第1回光免疫療法研究会の開催
セッションⅠ-化学で講演する
北海道大学大学院 薬学研究院 生体分析化学研究室 小川美香子 先生
2024年12月、東京マリオットホテルにて「第1回光免疫療法研究会」が開催されました。
光免疫療法は、がん治療の新たな選択肢として期待され、より多くの患者への適用を目指して研究が進められている治療法です。
研究会では、14の機関から20名の医師や研究者が登壇し、最新の研究成果や臨床で得られた知見を発表しました。参加者175名とともに、光免疫療法の現状を把握し、今後の展望について活発に意見交換が行われました。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)分子イメージング部門 主任研究員 小林久隆 先生
光免疫療法とは
光免疫療法は、がんの治療の選択肢「外科手術」「放射線治療」「化学療法」と「免疫療法」に続く、第5の治療法として期待されています。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)分子イメージング部門 主任研究員、関西医科大学附属光免疫医学研究所所長の小林久隆先生が開発したこの治療法は、光に反応する色素とがん細胞に特異的に結合する抗体を組み合わせた薬剤を注射し、近赤外光という身体に無害な光を患部に照射して、身体の中にあるがん細胞だけを破壊する新しいアプローチをとります。周囲の正常な細胞にダメージを与えにくく、がん細胞の破壊によりがんに対する免疫も活性化される、という点が大きなメリットです。現在国内180の施設で治療を受けることが出来ます。
現在は治療対象のがんが限られており、対象となるがんの部位や種類を増やすこと等、今後の研究が進むことが期待されています。
第1回光免疫療法研究会シンポジウム


自由闊達な議論と意見交換を促す 小林久隆 先生
このシンポジウムは、医師・研究者をはじめ研究に関わる参加者全員が、現在行われている光免疫療法に関する研究の全体像を把握し、意見を交換するという目的で行われました。また、しがらみなく自由闊達な議論を行える純粋なアカデミックの会になりました。
研究会は化学、前臨床研究、臨床結果・治療計画、臨床前研究・創薬、デバイス開発の5つのセッションで構成され、光免疫療法に関わる様々な分野からの講演とそれぞれのセッション後には、意見交換の時間が設けられました。
「デバイス開発セッション」では、当社の近赤外光イメージングシステム LuminousQuester NI(ルミナスクエスタ―・エヌアイ)を利用して、光免疫療法治療中の薬剤の反応を可視化する研究成果が国立がん研究センター東病院、広島大学病院から発表されました。
セッションⅤ-デバイス開発で講演する
広島大学大学院 医系科学研究科 耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学研究室 上田勉先生
光免疫療法と当社の関わり
小林先生がNIHに渡米されて間もない2004年に、当社の米国グループ会社SSI(Shimadzu Scientific Instruments, Inc.)の社長 服部重彦(現 当社相談役)が、分析計測機器による研究支援を行ったご縁をきっかけに、技術者の派遣、分析計測機器、蛍光イメージング技術による共同研究等で協力関係を築いてきました。
がんに集まる光をリアルタイムで捉える装置LuminousQuester NI
セッションⅤ―デバイス開発で講演する
国立がん研究センター東病院 頭頸部外科/東京医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 田中英基 先生
LuminousQuester NIは、現在は非臨床研究用途向けに発売しています。倫理委員会の承認を経ることで、米国国立がん研究所(NCI)や国立がんセンター東病院、広島大学との臨床での研究でも活用されています。
光免疫療法では、薬剤のがんへの集積状態や、治療の進行度や治療状況を確認することで治療効果を上げることが、臨床治療現場や、新たな薬剤開発における課題となっています。その課題の解決のために当社はLuminousQuester NIを発売し、同時に臨床用の装置開発にも取り組んでいます。
オープンイノベーションが新たな事業を拓く
当社は、社内にスタートアップインキュベーションセンターを設置し、新たな薬剤の開発や研究のために、異なる技術や専門知識を持つ研究機関と協力し、LuminousQuester NIの製品化を進めてきました。
このセンターは、製品開発とビジネス展開の橋渡しを担うことを目的に設立した組織で、これまでに排尿量測定システム(Urina)や水中光無線(MC500)、健康増進プラットフォーム(SUPOFULL)を取り扱っています。
当社は「『人と地球の健康』への願いを実現する」という経営理念の実現に向けて、当社の蛍光イメージング技術や分析計測技術を活用して治療方法の患者様毎の最適化を実現することで、光免疫療法の発展、普及を支援していきます。また、製品開発を通して医師や研究者の支援を進めていきます。
小林先生(中央右)と当社社員、担当者は左から2人目
担当者のコメント
光免疫療法の機序は将来に向けて様々な可能性が広がっています。頭頸部がん以外のがん種への適用や、治療と同時に免疫力を押さえている細胞を壊すことで免疫力を強くし、転移がんも治療でき、再発を防止できる可能性もあります。がん以外の病気や、病原体の殺傷についても研究がされており、今後、研究が進むことで、人類に大きな貢献ができると考えています。研究者、臨床医、そして当社が更なる開発をすることで、これまで難しかった治療に新しい可能性をもたらすだけではなく、患者さんが自分らしい生活を取り戻せるよう、この事業を進めてまいります。
