表紙ストーリー表紙に込められた物語をご紹介します。Cover Stories

Vol.30

Vol.30表紙

米国旧特許庁の玄関には、こんな一文が刻まれている。“The patent systemadded the fuel of interest to the fire of genius” (特許制度は、天才の火に利益という油を注いだ)。発明による繁栄を予見したエイブラハム・リンカーンの言葉だ。事実19 世紀末アメリカは豊富な資源、資本に加え特許法が触媒の役割を果たし工業化を加速させる。トーマス・エジソンは、この特許制度を最も理解し利用した事業家のひとりであった。彼は自身の取得した特許の売却益で起業すると、電球に関する特許をカナダの学生から取得し開発に着手。炭素フィラメントの長寿命化を京都・八幡の竹を使って解決し、電球の実用化に成功するも特許権をめぐる争いが絶えることは無かった。しかし彼の本当の狙いは電球に給電する電力網の覇権にあった。直流送電システムの特許使用料はドル箱になるはずだったが、思わぬ伏兵が現れる。送電方式を巡って対立しエジソンのもとを去ったニコラ・テスラだった。テスラ考案の交流送電はライバル会社の莫大な資金援助を受けエジソンの前に立ちはだかった。…熾烈な争いの末エジソンは敗北した。自らを「私はあきらめないことの天才」と評したエジソンは、その後も様々な事業分野に進出。取得した特許は内外合わせ2,332件にのぼり、知的財産が産業発展の大きな武器となることを知らしめた。