CTOメッセージ

取締役専務執行役員 CTO 北岡 光夫

―CTOの役割を教えてください

世の中が変化していく大きな原動力の一つとして、技術革新があります。CTOの役割は、将来の世の中の変化と新技術の進化を予想して技術を統括しながら、全社的および長期的視点で新技術を獲得し、新規製品や新事業を創出していくことにより、島津の発展に寄与していくことと考えています。

―社外から見ると、島津の強みは技術力であり、そこが生命線という意識を持たれています。145年脈々とつないできたものは何でしょうか?

創業以来、顧客の要望に真摯に応えてきたことで、技術力と信用を培ってきたことがまず土台としてあると思います。加えて、革新的な技術を研究している研究機関とのパイプが強く、そうした機関と共同研究をしていくことで、先端技術や先端ニーズを獲得してきました。
また保有している技術領域が多岐に渡り、新しい技術に会社として対応できる基盤が揃っていることや、研究者や技術者の自由度が大きく、独創性や競争力の高い技術を生み出す背景となっていた面もあると思います。

―新中期経営計画では、基本コンセプトを「世界のパートナーと社会課題の解決に取り組む企業へ」としていますが、前中期経営計画との違いをどのように理解したらよいでしょうか?

前中期経営計画では社外連携を推進し、研究開発パートナーと共同研究を積極的に行ってきました。しかし、それが社会実装され事業化に結び付いたケースはまだ非常に少ないのが実情です。
事業と結びつけるためには、研究開発パートナーとはまた別のパートナーと知恵を絞って連携していくことが必要です。事業化に向けた重要な仕組みづくりを一緒に遂行する戦略パートナー、実際にその仕組みを使い協力して事業を展開する事業パートナーを設定して取り組む必要があります。新中期経営計画では、出口戦略として事業化、社会実装を強く意識しています。

取締役専務執行役員 CTO 北岡 光夫

―オープンイノベーション推進に向けた、今後の方針は?

前中期経営計画より取り組んでいたことは、2つあります。
1つは、オープンイノベーションに向けた拠点づくりです。海外主要地域にイノベーションセンターを作り、現地の顧客ニーズを収集し、アプリケーションシステムなどの開発を行っています。また国内では、2019年6月にヘルスケアR&Dセンターを設立、さらにSHIMADZUみらい共創ラボ、東京イノベーションプラザといった研究開発の各レイヤー(製品開発、研究、応用開発)での拠点設立も進めています。
もう1つは、多くの開発シーズをもっている研究機関との組織的な連携の取り組みです。
これは、例えば当社の特定部門と特定の社外研究者間での共同研究という1対1の形ではなく、組織対組織で興味のある研究テーマと各研究者が持つ技術を話し合って、その中でマッチングを取ろうとするものです。今後は、企画・研究・製品開発・応用開発といった全プロセスでのオープンイノベーションに取り組み、また組織的連携では、海外研究機関にも展開しようと考えています。

ヘルスケアR&Dセンター

-イノベーションセンターは進化していくのでしょうか?

今後イノベーションセンターは、各地域で強みを持つ産業別のイノベーションセンターの設置という形でも展開していくことになります。また、分析計測の応用開発を中心としたイノベーションセンターとしてスタートしましたが、最終的には研究や製品開発などの上流プロセスも含めた「島津のイノベーションセンター」という位置づけに進化させたいです。

―各事業部のシナジー効果が期待されていますが、どのようなお考えですか?

医用・航空・産業機械と、分析計測は少し違うイメージを持っています。医用は医用機器分野、航空は航空機器分野、産業機械は少し前までは半導体分野に絞って事業を展開してきました。しかし、分析計測機器はそうではなく、製薬、食品、金属、化学工学、環境、自動車・・など広い分野で横断的に使われています。したがいまして、広い意味での分析計測技術は各事業部とのシナジー効果の要になると考えています。具体的には、アドバンスト・ヘルスケア、輸送機の検査、産業機器分野の産業計測事業などがあります。つまり、分析計測技術は、島津全体を貫くコア技術だと思っています。そういう見方をすると、個別バラバラではなくて、融合した構造といったものが見えてくるのではないかと考えています。

―スタートアップ・インキュベーションセンターについて教えてください

2020年10月に、社内のコア技術や新技術を使い事業化を推進する部門としてスタートアップ・インキュベーションセンターを新設しました。既存の事業体制が受け皿にならない場合は、新たな事業体制を構築することも想定しています。
背景は、島津の業績を担っている多くの製品が初めて製品を上市してから半世紀近くが経過しており(例えば分析計測のGCは1956年、GCMSは1970年、LCは1972年に上市)、やがては成熟していくことになります。新事業に力を入れて、次の成長の柱を作ることが重要であり、スタートアップ・インキュベーションセンターを核に次の成長の柱を作っていきたいと考えています。

―島津は今まである技術を積み重ねて着実にやってきましたが、新しい分野・技術が必要な時、イノベーションを起こすために変わっていかないといけないとお考えですか?

以前は、研究者や技術者は、一人で何でもしないといけなかった反面、自由度も与えられていました。そのため、浅いかもしれませんが視野も広くなり、新しいアイデアが出しやすかったと思います。
一方、今は、製品開発がより高度化していく中、効率化を意識し、より専門性が求められるようになってきました。1つの製品を作るのに、機械設計、電気設計、ソフトウェア開発など分担が進んでいき、専門性は向上している一方で、トータルでその製品の将来像を考えられる人が少なくなってきているように感じられ、そこが課題であると思います。
もう一つは、新しいアイデアを発想してもそれをすくい上げて、新しい製品や事業にもっていく仕組みがありません。こうした点も課題であると感じています。
スタートアップ・インキュベーションセンターは、そういった課題を解決するのに役立つと考えています。
また、島津の研究開発では、最近、世の中で注目されているディープテックが重要であると考えています。ディープテックとは、革新的な技術を基礎としてその成果が社会課題解決に大きなインパクトを与えるもので、その確立には、それなりの投資や期間が必要となります。
研究開発においても短期的な業績を意識せざるを得ないことは当然ありますが、ディープテックは島津の研究開発においては忘れてはならない観点だと思います。例えば、現在、東京大学と共同研究中の光格子時計は、ディープテックの一つです。島津らしさを追求する意味でも、ディープテックにこだわっていきたいと考えています。

取締役専務執行役員 CTO 北岡 光夫 略歴

1982年4月   当社入社
2007年1月   分析計測事業部 技術部長
2011年6月   分析計測事業部 副事業部長 兼 分析計測事業部 技術部長
2015年6月   執行役員
2015年6月   基盤技術研究所長
2017年6月   常務執行役員就任
2017年6月   当社技術研究担当
2019年6月   取締役就任(現在に至る)
2020年4月   専務執行役員就任(現在に至る)
2020年4月   CTO(現在に至る)
取締役専務執行役員 CTO 北岡 光夫