効率的なワンオペレーションを可能にする血管撮影システム
-Trinias

人間中心設計で挑む、医療現場の課題

2022年に一新された血管撮影システム「Trinias」。プロジェクトリーダーが医療現場に足を運び、見て感じた課題や医療従事者へのヒアリングから導いたコンセプトは「現場の“リアル”を解決する」。医療従事者や患者のために、新型Triniasはどうあるべきか ――。医療機器事業部技術部プロダクト開発ユニットCVSグループの齋藤淳夫と田中文哲に開発の思いを聞いた。

ペルソナ設定がもたらしたブレない開発

島津製作所 医用機器事業部 技術部 田中 文哲

島津製作所 医用機器事業部 技術部 田中 文哲

新型Triniasは、システムを扱うユーザーへの理解を深め、どうすれば使いやすくなるかを追求してハードやソフトを開発する、「人間中心設計」を採用したことが特徴。人員不足や長時間労働等の医療現場が抱える課題を解決するために導き出したのが、ワンオペレーションでも効率的に検査や治療ができるシステムだった。

開発に先立ち、重視したのがペルソナ設定だ。ユーザーを、カテーテル操作と血管撮影システムの操作など手技におけるすべての操作を、一人でテーブルサイドにて行う主治医と想定。どうすれば “その人”に快適に操作してもらえるのか、寄り添えるのかを徹底的に深堀りし、プロジェクトチーム全体でワンオペレーションを行う人物像を作り上げていった。

ペルソナ設定があったことで、イメージの共有ができたと語るのはソフトウェアの開発担当の田中だ。
「機能や仕様を決めるとき、通常は部署ごとに意見が分かれますが、確固たる人物像ができあがっていたので、今回はそれがほとんどなかったのです。最終的に “お客様に喜んでもらいたい、貢献したい”に尽きる。みんなの目指すところは一緒なのです」
田中にとってユーザーの操作時の動きや次の行動を想像しやすかったことも、ペルソナ設定がもたらした効用だろう。

できる手技を増やすために繊細に動かす

「できるだけ多くの角度から撮影できるものをつくる」。これは、開発当初から決めていたことだ。いろいろな方向から血管が見られることで、診断や治療の幅は広がる。齋藤に求められたのは、X線管装置と検出器を搭載したC形のアーム(Cアーム)の可動域を広げること、さらにCアームそのものをコンパクトにすることだった。

「血管は全身を流れていますから、あらゆる角度から血管を見るためにはCアームの繊細な動きが必要です。ユーザーや患者さんに近づく領域はなるべくコンパクトに、Cアームは細長くし、径を大きくして圧迫感を抱かせないようにしています」

可動域は従来の150度から180度になり、その先でさらに複雑でなめらかに動く機構。細長くコンパクトに納めることは、機械設計の難易度としてかなり高い。

島津製作所 医用機器事業部 技術部 齋藤 淳夫

島津製作所 医用機器事業部 技術部 齋藤 淳夫

「動きの実現とデザインのバランスには苦労しました。でも『これが可能になれば、こんな手技までできるようになる』とマーケティング部から聞いて、開発の意義を強く感じたのです。構造物を細長くすることは強度的に不利ですが、重量バランスの最適な保持方法を検討したり、動作のなめらかさを追求したりしました」

病院で治療現場を見学したときのことを思い出しながら、どこが出っ張っていると、横に立っている治療中の医師の邪魔になってしまうか等、デザイン担当者と意見を交わしながら、いくつもの試作を経てCアームを開発した。

ソフトウェアから考えた操作性の向上


近年の人員不足や医療従事者の長時間労働等、医療現場の課題に応えるため、ユーザーが一人ででも操作できるような効率的なワンオペレーションを可能にし、検査・治療時間の短縮や効率化を考えて開発したのが、タッチパネル型のコンソール「SMART Touch」だ。

「これまでのTriniasは物理的なボタン操作でした。横に長いコンソールが連なっていて、ボタン間の移動が多かった。新しいTriniasでは、ボタンの機能をタッチパネルに集約することで省スペース化し、検査や治療を“すばやく”完結できるようなシステムを目指したのです」(田中)

ソフトウェアから考えた操作性の向上
ソフトウェアから考えた操作性の向上

ソフトウェアからのアプローチは、必要な機能をタッチパネル内でカスタマイズできることで、効率化を考えたもの。全身が撮影できるTriniasでは、心臓領域と頭部領域など部位ごとに異なる機能を用いるため、全ユーザーにすべての機能は必要ないからだ。

「ユーザーの立場で考えたら、検査や治療の内容ごとに使いたい機能だけが手元で操作できるほうが使い勝手がいい。タッチパネルでは、ユーザーそれぞれが使う機能を使いやすいようにカスタイマイズして配置できるシステムを考えました」

ユーザーが一人ででも操作できるようなワンオペレーションを可能にしたことで操作が効率的になり、検査・治療時間の短縮、引いては被ばく線量低減にも一役買っている。 一つひとつのパーツやシステムを考え抜いて開発した新型Triniasが、現場のリアルを解決し、未来を拓く存在になることを願う。

※所属・役職は取材時のものです。

ソフトウェアから考えた操作性の向上

TriniasTrinias

現場の“リアル”を解決する
3つのコンセプトで血管撮影システムの在り方を基本から見つめ直した新たなTrinias。

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