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2021年10月11日 | プレスリリース
がん免疫療法における抗体治療薬のバイオマーカー発見に質量分析技術が貢献
米国プロビデンスがん研究センターとの共同研究結果を発表
島津製作所は、米国プロビデンスがん研究センター(Providence Cancer Institute、オレゴン州ポートランド、以下Providence)のウィリアム・レドモンドおよび高口善信両博士らが進めるがん免疫療法の抗体治療薬のバイオマーカー開発研究に参画しました。
当社は、質量分析および抗体医薬分析キット「nSMOL Antibody BA Kit」などの技術を用いて、免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブ※1の血中濃度分析を担当しました。イピリムマブは免疫チェックポイントと呼ばれる抑制性分子を遮断する医薬品です。高い治療効果が示されている一方、炎症性の副作用が広範に出ることも多いため、治療薬の選択性を高めることが課題になっています。今回の研究において、イピリムマブの血中濃度は、進行性メラノーマ治療に対し、臨床的奏功(治療効果)と正の相関を示すことが明らかとなりました。他の炎症マーカー※2と組み合わせることで、イピリムマブ血中濃度は予後を予測するバイオマーカーの一つとなる可能性を有しています。
Providenceメンバー、免疫モニタリングラボ・ディレクターのレドモンド博士は、「イピリムマブによる免疫療法がどのような患者さんに有効であるかを知る上で有用な、この新しいアプローチに期待している」と話しています。
研究で使用している高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」
島津製作所は、3年前から免疫療法における個々人のがんの標的(抗原)や治療薬の体内動態を測定する技術開発にProvidenceと共同で取り組んできました。このたびの成果は、頭頸部、肺、皮膚などのがんを標的とする新しいがん免疫療法における、質量分析技術の貢献に向けた大きな前進となります。
※1 | 細胞傷害性Tリンパ球が認識する抗原(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4、CTLA-4)を阻害することで、T細胞抑制的機能の解除による抗がん作用を誘導する医薬品。 | |
※2 | CXCL11ケモカイン(活性化T細胞の指標)や、インターロイキン6(免疫性の炎症指標) |
詳細は、米国癌免疫治療学会誌に掲載された以下の原著論文をご参照ください。
Trough levels of ipilimumab in serum as a potential biomarker of clinical outcomes for patients with advanced melanoma after treatment with ipilimumab
Yoshinobu Koguchi, Noriko Iwamoto, Takashi Shimada, Shu-Ching Chang, John Cha, Brendan D. Curti, Walter J. Urba, Brian D. Piening, and William L. Redmond
Journal for Immunotherapy of Cancer.
https://jitc.bmj.com/content/9/10/e002663
Providence Cancer Instituteについて
Providence St. Joseph Healthのがん研究センターであり、診断、治療、予防、教育を含む国際的で最先端のがん研究および治療を総合的に提供しています。オレゴン州ポートランドのRobert W. Franz Cancer Center内にある世界最先端のEarle A. Chiles Research Instituteを擁しています。1993年以来、がん免疫療法の分野で国際的なリーダーとして認められています。研究者は乳房、大腸/直腸、前立腺、肺、食道、肝胆膵、頭頸部、卵巣、皮膚、血液などの主要ながん領域で、活発な臨床試験を実施しています。その他の研究ではCOVID-19の治療法を検討しています。
詳しくは以下のURLをご参照ください。
http://www.providenceoregon.org/cancer/