を養うことを目指しています。また、従来とは異なる業務を経験させるタフアサイメントや社外派遣・研修への参加を取り入れ、視野を広げ、視座を高める取り組みを行っています。メンバーには、将来の重要なポジションを担ってもらうために意識改革を促しています。
加えて、ビジネス課題を解決し事業を牽引する「ビジネスリーダー」の育成も重点的に行っています。リーダーシップの理論は数多く存在しますが、部下の状況やその時の環境に応じて最適なリーダーシップを選ぶことが求められます。そのため、柔軟に対応できるリーダーシップの引き出しを多く持つマネージャーの育成を目指しています。このトレーニングは、本社および海外グループ会社のマネージャー層を対象に実施し、社内講師の育成を進めることで、国内グループ会社への展開も計画しています。
最後に、世界各地での事業拡大を支えるため、海外グループ会社の経営幹部向けに特化した育成プログラムを導入します。このプログラムでは、地域に応じた事業戦略の立案力、求められるガバナンスの理解、企業理念の浸透、および効果的なリーダーシップを育成します。これにより、各地域の経営課題に適切に対応できる人財を育て、グローバルな競争力をさらに強化していきます。
(2)イノベーションを支える技術力向上と専門性の強化
当社グループの成長の源泉は、日々の技術力向上と高い専門性を持ち、イノベーションと価値を創出できる人財の活躍にあります。そのため、世界の優れた専門家と協業し、新たな技術や事業機会を創出する専門人財、高品質の新製品を生み出すための開発・設計力を備えた専門人財、高度な管理業務を遂行する専門人財、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)に対応できる人財の育成が不可欠です。
この目的を達成するために、大学との連携に基づき、社員でありながら博士号取得に専念できる REACHプロジェクトを推進しています。さらに、2024年度からは社会人博士育成支援制度(SPARK)を導入し、社員の博士号取得を支援することで、専門性を一層高める取り組みを行っています。
また、資格取得奨励制度や教育研修を通じて専門人財の育成に注力しており、今後は高度な国家資格や社内資格をオープンバッジで認定することで、社員が専門性を獲得しやすい環境を整えていきます。
(3)多様なキャリアパスの提供による成長の促進
当社では、社員に多様なキャリアパスを提供し、それぞれの適性や希望に応じたキャリア形成を支援しています。これまで、社員にはマネジメント職を担うことを期待してきましたが、2024年度からプロフェッショナル職として特定の分野で専門性を高める選択肢も用意しました。このように、技術や知識の深化を促進する人事制度を構築しています。
社員のキャリアは固定的ではなく、流動的なものです。社員はある時期にプロフェッショナル職として活躍し、別の時期にはマネジメント職としての役割を果たすことも可能です。これにより、社員は多様な経験を通じて成長し、会社としても組織内での柔軟な人財配置が実現します。この結果、全体の適応力や競争力の向上が期待されます。
ステークホルダーのみなさまへ
冒頭に述べましたが、当社グループの強みは「人」を大切にする企業文化と、社是がDNAに深く根付いていることにあります。私たちのルーツである「御好次第何品ニテモ製造仕候也※」は、知識を貪欲に吸収し、お客様の要望に応える真摯な姿勢を育んできました。これは、150年にわたり培ってきた重要な価値観です。
しかし、社会やビジネス環境は絶えず変化しており、企業が果たすべき責任も増大しています。こうした変化に対応し、社員全員がこの精神を受け継ぎ、さらに活躍を遂げるために、人財施策を展開し、企業としての進化を続けていきたいと考えています。皆様のご支援とご理解があってこそ、当社グループは未来に向けてさらなる成長を遂げることができます。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
- ※ 1882年(明治15年)に、当社最古の製品カタログといわれる「理化器械目録表」が発行されました。その末尾には、"ご要望に応じて、どんなものでもおつくりします"を意味する「御好次第何品ニテモ製造仕候也」が記されています。
常務執行役員
CHRO、総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 青山 恵則
略歴
1991年 4月 | 当社入社 | |
2012年10月 | 人事部 担当部長 | |
2013年 1月 | 人事部 人材開発室長 | |
2016年10月 | 人事部 副部長 | |
2017年 4月 | 人事部長 | |
2020年 4月 | 執行役員 総務部長 | |
2022年 4月 | 常務執行役員 法務・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 | |
2024年 4月 | 常務執行役員 人事・総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当 | |
2025年 4月 | 常務執行役員 CHRO、総務・内部統制担当 リスクマネジメント副担当(現在に至る) |