2014.3.11 「血液中微量アミロイドβ群定量測定」論文が発刊されました

 日本学士院が発刊する総合科学英文学術誌”Proceedings of the Japan Academy, Series B”にて、実際の血液中から 新発見8種類を含む微量のアミロイドβ関連ペプチド22種類を検出し、定量分析した結果が掲載されました。

 アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(Amyloid-β)は、認知障害発症よりも10年以上も前から脳内に蓄積し始めている事が 既に報告されています。
 アルツハイマー病進行の指標としては、これまで 脊髄液中のアミロイドβ[1-40],[1-42]量の増減 等が用いられてきましたが、脊髄液採取はエキスパートに頼る必要があり、特に高齢者では脊髄液採取が困難な場合もあります。
 また、脳内アミロイドに親和性の高いポジトロン放出化合物(分子プローブ)が開発された事により、PET-CTイメージングによる判定も試みられていますが、大規模な設備と多額の費用がかかります。
 一方、血液中のアミロイドβ量測定も試みられていますが、脊髄液よりも存在量は1/50程度、逆に総タンパク質量は約100倍もあり、単純計算で脊髄液よりも計測が5,000倍困難な状況です。しかもアミロイドβ[1-40],[1-42]量は、血液中では病気の進行との相関関係が認められていません。

 本論文では、”抗体磁気ビーズ法”を更に改良し、極めて多種多量の化合物が混在する健常人の血液中から、アミロイドβ関連ペプチド([1-40],[1-42]を含む) 22種類を同時に検出できた事を紹介しています。
 この中には、100 atto mol未満しか存在しない微量なペプチドを含み、しかも これまで存在が認められていなかった8種類をも含みます。
 更に、この様な微量でも定量性・再現性も確保できることを紹介しています。

 今後、これら微量成分の増減と疾患進行との関連を分析する事により、アルツハイマー病の早期診断が可能になる事が期待できます。

Naoki KANEKO1, Rie YAMAMOTO1, Taka-Aki SATO1,2, Koichi TANAKA1
“Identification and quantification of amyloid beta-related peptides in human plasma using matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry”, Proc. Jpn. Acad., Ser. B, 2014, Vol. 90, pp104-117
1 Koichi Tanaka Laboratory of Advanced Science and Technology, Shimadzu Corporation
2 Life Science Research Center, Shimadzu Corporation

本論文は、J-STAGEからフリーでダウンロードが可能です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/90/3/90_104/_article
日本学士院 “Proceedings of the Japan Academy, Ser. B” ホームページ
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/publishing/pja_b.html

 

本論文の分かり易い解説:
一般公開シンポジウム FIRST-ms3d PJ まとめ 展示ポスターpdf 3/3 応用編
「アルツハイマー病診断への貢献」部分参照