概要
KPR-3000は屈折率の多波長での自動測定が可能で、標準で5波長、オプション光源を搭載すれば、最大で16波長での測定が可能となります。測定精度が±2x10-5、測定分解能は0.1x10-5あるため、高温高湿試験など環境試験前後の屈折率変化を明確することが可能です。プラスチックはガラスに比べ吸湿性が高く、レンズ材料として使用した場合に耐環境性能の低さが光学特性に与える影響が懸念されます。環境試験の一つである高温高湿試験前後のアクリル樹脂(PMMA)製レンズを測定した結果、試験前後で屈折率およびアッベ数が変化していることを確認できました。
素材の開発、材料の製造時の品質管理、使用条件に最適化した設計をするために必要な情報取得などにご利用下さい。
測定例
試料
非球面樹脂レンズ(アクリル樹脂/PMMA) 10個 (直径25.7mm、中心厚7mm)
条件
環境試験条件 | 高温高湿 - 温度80℃、湿度95%、保持時間168時間(試料No.1~5) |
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高温低湿 - 温度80℃、湿度40%、保持時間168時間(試料No.6~10) |
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測定温度 | 26℃ |
測定波長 | 3波長(F線、d線、C線) |
接触液 | nd 1.49 |
結果
試験前後で明確な屈折率の変化が確認できました。試験後にd線(587.6nm)の屈折率は、高温高湿試験で0.000780減少、高温低湿試験で0.000511減少していました。また、アッベ数(νd)は高温高湿試験で0.17減少、高温低湿試験で0.10減少していました。高湿と低湿の条件の差で共に屈折率が減少する結果となりましたが、試験前後の質量変化を見ると、高温高湿試験を実施した試料は1%増加しており、高温低湿試験を実施した試料は0.1%減少という結果であり、高温高湿試験を実施した試料は、試験後に水分を吸収していると考えられます。これらの事より、高温による屈折率変化が0.0005程度、吸湿による屈折率変化が0.0002程度であったと推測されます。
e線、g線の屈折率を含めた詳細な情報を記載した技術資料(HR41-7033)もご用意しております。資料をご希望の方は、弊社までご請求下さい。
表1:測定結果(試料5個の平均値)
屈折率(d線) | アッベ数(νd) | |||||
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試験前 | 試験後 | 差分[x10-4] | 試験前 | 試験後 | 差分 | |
高温高湿 | 1.491497 | 1.490717 | -7.8 | 58.22 | 58.06 | -0.17 |
高温低湿 | 1.491453 | 1.490942 | -5.1 | 58.25 | 58.16 | -0.10 |
今回とは異なる条件、試料を環境試験前後に測定したケースでは、環境試験後の試料の屈折率が小数点以下4桁目で増加方向に変化する事例もあることから、材料の種類や環境試験の条件などにより、屈折率の変化の傾向は異なるものと推測されます。
図1:屈折率の測定結果(d線)[測定器:KPR-3000]
図2:質量の測定結果[測定器:AUW220D]