ウイルス検査
より迅速・簡便なウイルス検査の実現をサポート

1 全自動リアルタイムPCR検査装置

新型コロナウイルスのPCR検出試薬キットを開発した当社は、感染症の流行拡大防止に貢献するため技術革新をさらに一歩前進させます。

検体の前処理から測定、解析までをシームレスで自動化した遺伝子解析装置を開発し、リアルタイムPCRによる迅速な検査ワークフローを実現しました。

(本製品に関するプレスリリースはこちらをご参照ください。)

現場からのメッセージ

全自動リアルタイムPCR検査装置 開発担当

分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 バイオ・臨床BU 花房 信博

分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 バイオ・臨床BU
花房 信博

※このインタビューは2021年5月後半に行われたものです

2 新型コロナウイルス検出試薬キット

当社は、検査の省力化や検出時間の短縮、検査コストの低減を目的に、「新型コロナウイルス検出試薬キット」を開発し、2020年4月20日に発売しました。

このキットは、当社独自の遺伝子増幅技術「Ampdirect®技術」をベースに、国立感染症研究所のマニュアルに沿って開発しました。

本キットの使用によって、PCR検査におけるRNAの抽出・精製工程を省くことができます。検査に要する人手の削減や人為的ミスの防止に繋がり、2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を約1時間に短縮できます。

「新型コロナウイルス検出試薬キット」をベースに「Ampdirect™ 2019-nCoV検出キット」を開発し、2020年9月8日、厚生労働省より「Ampdirect™ 2019-nCoV検出キット」の体外診断用医薬品製造販売承認を取得しました。
(詳しくは、プレスリリースをご参照ください。)

また、2021年5月6日にはN501Y変異を持つ新型コロナウイルス変異株をPCR検査で検出する「新型コロナウイルス変異検出コアキット」および「N501Yプライマー/プローブセット」(いずれも研究用試薬)を国内で発売しました。
(詳しくは、プレスリリースをご参照ください。)

詳しい製品情報はこちら
(医療関係者様向け)

現場からのメッセージ

新型コロナウイルス検出試薬キット 開発担当

分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 バイオ・臨床BU 遺伝子解析G 四方 正光

分析計測事業部 バイオ・臨床ビジネスユニット 遺伝子解析グループ
四方 正光

※このインタビューは2020年6月前半に行われたものです

PCR検査に貢献するために

これまで私たちは感染症のPCR検査に用いられる試薬を開発してきました。COVID-19の広がりでPCR検査への需要が高まったものの、従来の検査法では煩雑な手作業が多く、検査現場が疲弊していると聞いていました。当社はPCR検査の時間を短縮する独自技術を開発していましたので「少しでも社会の役に立ちたい」と思い、今年に入って新型コロナウイルス検出試薬キットの開発を始めました。

ノロウイルスなどの検出試薬キットを開発してきたので、「既存技術を応用すれば簡単に完成する」と考えました。しかし、実際の開発は難航しました。試薬の組成を工夫するなど、感度良くウイルスを検出するために改良を重ねました。

開発当初は人工的に作ったウイルスの遺伝子の一部で試薬の性能を試しますが、製品として世に送り出す前には患者さんから取った本物の検体(鼻咽頭拭い液など)で評価しなければなりません。検体は容易に入手できないのですが、札幌医科大学様のご厚意で、多くの評価実験を行い、試薬の完成度を検証することができました。

完成した試薬キット(*)は、従来のPCRに必須だったRNA精製工程を省けるため、2時間以上かかっていた検査を約1時間に短縮できます。鼻や喉の奥から採取する検体だけでなく、唾液中に存在するウイルスも検出可能です。RNA精製を手操作で行われていた方で、製品をお使いいただいたお客様からは「作業負担が減った」「従来法と比べて感度も同等以上で、十分性能を発揮している」といったお声をいただいています。4月に月10万検体分で生産を始めましたが、6月現在は30万検体分まで増産しています。

