CFO としての抱負
2025年4月にCFOに就任しました。これまでコーポレート部門、事業部門、海外事業会社において経理・財務の経験を積み、財務体質の改善や財務指標KPIの達成に向けた活動を推進してきました。
今後は、当社グループの成長戦略の実現に向け、①キャッシュ創出力の強化、②ROIC経営による事業管理、③成長投資を支えるキャピタル・アロケーション、④利益成長と連動した株主還元に取り組み、不確実性の高い事業環境においても、事業成長を支える財務戦略により、企業価値の向上に貢献します。
中期経営計画の進捗状況
中期経営計画(2023‐2025年度)では、技術開発力と社会実装力の両輪を強化し、お客様へトータルソリューションを強化することで、成長性と収益性を持続的に高め、世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーとしての安定した収益構造の確立と持続的な成長を目指しています。
2024年度の業績は、海外事業の伸長による為替の追い風を享受し、5期連続で売上高は過去最高を更新しました。ヘルスケア・グリーン・マテリアル・インダストリーの4注力領域で業績拡大を図り、ヘルスケア領域は医薬や臨床検査用途で液体クロマトグラフが、グリーン領域ではPFAS分析向けに質量分析システムが伸長し、マテリアル領域では新素材開発向けに試験機が、インダストリー領域では、半導体製造装置向けにターボ分子ポンプや防衛分野向けに航空機搭載品が増加しました。
一方、収益性の観点では、為替効果を除くと、中国の市況悪化、国内医用関連設備投資の停滞などにより、期初に想定した成長が実現できなかったことに加え、インフレ影響や成長投資の増加を売上成長で補えずに、営業利益率は13.3%(前年度比0.9ポイント減)、ROEは10.9%(前年度比1.6ポイント減)となりました。収益性の改善を重点課題と捉えており、高収益事業の拡大、価格改定などの付加価値訴求の確実な実施、AIを活用した業務効率化によるコスト削減などの収益力の向上に向けた施策に取り組んでいきます。
ROIC経営の推進
2024年度よりROICを経営指標として導入しました。収益性と効率性の成果を測定するKPIの設定を進めており、営業利益率や投下資本回転率などの財務指標を主とした「財務KPI」と、引き合い数や生産リードタイムなど現場の活動指標である「現場KPI」を組み合わせて、ROICを頂点に各KPIをツリー状に整理し、経営層から現場まで全社目標に沿った全体最適行動に結び付けることで、資本効率の向上を意識した事業管理を推進していきます。
また、投下資本の適正化については、当社グループの事業管理単位であるビジネスユニットをROICや市場の魅力度などで評価した上で、経営資源を最適に配分することで、高収益事業の拡大や資産効率の向上を図ります。これらの取り組みを推進することで、中期経営計画での業績目標ROIC 11.0%以上を達成し、資本コスト(7-8%)を上回る付加価値を継続的に生み出せる企業を目指します。
資金効率の向上
収益力強化の継続的な取り組みによりキャッシュ創出力は高まっています。財務基盤についても、在庫や売上債権などの運転資本の管理を徹底しており、自己資本比率は70.0%を上回り、健全な財務体質を引き続き維持しています。
また、資金の効率的な活用への取り組みとして、日本で導入していたキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を米国・欧州・アジア・中国にも整備し、グループ全体の8割の資金はCMSを通じて管理できるようになりました。
当社グループでは、資金の本社集約を方針として掲げ、資金の有効活用と資金効率の向上に取り組み、成長に必要な投資を継続的・機動的に実施できる財務基盤を築いていきます。
キャピタル・アロケーション
中期経営計画では、既存事業の成長を実現することで、3年間の累計で3,000億円の開発投資控除前の営業キャッシュ・フローを創出する計画であり、投資原資を成長に資する開発投資および設備投資・戦略投資を適切なタイミングで実施していきます。
2024年度の成長投資に関しては、研究開発、設備投資を積極的に推進し、北米でのR&Dセンターの開設、中国での地産地消を目指した工場の拡張などにより、ほぼ想定通りの進捗となりました。M&Aに関しては、北米の計測機器サービス会社Zef Scientific, Inc.を買収し、今後当社グループが北米でのリカーリング事業で成長するための土台の構築に資する会社を傘下に収めることができました。M&Aも含めた戦略投資に関しては、収益、キャッシュ・フロー、ROICへの貢献度を考慮しながら、資本コストを上回るリターンの創出を目指します。
株主還元
当社グループとしては、利益を積極的に成長投資に使い、業績を伸ばしていくとともに、株価を上昇させることで、株主・投資家の皆様に報いたいと考えています。
株主還元に関しては、中期経営計画初年度の2023年度から「収益やキャッシュ・フローの状況を総合的に勘案しつつ、配当性向30%以上の維持と継続的な株主還元の実施」に変更し、2024年度は11期連続の増配を行い、株主還元の充実、資本効率の向上のため、当社グループとしては初めて自社株買いを250億円実施しました。
当社グループは、中長期的な利益成長に応じた安定的かつ継続的な配当水準の向上や適正な株価形成を通じて、株主資本コストを上回る形での株主総利回り(TSR)の向上を重要な経営課題として位置づけ、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、配当による利益還元を行ってまいります。
過去5年間 | 過去10年間 | |
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株主総利回り | 140.3% | 306.6% |
- ※各期における株主総利回りの計算式は以下の通りです。
(各事業年度末日の株価+当事業年度の9事業年度前(過去5年の場合は4事業年度前)から各事業年度までの1株当たり配当額の累計額)÷ 当事業年度の10事業年度前(過去5年の場合は5事業年度前)の末日の株価
株主・投資家の皆様へ
インフレや為替変動、テクノロジーの進化、地政学リスクなど、環境変化のボラティリティが高く、先々の予測が困難な時代においては、将来の様々なケースを想定して布石を打ち、リスクに備えてチャンスを逃さない経営が重要であり、私の役割は事業における取り組みの成果を最大化するために、適切な経営資源配分とリスク管理を行っていくことだと考えています。
当社グループはどちらかと言えば、財務は将来のリスクに備えた「守り」に重きを置いてきました。今中期経営計画からは、さらなる成長を目指すため、「攻め」の財務に大きく舵を取り、思い切った投資を行います。これらの取り組みを通じ、より飛躍した当社グループの姿を皆様にお見せできると確信しています。どうぞご期待ください。
常務執行役員
CFO 荒金 功明
略歴
1998年 4月 | 当社入社 | |
2002年 4月 | 分析計測事業部 事業管理部 | |
2005年10月 | Kratos Group PLC(イギリス)へ出向 | |
2013年10月 | 経理部担当課長 | |
2018年 4月 | 理財部 企画G課長 | |
2021年 4月 | 理財副部長 | |
2021年10月 | 理財部長 | |
2023年 4月 | 執行役員 理財部長 | |
2025年 4月 | 常務執行役員 CFO(現在に至る) |