人々の寿命が延びるにつれて、認知症を抱える人の数は世界的に増加しています。
患者本人の生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、周囲や家族の生活にも変化をもたらす認知症は、
社会全体で考えるべき、大きな課題です。
患者や患者を取り巻く家族と共生し、人生の終わりまで明るい生活を送ることができる社会を創るために、
わたしたちは何ができるのか。
SHIMADZUの科学技術で、今とは違うひとつ先のヘルスケアを描き、社会課題の解決に貢献します。
認知症の原因やメカニズムについては世界中で様々な研究がなされていますが、そのほとんどについて、未だ根本的な治療法は見つかっていません。そのため、認知症は早期に発見して、進行を遅らせたり、症状を軽減・改善することが重要です。また、今後の研究のためにも早期検査や病状の正確な診断が不可欠となります。
島津製作所は超早期検査から診断、治療、予後管理までのヘルスケアサイクル全体において、当社の分析計測技術や医用画像診断技術を使った新しいソリューションの提供を目指します。
少量の血液に含まれるアミロイドβを質量分析技術で測定し、その結果から脳内のアミロイド蓄積を推定する技術を開発しています。
高性能なPETにより脳内のアミロイドβ蓄積を画像化します(保険未適用)。また将来の認知症研究や創薬研究に貢献していきます。
機能的近赤外分光分析法(fNIRS : functional Near-Infrared Spectroscopy)を用い、日常に近い姿勢で脳の認知的な働き等を計測します。
アルツハイマー病はアミロイドβ蓄積がひとつの原因と考えられており、その後、異常タウ蛋白の発生による神経細胞死滅、脳萎縮が発生して認知症になります。その発症まで数十年かけて、これらの変性が進行すると言われています。
認知症が進行すればするほど、改善するのは難しくなります。そのため、早期にアミロイドβ蓄積の兆候を見定め、リスクを最小化する生活改善や投薬の介入による発症遅延、進行遅延を行うことが必要となります。
島津製作所はアミロイドMSによる超早期検査からPETによる診断、fNIRSによる予後管理など、各フェーズにおいて多分野の技術で貢献し、認知症に対する幅広いソリューションを提案いたします。
認知症は、正常であった記憶や思考などの能力が脳の病気や障害の為に低下していく障害です。認知症にはいくつかの種類があります。いちばん多いのがアルツハイマー型認知症で、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。
次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症です。かつて日本では、血管性認知症が多かったのですが、このタイプは減ってきています。また、アルツハイマー型に血管性認知症が合併している患者さんも多くみられます。
認知症ほどではないけれど、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下している「軽度認知障害」が最近注目されています。軽度認知障害のすべてが認知症になるわけではありませんが、この段階から治療を開始することで、認知症の進行を遅らせるなどの効果が期待されています。
認知症ではなさそうだと思っても、もの忘れの程度がほかの同年齢の人に比べてやや強いと感じたら、念のために専門医を受診することが早期発見・早期治療につながることになります。
認知症を完全に治す治療法はまだありません。そこでできるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが現在の治療目的となります。
治療法には薬物療法と非薬物療法があります。このうち薬物療法は、アルツハイマー病の中核症状の進行をある程度抑える効果が期待される薬が若干あるだけで、脳血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しません。そのため、非薬物療法によって症状を抑えることが主な治療法となります。
アルツハイマー病は脳内にアミロイドβという物質が蓄積して、それが神経細胞の変性に関係すると考えられています。そこで、アミロイドβを蓄積させない治療法を開発しようと、世界中の研究者がしのぎを削っています。
アミロイドβの蓄積を阻害する安全な薬が開発されれば、アルツハイマー病はそれ以上の神経変性を起こさなくなると考えられています。そうなれば、認知症の進行が完全にストップする可能性もあります。ただし、一度変性し、消滅した神経細胞は再生しないので、進行した認知症では失われた機能を回復することは難しいという問題が残ります。その意味でも早期発見・早期治療は今後ますます重要になってくると考えられます。
アミロイドβの蓄積を阻害する薬が現実になりつつある今、認知症の早期発見・早期治療が今まで以上に重要になってきています。軽度認知障害の多くはアルツハイマー病になる前の段階であると考えられていることから、この段階で治療を開始すれば、認知症になることを防ぐことも将来的に可能になると考えられます。
それぞれのフェーズでの最適な技術開発と臨床現場への応用のため、当社は国内外の研究機関との連携や共同研究を進めています。
当社で発見したアルツハイマー病血液バイオマーカーについて、豪州のアルツハイマー病コホート研究機関AIBL(Australian Imaging Biomarkers and Lifestyle Study of Ageing)や国立長寿医療研究センター等との共同研究を行い、質量分析システムを用いた血液検査による早期検出法を確立しました。
当社は国立長寿医療研究センターを中心とした研究グループに参加し、認知症の診断や認知症未発症の方の発症リスク予測等を血液検査で可能にするシステムの実用化に向け、産学連携の多施設共同研究「血液バイオマーカーによる認知症の統合的層別化システムの開発」(略称BATONプロジェクト)に着手しました。
MCIスクリーニング検査プラスは、血液中のアルツハイマー病の病態進行に関わる「栄養系タンパク質」「脂質代謝系タンパク質」「炎症・免疫系タンパク質」「凝固線溶系タンパク質」を質量分析法を用いて分析することで、将来MCIになりやすいか(または既にMCIの可能性があるかどうか)を調べる検査です。本検査には当社のLCMSが用いられています。※MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)
がん・生活習慣病などの疾患を克服し、健康なライフサイクルを実現するために、超早期検査・診断・治療・予後の各段階の研究開発に当社技術を活用いただいております。