(*)本キットは研究用試薬です。医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品としての承認・認証等を受けておりません。本インタビューは2020年6月に収録されました。2020年9月8日には厚生労働省より「Ampdirect™ 2019-nCoV検出キット」の体外診断用医薬品製造販売承認を取得しました。医療機関の新型コロナウイルス検査は「Ampdirect™ 2019-nCoV検出キット」をご使用ください。

現場からのメッセージ

新型コロナウイルス変異検出コアキット 開発担当

分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 細胞事業開発室 江連 徹

分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 細胞事業開発室
江連 徹

※このインタビューは2021年5月後半に行われたものです

3 社内診療所のPCR検査体制

島津製作所診療所内に、当社グループ従業員(新型コロナウイルス感染の疑いのない者)向け「新型コロナウイルスPCR検査用診療室」を設置しています。

当社製の全自動リアルタイムPCR検査装置や新型コロナウイルス検出試薬キットを用い、当社診療所に在籍する医師・看護師などによる検査を可能にして、最短で検査当日に診断結果を報告できる体制を整備しました。主に、新型コロナウイルス関連製品の事業関係者や、取引先等から陰性確認を求められている従業員を対象に検査を行います。

当社内診療所でのPCR検査運用から得た知見を製品の改良に活かすととともに、診療所を付設された企業・大学・社会福祉施設(高齢者施設、特別養護老人ホームなど)に関連情報を提供していきます。

PCR検査用診療室のご紹介
検査手順のご紹介

4 下水とヒトの2階建てのPCR検査

受託分析を行う当社グループ会社の島津テクノリサーチは、京都市に新型コロナウイルス感染症のための衛生検査所(*1)として登録されており、 ヒト検体を用いたPCR検査事業に取り組んでいます。

2021年5月からはPCR検査システム「京都モデル™」の受託検査事業を開始しました。「京都モデル」は、高齢者施設等の個別施設においてPCR等を用いた下水検査を行い、ウイルスや細菌などの感染症の感染状況を監視し、陽性反応がある場合には臨床PCR検査などで感染者を特定する2階建て検査システムです。

京都モデルの特徴

下水検査(1階部分)
  • 新型コロナウイルス感染者は発症前から、糞便等にRNAウイルスを排出する点に着目
  • 個別施設から排出される下水に脱脂綿を活用したサンプラーを一定期間浸すことで、RNAウイルスを含む試料を回収できることを確認済み
  • サンプラーによって回収した試料を検査することで、施設利用者における感染者の有無を把握できる
  • 施設利用者全員を対象とした臨床PCR検査費用に比べて安価であり、また、施設側の負担はほとんどない
  • 調査頻度を上げることで、感染者を早期に検知できる確率が上がると考えられる
  • 個別施設でのクラスター発生後、感染収束の見極めにも利用可能
ヒト検査(2階部分)
  • 下水検査でRNAウイルスの存在が確認された場合、試料を回収した期間の施設滞在者に絞って臨床PCR検査等を実施
  • 検査対象を絞り込むことで、感染者を迅速に特定でき、クラスター発生防止・感染拡大の抑制につなげることが期待される

当社は、「京都モデル」のうち下水検査(1階部分)に関わるサービス(*2)を提供しており、今後は、高齢者施設や介護施設といった個別施設で「京都モデル」を活用して頂き、無症状感染者の把握および施設内感染の兆候の早期探知などに貢献してまいります。

  • (*1)島津テクノリサーチは医療機関ではありません。ヒト検体の採取を含む一切の診療行為は医療機関にお問い合わせください。
  • (*2)下水から陽性反応が出た際に実施するヒト対象の検査は、施設で提携されている医療機関などにご相談ください。

現場からのメッセージ

PCR検査システム「京都モデル」 担当

島津テクノリサーチ 環境事業部 八十島 誠

島津テクノリサーチ 環境事業部
八十島 誠

※このインタビューは2021年5月後半に行われたものです