DX担当役員メッセージ

CX(Corporate Transformation)、BX(Business Transformation)の推進

前中期経営計画期間中はコロナ禍によるロックダウン、社員の感染による人手不足が起こりました。また、2022年度は、半導体をはじめとする部品入手難などで、思うように生産ができないという状況が続きました。社員が一丸となり、人海戦術で何とか乗り切ったというのが正直な感想です。困難に立ち向かい、乗り切ったことは嬉しいことですが、一方で、様々な課題も見えてきました。
一番課題と感じたのは、デジタル技術・データの活用が遅れているということです。そこで、新中期経営計画では、経営基盤を強化するためにDXを推進します。DX推進のためには会社の風土やマインド、文化を変革する“CX(Corporate Transformation)”、ビジネスモデルを変革する“BX(Business Transformation)”、この2つが必要と考えています。

業務の標準化とデータ利活用によるCXの推進

CXは業務の標準化の推進がメインテーマです。業務システムの改善・改修やバージョンアップの際には多大な苦労を伴います。なぜなら、部門毎に異なるワークフローで、部門最適でシステムを構築しているからです。これは、非常にまずいことです。部門最適でシステムを構築すると、改善の効果が限定的になります。また、簡単に業務を引き継ぐことも困難になります。
そこで、標準化を強力に進めます。システムや手順を標準化し、全部門共通でフォーマットやプロセスを統一します。標準化を行うのは、システム部門だけではありません。製造、営業、サービスなど、各部門の標準化を全社で推進し、すべての活動がデータで見えるようにしていきます。
データ利活用による製造プロセスの変革によりQCD(Quality(品質)、Cost (コスト)、Delivery(納期))の改善を行います。Quality(品質)に関しては、製造データ活用による品質改善を行います。例えば、製造データに少しでも変化があると、直ちにその変化が起きた理由を確認し対処します。早めに対処すれば、不具合の芽を早期に摘むことができ、品質向上につながります。Cost (コスト)に関しては、製造品質向上による損失コスト削減や自動化によるコストダウンを推進します。Delivery(納期)に関しては、サービスが持っている据付情報、営業が持っている顧客の納期情報など、製品に関わるあらゆるデータを集め、グローバルでお客様がいつ・どこで製品の納品・据付を希望されているかを把握し、納期に合わせた最適な生産を行います。

BXを通じて世界のパートナーと共創

BXは、デジタルサービスによってお客様との接触機会を増やし、リアルと組み合わせて世界中のパートナーと関係性を深めることと、デジタルサービスを通じて得られるデータとリアルな営業情報を集約し、解析・活用してビジネスに繋げることを行います。今後は、データ分析、AIチャット・コミュニティサイトなどから声を拾い、社内へフィードバックします。デジタルとリアルをつなぎ、世界のパートナーの声をいち早くとらえることで、ビジネスと共創の機会を拡大します。

DX人財の育成

DXを推進するためにはもちろんツールが必要ですが、そのツールを使いこなす人財がいなければ、宝の持ち腐れになります。人材については、中途採用なども進めていますが、各社ともIT人材は取り合いで、いつ優秀な人材が獲得できるかわかりません。そのため、社内で人財を育てています。当社は、2021年にDX・IT戦略統括部を発足しました。発足当初より、データを活用できる人材を育成するプログラムを立ち上げ、今では、プロクラムを受講した人財が、各部署で活躍をしています。今後もこの流れを促進し、多くの社員がデータを使いこなせるようにしていきます。

改善のDNA

現状、当社グループはDX先進企業かと問われれば、残念ながら違うといわざるを得ません。まだまだ、標準化ができていませんし、部門最適でのシステムも散見されます。
ただ、私は悲観してはいません。なぜなら、島津社員はたゆみない改善のDNAをもっているからです。37年前から、当社グループではDIO(Do It Ourselves)という小集団活動を続けています。最近では、DIOでRPAを使った省力化、自動ラインを作るといった活動もありました。社員には、改善は難しいと考える人よりも課題解決にトライする人が多いと思っています。自らが考え、そしてたゆみなく改善を続ける風土の中でDXを推進します。当社グループの社員であれば、きっとできるはずです。

島津のDXにご期待ください

振り返ると、入社以来製品開発に14年、製造に20年、販売に5年携わってきました。いろいろな仕事を経験したことで、相手の立場が理解しやすくなったと感じています。特に、転機となったのは入社5年目で工場の立ち上げのためにドイツの子会社に出向したことです。製造工程全てに関わり、社内外のいろいろな人と知り合うことで視野を広げることもできました。
社員も視野を広げて、DXを推進してほしいと思います。そうすれば、島津は必ず今よりも強くなります。大きく変革する島津のDXにご期待ください。

専務執行役員
製造・CS担当 DX・IT戦略担当
人事副担当 海藤 克明

略歴

1983年 4月   当社入社
2000年10月   分析機器事業部 LC部主任技師(課長)
2003年 6月   Shimadzu U.S.A. Manufacturing, Inc.社長
2008年10月   分析計測事業部 分析計測工場長
2011年 6月   分析計測事業部 副事業部長 兼 分析計測工場長
2015年 6月   Shimadzu Scientific Instruments, Inc.社長
2016年 6月   執行役員 Shimadzu Scientific Instruments, Inc.社長
2020年 4月   常務執行役員 製造・CS・情報システム担当
2021年 4月   常務執行役員 製造・CS担当 DX推進(現DX・IT戦略)副担当
2023年 4月   専務執行役員 製造・CS担当 DX・IT戦略担当
人事副担当(現在に至る)