表紙ストーリー表紙に込められた物語をご紹介します。Cover Stories

VOL.41

VOL.41表紙

人類が最も多く消費し、生活に欠かすことのできない天然資源は水です。では、2番目は何でしょうか? 答えは、建築資材をはじめガラスや洗剤、化粧品、乾燥剤、シリコンチップなど様々な場面で活躍している資源「砂」です。
あるテレビドラマの中に、サウジアラビアの諺として「水は飲めるが燃えはしない。石油は燃えるが飲めはしない」という台詞がありました。これは劇中の架空の諺ですが、サウジアラビアなど中東産油国では実際に潤沢なオイルマネーを(文字どおり湯水のように)つぎ込んで水を買っています。海水の淡水化プラントを建設し国民の生活用水をまかなっているのです。
サウジアラビアと同じくペルシャ湾に面した産油国UAE(アラブ首長国連邦)7つの首長国のひとつドバイでは少し状況が違っています。UAEの石油全埋蔵量の94%はアブダビに埋蔵され、ドバイの埋蔵量はわずか4%にすぎないといわれています。経済は近隣諸国からの巨額の投資や外国企業の呼び込みによる貿易、金融、観光でまかなわれています。
ヤシの木を模った巨大人工島パーム・ジュメイラの埋め立てには700万トンの岩石と、9,400万m3の砂が使用されました。シンボルともいうべきブルジュ・ハリファには基礎部分の長さ43mの土台となる192本の杭には4万5,000m3以上、躯体部分には33万m3のコンクリートが使用されています。建設に使用されるコンクリートはセメント量に対して5~6倍の割合の骨材と呼ばれる砂礫(砂利や砂)と水からできています。この砂礫はオーストラリアから輸入されたものです。ドバイは砂漠の国ですが残念ながら砂漠の砂は粒子が細かく丸いためにコンクリートの材料には適していません。海砂もまた貝殻などの不純物や塩分が問題となります。
ドバイに限らず経済成長に比例して世界中の国々で「砂」の需要は高まっています。建物、橋、道路、ダムなど建築やインフラ需要の加熱する中国のセメント消費量は、2014年には24億7500万トンにのぼり、直近わずか2年の消費量は、20世紀100年間に米国で消費されたセメント総量を上回るほどです。巨額のマネーや利権をめぐり、世界はさながら「砂」争奪戦の様相を呈しています。
加えて先進国では、別の問題で砂礫の需要は高まっています。日本でも高度成長期に効率化のために急ごしらえされたコンクリートの寿命は50~100年程度とされ、タイムリミットは刻一刻と迫っているのです。国連環境計画(UNEP)によれば世界の砂礫需要は400億~500億トンと報告されています。この数字は1年間に世界中の河川で運ばれる土砂のおよそ2倍に相当します。
企業や研究者が完全リサイクルコンクリートや代替え砂礫の研究に取り組んでいるものの、実用化レベルには達していません。私たちの社会は環境や資源について、決して放置しておけない多くの問題を抱えていますが、足元の「砂」についても、さらに知恵を絞る必要があるようです。
最後に、アラブに伝わる本当の諺を1つ。
「何かをしたい者は手段を見つけ、何もしたくない者は言い訳を見つける」。