CFO就任にあたっての抱負
2025年4月からCFOに就任しました。これまでコーポレート部門、事業部門、海外事業会社において経理・財務の経験を積んできました。そうした経験を活かし、不確実性の高い事業環境においても、強固な財務基盤の維持と成長事業への投資を図り、中長期にわたる利益成長と株主還元の向上を目指します。
2023年度から2025年度までの中期経営計画では、収益性と効率性を追求すべく、①キャッシュ創出力の強化、②成長投資を支えるキャピタルアロケーション、③ROIC経営による事業管理、④利益成長と連動した株主還元、の4点に注力しています。さらに、競争力の源泉となる研究開発投資や事業基盤整備や生産性の向上に寄与する設備投資の継続的な実施についても財務面より貢献し、企業価値の向上を実現していきます。
中期経営計画初年度を振り返って
中期経営計画初年度の業績は、海外事業の伸長(海外比率57.9%)による為替の追い風を享受し、4期連続で売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。これは、ヘルスケア領域とグリーン領域において、液体クロマトグラフ、質量分析システム、ガスクロマトグラフ、試験機の重点機種が伸長し過去最高売上高を更新したことに加え、受注残の売上転化、価格改定などの付加価値訴求の確実な実施などによるものです。一方、為替効果を除くと、中国の市況悪化、国内医用関連設備投資や半導体設備投資の停滞などにより、期初に想定した成長が実現できなかったことも事実です。成長投資に関しては、人的投資、研究開発投資を積極的に推進し、ほぼ想定通りの進捗となりました。M&Aに関しては、フランスの臨床向けソフトウェア会社のBiomaneo社、北米の分析と医用の販売サービス代理店など、規模としては小さいですが、今後当社グループが海外で成長するための土台の構築に資する会社を傘下に収めることができました。
ROIC経営の推進
2024年度から事業部・ビジネスユニット別のROICを経営指標として導入し、予実管理を開始するなど、ROIC経営による事業管理を徹底しています。各事業・ビジネスユニットの投下資本の算定方法については、引き続き適正化が必要ですが、成果を測定するKPIの設定を進めています。KPIは、営業利益率や投下資本回転率などの財務指標を主とした“財務KPI”と、引き合い数や生産リードタイムなど現場の活動指標である、“現場KPI”を組み合わせて、ROICを頂点に各KPIをツリー状に整理し、経営層から現場まで全社目標に沿った全体最適行動に結び付くようにしたいと考えています。KPIを浸透させるには時間がかかると思いますが、システムによる係数の自動化を行い、全社を挙げて、効率的な経営を目指します。
資本コストを意識した経営
当社グループの資本コストは7-8%と認識しています。実質無借金のため、株主資本コストが当社の資本コストとなりますので、株主資本コストを上回るROE、ROICを達成することが重要です。現状ROEは12.5%、ROICは11%と、資本コストを上回って推移していますが、今後も、資本コストの引き下げと資本効率(ROIC、ROE)の向上を図り、中⻑期的な企業価値向上と持続的な成⻑を実現します。また、資本効率を向上する上で事業ポートフォリオの見直しも避けて通れない課題です。中期経営計画で再編事業と位置付けている航空事業は、自社努力に加え事業環境が好転したことで、業績は大きく改善しています。他方、ビジネスモデル自体が変わったわけではないため、再編事業としての位置付けは、現在も変わっていません。営業利益率が低い医用と油圧機器事業については、前者はイメージングトランスフォーメーションやリカーリングビジネスの推進、後者は静粛性の高いギヤポンプなどの付加価値の高い製品を拡大することで、業績の改善を目指します。
財務ガバナンスの強化
収益力強化の継続的な取り組みによりキャッシュ創出力は高まっています。財務基盤についても、在庫や売上債権などの運転資本の管理を徹底しており、自己資本比率は70.0%を上回り、健全な財務体質を引き続き維持しています。また、資金の効率的な活用への取り組みとして、日本で導入していたキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を米国・欧州・アジア・中国にも整備し、グループ内の資金を有効に活用することで資金管理の最適化を図っています。当社グループでは、資金の本社集約を方針として掲げ、資金の有効活用と資金効率の向上に取り組み、成長に必要な投資を継続的・機動的に実施できる財務基盤を築いていきます。
株主還元
当社グループとしては、利益を積極的に成長投資に使い、業績を伸ばしていくとともに、株価を上昇させることで、株主・投資家の皆様に報いたいと考えています。
株主還元に関しては、中期経営計画の初年度の2023年度から「収益やキャッシュ・フローの状況を総合的に勘案しつつ、配当性向30%以上の維持と継続的な株主還元の実施」に変更し、10期連続の増配、2024年度も11期連続の増配を行う予定です。
また、2024年度は、自社株買いを250億円行いました。これは、株主還元の充実、資本効率の向上を目指したもので、自社株買いは当社として初めてとなります。ただ、誤解して欲しくないのは、自社株買いをした額だけ成長投資を減らすというわけではありません。成長投資は、中期経営計画策定時と変わらない水準で実現していきます。
内部統制、ガバナンスの強化
当社グループは、「コンプライアンスは全てに優先する」を徹底しており、財務の面でも、会計コンプライアンスの基盤となる、経理関係の規定や会計処理ルールを事業環境の変化や内部統制の観点で見直しています。加えて、経理業務のシェアードサービス化を進め、業務プロセスの標準化と業務のデジタル化・自動化を推進することで、業務効率化とガバナンス強化を図っています。国内グループ子会社は約70%の経理業務をシェアードサービスに集約しており、2024年度は80%、中期経営計画最終年度には100%を目指しています。それにより効率化を図り、経理業務の15%を削減する予定です。
また、グループ全体の会計リテラシーを向上させるため、会計の知識を体系的に習得した人財を持続的に育成し、経理・財務面から専門性が発揮できる人財を事業部門や主要グループ会社に配置することも始めています。
株主・投資家の皆様へ
株主・投資家の皆様との対話は、当社グループの経営戦略および事業活動を皆様にご理解いただくと同時に、私たちの経営の質の向上と企業価値の向上に資するため、非常に有益であると考えています。積極的かつ適切な情報開示に努め、皆様とのコミュニケーションを一層充実させていき、いただいたご意見はすべて真摯に受け止め、役員会や経営層に説明・報告を通して経営の改善に活かすことで、さらなる企業価値の向上を目指していきます。
常務執行役員
CFO 荒金 功明
略歴
1998年 4月 | 当社入社 | |
2002年 4月 | 分析計測事業部 事業管理部 | |
2005年10月 | Kratos Group PLC(イギリス)へ出向 | |
2013年10月 | 経理部担当課長 | |
2018年 4月 | 理財部 企画G課長 | |
2021年 4月 | 理財副部長 | |
2021年10月 | 理財部長 | |
2023年 4月 | 執行役員 理財部長 | |
2025年 4月 | 常務執行役員 CFO(現在に至る) |