血液からアルツハイマー病を早期に検出する方法を確立:ヘルスケア

 

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社会課題

日本における65歳以上の認知症患者数は、2012年に462万人でしたが、2025年には700万人を超えると予測されており、認知症対策は、医療分野だけでなく社会全体にとって重要な課題となっています。また、認知症の6割以上をアルツハイマー型が占めていますが、現状では根本的な予防薬や治療薬は存在しておらず、検査自体も痛みが伴い、費用も高額であることが課題となっています。

社会課題

SDGsへの貢献

アルツハイマー型認知症が社会に与える影響は大きく、アルツハイマー病の予防や早期発見・治療への期待は高まっています。また、検査に伴う痛みの軽減や費用の低減など、患者さんのQOL向上も課題です。質量分析装置を使った検出法により、誰もが安全で、質の高い安価な医療にアクセスできることを実現します。

島津製作所の取り組み

高精度のアルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法を確立

私たちは、計測技術と医用技術を融合し、予防・診断・治療・予後管理の幅広い分野で革新的な製品・サービスを創出する「アドバンスト・ヘルスケア」に取り組んでいます。
その一環として、認知症関連の研究を行う中、国立長寿医療研究センターと、高精度のアルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法を確立し、2018年2月1日に学術誌『Nature』オンライン版で発表しました。
これまで私たちは、世界有数のアルツハイマー病コホート研究の組織である豪州のAustralian Imaging Biomarkers and Lifestyle Study of Ageing(AIBL)と連携し、京都大学、東京大学、東京都健康長寿医療センター、近畿大学と共同で、アルツハイマー病血液バイオマーカーの研究を進めてきました。
私たちからは2002年のノーベル化学賞を受賞した田中耕一シニアフェローらが共同研究に加わっており、同賞の受賞理由となった「MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)」の技術が、アルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法の実現につながっています。

アルツハイマー病の根本的な治療薬や予防薬の開発を促進

アミロイドの脳内蓄積によりアルツハイマー病の発症リスクが高まると考えられており、その蓄積は発症の20年以上前から始まります。従来の脳脊髄液およびPETによるアルツハイマー病の検査は、痛みを伴い検査費用も高額であるため、数千人規模の参加が必要な臨床治験への適用には限界がありました。しかし、アルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法は、わずか0.5mlの血液から正確に検出できるため、本研究成果はアルツハイマー病の根本的な治療薬、予防薬の開発につながる可能性があります。
私たちは、アルツハイマー病の治療薬や予防薬の開発を行っている製薬会社や研究機関に向けて、軽度認知障害(MCI)患者や健康高齢者を対象にアミロイド異常蓄積を有する人を同定するスクリーニング検査の受託分析事業を展開していく予定です。また、MCIの早期検査を手がけるバイオベンチャー株式会社MCBIへT&D保険グループの太陽生命保険株式会社と共同で出資し、質量分析によるより精度の高い早期検査法の開発や、運動やコミュニケーション促進による認知機能の改善効果を近赤外光イメージング装置(NIRS)で測定する方法の開発などを進めています。

アルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法

アルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法