研究概要

次世代MS装置イメージ図  本プロジェクトの目的は、世界最高性能の超高感度・高選択性を有する次世代質量分析(Mass Spectrometry: MS)システムを産学官連携で開発し、がんやアルツハイマー病等の革新的臨床診断手法の開発に貢献する事で、医療費の軽減や国民の健康増進に結びつけることです。

 本プロジェクトでは、超高感度/高選択性次世代MSシステム(新たな前処理・イオン化・質量分離/検出/測定・データ解析法)を開発します。そして、がん、及びアルツハイマー病を対象として、実際の臨床検体や健常者検体等を用いてバイオマーカー候補物質を探索することで、プロジェクトで開発する個別MS技術の評価・検証 および 全体を統合した次世代MSシステムの技術評価・検証を行うと共に、早期診断手法の開発に資する事で、主に医療に貢献します。

 さらに本研究で得られる成果は、がんや認知症に限らず生活習慣病・再生医療等を含めて、医療経済上また国民の健康福祉上の重大関心事である疾病の早期診断と創薬に幅広く貢献することが期待されます。

イオン化法のイメージ図

 次世代質量分析(MS)システム開発では、仮説等に基づいてターゲット物質を絞り込み、それを釣り上げるための前処理法、極微量しか回収できない化合物を高効率でイオン化する手法、感度が高く微細な構造の違いまでをも見分ける質量分析装置、得られたスペクトルから有意義な情報を導き出す解析ソフトを開発することにより、より優れた疾患マーカーを発見することや超早期診断が可能な診断システムを構築することを目的としています。


質量分析法のイメージ図

 特に、生体高分子イオン化において主要な方法となっているマトリックス支援脱離イオン化法MALDIは、本中心研究者が世界で初めて発明したSoft Laser Desorption(2002年ノーベル化学賞受賞)の発展形であり、発明から25年を経過した現在も、発明者自らが感度や汎用性の向上に向けて精力的に活動を継続していることは、その発明と共に世界に高く評価されています。