2014.2.18 「新規開発液体マトリックスAQ/CAによる1,000倍高感度」論文が発刊されました

 質量分析を含む分析化学の分野では 世界で最も著名な学術誌の1つである”Analytical Chemistry”にて、親水性化合物を従来よりも最大1,000倍高感度に測定できる 本PJで新規開発した液体マトリックス:3-AQ/CAを紹介する論文が掲載されました。

 ”ヒト”の体は、約半分が水、残りの過半数がタンパク質でできている、と言われています。この様に重要なタンパク質は「遺伝子情報が”翻訳”された結果」と見なされ、しかも実際に体の中で働くためには、さらに様々な化学変化が施される場合がほとんどです。遺伝子情報が翻訳された後に施されるため、この変化を専門的には”翻訳後修飾”(Post-Translational Modification: PTM)と呼んでいます。
 この変化は、病気によっても引き起こされる場合が多く、疾患の指標になる場合が少なくない と見なされています。

 最先端研では、これまで様々な”液体マトリックス”を開発・改良してきました。液体マトリックスは “イオン液体”応用の1例であり、極性を持つため、親水性(水に溶け易い性質)に傾く傾向があります。
 これらを用いる事により、特に親水性化合物の高感度化(高効率イオン化)、固相からではなく液体状態からの よりソフトなイオン化、液滴内での均一状態を活用した再現性・定量性の向上、内部で発生する化学反応を活用、等々が可能になります(下記 関連新着情報参照)。

 本論文では、数百種類ある と言われている翻訳後修飾の中でも頻度高く存在すると言われ、親水性に傾く”糖鎖付加”と”リン酸化” すなわち、糖ペプチド・糖鎖・リン酸ペプチドの解析能力を大幅に高める液体マトリックス:3-AQ/CAを紹介しています。

 液体マトリックスであるため、シアル酸やリン酸の脱落を大幅に抑制する事ができる、すなわち 通常の固体マトリックスよりもソフトなイオン化が可能となりました。
 また、一部の化合物ですが 従来のマトリックスよりも最大1,000倍高感度化が達成できています。

Yuko Fukuyama, Natsumi Funakoshi, Kohei Takeyama, Yusaku Hioki, Takashi Nishikaze, Kaoru Kaneshiro, Shin-ichirou Kawabata, Shinichi Iwamoto, Koichi Tanaka
“3-Aminoquinoline/p-Coumaric Acid as a MALDI Matrix for Glycopeptides, Carbohydrates, and Phosphopeptides”, Analytical Chemistry, 2014, Vol. 86, No.4, pp 1937-1942
Koichi Tanaka Laboratory of Advanced Science and Technology, Shimadzu Corporation

発表資料(Analytical Chemistry掲載論文概略紹介へのリンク)

 

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