シリーズ島津遺産

自動車産業100年に一度の大変革期
安全なモビリティであり続けるために島津が担う役割

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いま、自動車産業において100年に一度の大変革期ともいわれる大きな変化の波が起きている。
これまでも、そしてこれからも、安全なモビリティであり続けるために、島津製作所が担う役割とは。

課題解決が自動車進化の歴史

19世紀に誕生して以来、人々のパートナーとして生活を支えてきた自動車。効率的な移動手段ができたことで、私たちの生活だけでなく、物流や産業にも大きな変革をもたらし、社会の発展を牽引してきた。

しかし、その副作用もないわけではない。モータリゼーションの勃興期には、生産性を高め、より多くの人が購入しやすい価格で自動車を届けることが優先されていた。しかし、普及が進むにつれ、交通事故による被害や、さらには排気ガスによる大気汚染など、環境への悪影響が深刻な問題となっていった。

こうした負の影響を最小限に抑えるためにおこなってきた課題解決が自動車技術の発展につながり、自動車に乗る人だけでなく、乗らない人や環境にとっても、安心・安全で快適なものとなるよう改良が進められてきた。

素材の分析・試験でモータリゼーションを支える

島津はモータリゼーションの黎明期から、技術革新の歴史をともに歩んで来た。もっとも貢献が大きかったのは部品の安全性を評価する材料試験機で、1913年には早くも自動車メーカーに納入している。特に1950年代、日本の経済成長とともに自動車が広く普及するようになってからは、誰もが安全に、長く使い続けられるように耐久性の向上が求められたことで、さらに重要な装置となった。

写真提供:株式会社GSユアサ
写真提供:株式会社GSユアサ
▼ 島津製作所の創業者二代島津源蔵が、社用車として使用していた電気自動車「デトロイト号」。限りがある石油エネルギーではなく持続可能なエネルギーを当時から推奨していた二代源蔵は、 1917年にアメリカから輸入し、自ら作った蓄電池を積んで、走行していた。現在、二代源蔵が創業者のひとりである(株)GSユアサの社屋ロビーに、復元されたデトロイト号が展示されている。

材料試験機は、素材を引っ張ったり圧縮したりして起こる変化を見るもので、強度や弾性などを測ることができる。フレームや車体などの金属はもちろん、ダッシュボードなどに用いられる内装材やシート、タイヤ、細かなボルトなどに至るまで、数万点とも言われる多くの部品がこの材料試験機によるテストを繰り返し受けた後、世に送り出されている。

そして部品の種類や素材は、自動車の高性能化によってさらに進化を続けている。たとえば、ボディの素材は、かつてほぼ鉄で占められていたが、技術の進化とともにより軽量なアルミやCFRP/GFRPに代表される樹脂材なども用いられるようになった。

また、たとえ同じ金属であっても、骨格であるフレーム部分と、外装のパネル部分では異なる性能が求められてきた。
そして、燃費向上のために、さらに軽量化が求められると同時に、安全面から剛性を上げることも要求されるようになった。

近年では衝突時に衝撃を吸収したり、対人被害を軽減するために、あえて潰れやすい箇所を作るなど、課題に応じて多角的に、そして一歩ずつ進歩してきたのだ。

世紀をまたぐ歴史の中で、部品や素材、性能が大きく変わってきたのと同じように、材料試験機も進化を続けてきたが、自動車の耐久性、安全性に対する課題は、決してなくなるものではない。航続距離延長に対応するためにバッテリーの容量は増え、車両の重量はかさんでいく。反して、車体の軽量化の要求はより厳しくなっている。バッテリーを保護するための素材や、水素を充填するタンクなど、剛性を保ちながらも軽量な素材を求めて材料試験機の出番は増え続けており、見極めるべき素材の多様性は増加の一途をたどる。

また近年は、新型車の開発スパンの短縮化が進み、試作車製作の前段階であるシミュレーターでの開発がますます重要度を増している。特に、採用する素材の特性を把握する材料試験機のデータは必要不可欠だ。近年では材料試験機とDIC(デジタル画像相関)解析の手法を組み合わせ、金属のひずみなどを分析する手法も開発された。

より高精度に素材の特性を見極めることで、衝突試験の前などに、何キログラムの人が乗って、時速何キロメートルで衝突した場合に、その素材はどのような壊れ方をするのかなど、細かいシミュレートも可能となっている。

このほか、排ガス規制のために、気体の成分分析ができるガスクロマトグラフで燃料や触媒を分析・評価したり、塗料や部品の品質管理や品質保証を分光光度計や産業用X線CTシステムでおこなうなど、島津のさまざまな技術は、総合的に自動車の安心・安全を守り、自動車産業発展の歴史を支えてきた。

そんななか、自動車産業に“100年に一度”と言われる大きな変革の波が起きている。

次の100年も見据えて

自動車の世界では、いま『CASE』と呼ばれる新しい領域に対する技術革新が進んでいる。CASEとは、Connected(接続化)、Autonomous /Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもので、これらによって自動車だけでなく、私たちの生活や社会のありようも、大きく変わるといわれている。

憧れの自動車をお金を貯めて購入し、愛車を大切に運転するというこれまで当たり前だったことが、購入せずとも、好きな時に好きな自動車に乗ることができるようになった。

さらに一人ひとりの走行データに合わせて、自動で運転サポートがおこなわれたり、自動車から家電にデータが送られることで、帰宅5分前には自動でエアコンが作動したりといったマンガで描かれていた未来の世界も、現実になるかもしれない。

この大変革の背景には、交通事故や運転負担の軽減を目指した安全性向上の重要性が増していることや、社会基盤のIoT化との連動、地球温暖化などの環境問題への対応、若者の車離れ解消など幅広い要因がある。

なかでも大きなトレンドの一つとなっているのが、自動運転化だ。1970~80年代にピークを迎えた交通事故の死亡者数は、近年大きく減少しているものの下げ止まりの傾向だ。

事故の被害を最小限に防ぐパッシブセーフティから、事故を未然に防ぐアクティブセーフティへと考え方が変化しているが、さらなる事故被害の減少のためには自動運転化が不可欠なのだ。さらに、自動運転化による運転技術の支援で、誰もが安心して自動車を楽しむことができるだけでなく、無駄なくスムーズな走行が可能になる。

その流れを受けて注目されているのが、脳の血流量の変化から活動状況をリアルタイムで可視化する島津の光脳機能イメージング(NIRS)だ。
自動車に求められるのは、人間の感覚に寄り添うことだという考えのもと、メーカーの研究所レベルでは、1990年代からNIRSの導入が進められてきた。ドライバーの操作に対して、自動車がどう反応すれば脳が負担に感じないのかを研究するためだ。

自動運転化がさらに進めば、操作そのものを自動車側が行うようになる。ブレーキをかけるタイミングやアクセルの踏み方などは、個々のドライバーによって異なるが、自動車側がどのように操作を自動化すれば脳は違和感を覚えないのか、次なる快適性の探求にもNIRSは活用されている。

求められる課題は時代とともに変わり続け、それに対応することで自動車は進化し続けてきた。そして、100年に一度といわれる変革期を迎えたいま、その課題解決に求められるスピードは、過去と比べものにならないほど速くなっている。

だが、どんなに自動車技術や周辺環境が変わったとしても、耐久性や安全性、快適性の重要度は変わらない。黎明期からその課題解決を支援してきた島津製作所は、これからも幅広い技術力で自動車産業の未知なる進化を支え続けるだろう。

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