CFOメッセージ

前中期経営計画を振り返って

前中計初年度の2020年は、新型コロナ禍による急激な業績悪化に備え、4月に総額200億円のコマーシャル・ペーパーを発行し、当面の手元資金を確保しました。また、子会社の資金繰り悪化に備え、必要資金を供給する体制も整えました。コロナ禍で逆風が予想された中、結果としては、当社の主力事業、製品が人の健康を含め社会にとって不可欠なものであったことに加え、国内外の従業員の奮闘により、3期連続で過去最高の売上高・営業利益を更新できました。またキャッシュ残高も、2019年3月期末の700億円から2倍以上の1,500億円まで増加し、財務の安定性はこの3年間で飛躍的に高まりました。

攻めの財務へ

新中計では、手元資金を次なる成長につなげることを示すキャピタルアロケーション(資本配分)を策定しました。「攻めの財務」をスローガンに掲げ、財務健全性を確保しながら、持続的な成長に必要な戦略的投資を実施します。社会価値創生領域での事業成長に資する投資を強化し、また、人財/開発/製造/ DX関連の基盤強化に注力します。
成長投資に必要な営業キャッシュ・フロー枠としては、3年間累計で3,000億円以上を確保できる見通しです。そのうち半分を戦略投資に充て、800億円を設備投資に、730億円を研究開発に投じる計画としています。前年度の日水製薬(現 島津ダイアグノスティクス)案件は、当社にとってこれまでで最も大きなM&Aとなりましたが、今後3年間はより積極的に動く方針です。他方、M&Aを繰り返して成長している競合企業と比較し、当社は経験値で大きく劣ることも事実です。そこで、自ら機会を獲得し目利きやスピード感など経験値を高めるため、2023年4月にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)をベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン株式会社と立ち上げました。運用総額は50億円で、投資額2億円までの案件であれば、CTOとCFOの合意で決裁できるスキームとしました。本CVCの主たる目的は、当社と親和性の高い技術や知見を持つスタートアップに投資・支援することで、当社製品・サービスの成長や新規事業に必要な技術を獲得し、新たな事業機会の創出につなげることにあります。

ROIC経営

新中計で、財務戦略の柱の一つとして「ROIC経営」を挙げています。ROIC(投下資本利益率)は「投下した資本を使ってどれだけの利益を生み出せたのか」を表す数字です。前中計期間から、導入について様々な角度から検証してきました。社外に公表するのは連結での数字ですが、社内では現中計期間中に事業部単位、製品ビジネスユニット(BU)単位でのROIC目標を算出し、資本効率の視点から各々事業と製品の強化を図ることを目論んでいます。もっとも規模の小さいBUでは、経費負担率を変更するだけで、ROICの数値に影響が出るといった課題があります。ROICは、資産・資源の削減など資本効率の向上だけでなく投資判断に活用することも想定しており、規模に関わらず公平性を保てる目標設定を可能とするべく運用方法に知恵を絞っている状況です。投資効率を継続的に改善することの重要性を浸透させることは理財部門の大きな役割です。

内部統制・ガバナンスの強化

2022年には、子会社でコンプライアンス(法令遵守)違反が起こりました。当社グループ全体で、改めて「コンプライアンスはすべてに優先する」を徹底しています。財務面では、他社事例などをもとに、財務データの変数や指標を分析し、会計不正の兆候を識別することで、発生を未然に防止する仕組みを構築していきます。また、会計コンプライアンスの基盤となる、経理関係の規定や会計処理ルールを事業環境の変化や内部統制の観点で見直しています。ルールを実務に定着させることで、ガバナンスの実効性を高めます。加えて、グループ全体の会計リテラシー向上のために、会計の知識を体系的に習得した人財を育成し、事業部門や主要グループ会社に配置するなど、内部統制・ガバナンスを強化していきます。

株主還元

株主還元に関しては、新中計1年目の2023年度から収益やキャッシュ・フローの状況を総合的に勘案しつつ、「配当性向30%以上の維持」と「継続的な株主還元の実施」に方針を変更しました。
一方、投資家の皆様からは、「安定的な配当」を求めるお声と同時に、「成長投資による事業拡大と株価へのリターンを」と云うお声を多くいただいております。利益を積極的に成長投資に回して業績を伸ばしていくとともに、株価を上昇させることで、株主・投資家の皆様のご期待に沿えるように運びたい、と考えています。
2023年度は、10期連続の増配を計画しています。今後も持続的な増配を実現するうえで、当社としての1丁目1番地は成長投資です。ご理解とご支援くださるようお願い申し上げます。

株主・投資家の皆様へ

目指すのは当社グループの企業価値の最大化です。株主・投資家の皆様からは、時に厳しいお声をいただくことはありますが、企業価値向上に資すると判断したご意見は、役員会などで報告し共有しています。今後も株主・投資家の皆様と積極的に対話を重ね、持続的な成長と、株主価値向上に努めていきます。

取締役
専務執行役員
CFO、経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当 渡邊 明

略歴

1985年 4月   当社入社
1999年 7月   SHIMADZU PRECISION INSTRUMENTS, INC.出向
2007年 4月   半導体機器事業部 営業部 副部長
2009年 4月   半導体機器事業部 TMPビジネスユニット長
兼 営業部 副部長
2011年 4月   半導体機器事業部 営業部長
兼 TMPビジネスユニット長
2013年 6月   半導体機器事業部 副事業部長
兼 営業部長 兼 TMPビジネスユニット長
2014年 7月   産業機械事業部 副事業部長
兼 営業部長
2016年 6月   執行役員 産業機械事業部 事業部長
2019年 4月   常務執行役員 産業機械事業部 事業部長
2020年 4月   常務執行役員 産業機械事業部 事業部長
兼 フルイディクス事業部 事業部長
2022年 4月   専務執行役員
CFO、経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当 (現在に至る)
2022年 6月   取締役 (現在に至る)
専務執行役員 CFO・経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当 渡邊 明