事例2
Webベースでカスタマイズ可能な総合プロテオーム解析ワークフロー
2014-2-25 京都大学薬学研究科 製剤機能解析学分野 教授 石濱 泰
(http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/seizai/)
我々の研究室はLC-MSベースのプロテオミクスラボです。学生、スタッフ合わせて約20名がそれぞれのプロジェクトを遂行しており、基本的には分業せず、全員が試料調製からLC-MS測定、データ解析までを行っています。3社・4台の異なるMSを用いているだけではなく、ピークピッキング法やデータベース検索法についても独自の方法を用いており、非常に複雑なワークフローになっています。さらにはペプチド同定後のデータマイニングについても自家製のソフトウェアを走らせていますので、毎年4人ずつ配属される学部4回生の学生にとっては、全体を理解、習得するのに非常にハードルが高いシステムとなっておりました。以前は、ある会社の市販ソフトウェアパッケージを使って、MASCOT等の市販ソフトウェアや独自のシステムを何とか組み込みながら使っておりましたが、MS生データのファイルサイズがどんどん大きくなるとともに、複数のソフトウェアの頻繁なバージョンアップに、とても市販品では対応ができなくなってまいりました。もっとフレキシブルにシステムをカスタマイズすることが可能で、しかもウェブベースでジョブ管理ができるツールはないかと探していたところ、JobRequest (ProteoAnalysis) に出会いました。複数ユーザーのジョブ管理がウェブを経由して可能であり、様々な形式の大容量MS生データそれぞれに対応したピークピッキングツールをワークフローに組み入れることができ、しかも、MASCOT等の使い慣れた市販の検索エンジンも自動検索が可能となりました。定量機能については市販のものでもなかなか満足のいくものがない現状ですが、これについてもMSの特性に応じたモジュールを選択しながら使用が可能です。
プロテオミクス分野では特に海外ではフリーウェアが主流となってきており、MaxQuantやSkylineといった多機能ソフトウェアパッケージが多くのユーザーの注目を集めています。しかしこれらのものは一研究室内で開発されているもので、例えばバグを報告してもすぐに解決してもらえるわけでもなく、また何かアイディアがあってもその機能を付加できるわけでもありません。一方でMS機器付属ソフトウェアはなかなかかゆいところに手が届いていないのが現状です。MS自体の開発スピードもまだまだ緩んでいない現状では解析ソフトウェアの方もずっと進化し続けることが求められています。いろいろな研究者のアイディアを取り込みながら、自己進化を遂げていけるようなソフトウェア開発の仕組みが今後も求められていくと思われます。