アルツハイマー病の進行とともに徐々に変化するアミロイドβの脳内蓄積は、病気の進行度合を判定、
モニタリングするための指標ですが、検出するにはPETイメージング検査と脳脊髄液検査の2つの方法しかありません。
PETは高額なうえ実施できる施設が限られ、脳脊髄液の採取は高い侵襲性を伴います。
そこでニーズが高まったのが低コストで簡単な検査であり、より多くの人をスクリーニングできる血液検査法の開発です。
2014年に島津製作所と国立長寿医療研究センターは、
IP-MS法を用いてアルツハイマー病変を検出する血液バイオマーカーとして効果的なペプチド比を発見。
さらに、もう一つのペプチド比を組み合わせた複合バイオマーカーを開発しました。
IP-MS法は、免疫沈降(IP)とよばれる抗原抗体反応による選択的分離と、質量分析(MS)を組み合わせた分析技術です。
ここでは抗アミロイドβモノクローナル抗体を用いて血漿中のアミロイドβを抽出したのち、
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)で測定します。
・アミロイドβの脳内異常蓄積と相関性があるバイオマーカーを発見
わずか0.6 mlの血漿を分析することで多数のタイプのアミロイドβを識別し、同時に高感度で検出することが可能です。これらのうち、バイオマーカーとしてAβ1-42、Aβ1-40、およびAPP669-711を組み合わせることによって高い精度で推定可能なことが示唆されました。
※本取り組み内容は研究開発中です。
本研究成果はNature volume 554, pages 249‒54(2018)“High performance plasma amyloid-β
biomarkers for Alzheimerʼs disease”(doi:10.1038/ nature25456)で公開されています。
30年以上にわたり、私たち研究者はアルツハイマー病変の高精度な検査方法を探し求めていました。それは現代社会におけるアンメットニーズのひとつです。
数滴の血液を採取するだけの低侵襲な検査で診断が可能になれば、アルツハイマー病の早期発見が可能になり、新しい治療薬、予防薬の開発に大きく貢献することでしょう。
島津製作所は高精度な分析技術の開発に長年取り組んできた歴史があります。今回のような、企業と私たち学術研究者との産学連携が、新しい技術の開発を進める最良の方法だと信じています。