シンプルなのにハイスペックな小型MS -LCMS-2050-

垣根を越える挑戦で掴んだ、 成功の鍵

2022年、高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-2050」が世に送り出された。従来、LC(液体クロマトグラフ)で行っていた分析を、LC-MS(液体クロマトグラフ質量分析計)を用いることによって、高感度でデータの信頼性が高いものにしたい、という需要の高まりを受けてのことだ。LCのユーザーにとってMS(質量分析計)は、使いこなすために知識が必要、大型で場所も取るなどハードルが高いと思われており、LCMS-2050の開発の使命はこのハードルをなくすことだった。約4年間、奮闘しつづけた技術者たちが熱い思いを語ってくれた。

常識から抜け出し、新しい価値を創造する

常識から抜け出し、新しい価値を創造する

磯 圭祐

開発メンバーは、機械ユニット開発、電気ユニット開発、ファームウェア開発、ソフトウェア開発、そして分析手法を提案するアプリケーション開発の5チーム。総勢20人ほどで編成される。今回はMSが専門のビジネスユニット(MSBU)とLCが専門のLCBUが共同で取り組むという珍しいケースだ。

「MSBUでの常識がLCBUではそうではないことが多々あります。LCBUの参加は、LCMS-2050の開発において大きな意味がありました」(磯圭祐 開発リーダー)。
LCMS-2050は、MSに馴染みのないLCユーザーを対象として想定しており、LCユーザーに受け入れられる装置(ハードウェア)およびソフトウェアの操作性が求められていたのだ。

「LCユーザーが使いやすい機能とは、一体どういうものなのか?」。ソフトウェア開発のチームリーダーでありMSBUの前田一真は、自分に定着したMSの常識にとらわれず、新たな製品価値を創造する意気込みで「LabSolutionsTM」の開発に挑んだ。

アプリケーション開発のチームリーダー・小寺澤功明は大学時代からずっとLCのみを使っていた。「LCユーザーが求める高い精度や感度を実現することに注力しました」。
LCユーザーのための装置を開発する──。決してぶれてはならないコンセプトであった。

開発を支える議論とコミュニケーション

前田は新しいソフトウェアの構想を見える形にわかりやすくまとめ、何度も開発メンバーにプレゼンし、様々な人の意見に積極的に耳を傾けながら議論を重ねていった。LCユーザーの視点に立ったアイデアに否定的な意見を言うのは、MSをよく知る者たちだ。前田はコンセプトに基づく建設的な議論ができないことに苦しんだ。「しかし、LCとMSは異なるバックグラウンドを持つので、意見が対立するのは当然のことだと思います。そのような中で、LCをよく知る人に意見を聞くと、肯定的な意見を言ってもらえることが多かったんです。そのおかげで信念を失わず、最後までやり抜くことができました」。

開発を支える議論とコミュニケーション

(左)前田 一真 (右)小寺澤 功明

小寺澤も、MSで分析を行うメリットをLCのユーザーにデータで明確に示すため、MSとLCの双方の意見を丁寧に聞いていった。かつてのLCユーザーである小寺澤は、前田のよき相棒でもある。「前田さんは『こんな操作画面にしたいのだが、どう思う?』など、頻繁に意見を求めてくれました。私からも『パラメーターはLCの他の検出器とそろえたほうがよい』など、積極的に考えを伝えました」。

「メンバーをまとめる立場になるほどコミュニケーションは大切です。リーダーたちが課題意識を持ち、積極的に意見や提案を出して議論してくれたことでコンセプトが認識され、ぶれることない開発につながりました」。開発リーダー・磯の、チームリーダーに対する信頼は絶大だ。

トレードオフは互いの長所を生かす、前向きな機能の考え方

トレードオフは互いの長所を生かす、前向きな機能の考え方

MSの装置として絶対に外してはいけないものがあることも、前田はよくわかっていた。例えば、分析条件を設定する画面のパラメーターは多いほうが良いというMS、少ないほうが良いというLC。これについてはトレードオフで、両方の画面を用意し、設定で切り替えられるようにしたという。

「LCユーザーに使っていただけるMSを開発するには、どちらか一方の意見だけを重視していてはうまくいきません。そこで、様々な人の意見に積極的に耳を傾ける中で、理解するだけでなく共感できるように努めました。そこから芽生えてきたのが、LC、MSそれぞれの長所を生かし互いに補い合えるようにしたい、という思いです。その思いからMass-itTMを発明しました」。否定的な意見だったMSの技術者たちからも最後には共感を得られ、前田は胸を熱くした。

LCMS-2050を組み立て、いざ分析の試運転をするときは、開発の5チームすべてが集まり固唾を呑む。「初めてイオンが確認できたとき、大きな喜びと安堵を感じました」(磯)。開発メンバー全員で感動を共感した瞬間だ。

「次は、多くの方にLCMS-2050の素晴らしさを共感いただき、ぜひともご活用いただきたい。そして私たちもLCMS-2050を通して社会貢献をしたい」。開発メンバー全員がそう願っている。

LCMS-2050

LCMS-2050は究極のLC検出器を容易に使用できるように、装置デザイン・装置制御・分析データ解析のすべての面において妥協がありません。 

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