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2025年7月2日 | プレスリリース
大阪・関西万博の「光子のふしぎと光量子センシング」展示に協力
国内初の「量子もつれ」体験型企画展に量子赤外分光のコンセプトモデルを提供
島津製作所は、2025年日本国際博覧会(以下 大阪・関西万博)の企画展「エンタングル・モーメント ―[量子・海・宇宙]×芸術」(内閣府・文部科学省主催)の「光子のふしぎと光量子センシング」展示において、京都大学大学院工学研究科の竹内繁樹教授の研究グループに協力して、量子赤外分光を用いた未来の計測技術に関するコンセプトモデルを展示します。会期は8月14日(木)~8月20日(水)です。会場で体験できる光子の驚くべき現象を、朝永振一郎博士のエッセイ「光子の裁判」※1に登場する“波乃光子”をモチーフとしたオリジナルキャラクター「ミツコ」が解説します。
展示キャラクター「ミツコ」
同展示は、量子もつれ光子対を利用した3つの装置がその場で実際に動作することにより「量子もつれ」※2の不思議な世界を体験できるという、一般公開では国内初の試みです。電子や光子といった個々の量子の振るまいや、複数の量子間の相関(量子もつれ)を制御することで、従来の技術の限界を超える量子科学技術が注目されています。当社は、2018年から竹内教授のグループとともに、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)の「量子もつれ光子対を利用した量子計測デバイスの研究」に取り組んでいます。本研究では、量子もつれ光子対の発生過程の干渉を用いて、可視域の光源と検出器のみで、赤外域での分光が可能な「量子赤外吸収分光測定」を実施しています。同技術が社会実装されると、医療やセキュリティ、環境モニタリングなどにおける様々な物質の鑑別同定が、小型で高性能な量子赤外分光装置により可能となります。当社は、主に光源から可視と赤外域のもつれ光子対を発生させるための光学素子の製作に携わっています。
- ※1:朝永振一郎博士が1949年に記したエッセイ。被告人「波乃光子」が二つの窓を同時に通ったと主張することを量子力学を用い検証する裁判劇。「量子力学的世界像」(みすず書房)など多くの書籍に掲載されている
- ※2:2つの異なるシステム間で相関した状態が2つ以上あり、それらが(量子において複数の状態が同時に成立する)量子重ね合わせ状態にあること
開催概要
名称 | エンタングル・モーメント —[量子・海・宇宙]×芸術 「光子のふしぎと光量子センシング」 |
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開催場所 | 大阪・関西万博 西ゲートゾーンEXPOメッセ「WASSE」 |
開催期間 | 2025年8月14日(木)~8月20日(水) 10:00~20:00 ※初日14日(木)は13:00開始/最終日20(水)は18:00終了 |
展示構成
ZONE1 プロローグ
ミツコの映像による物語が、光の最小単位が光子であること、その光子の特徴、もつれ光のイメージを説明します。
ZONE2 実験! 双子の光子のふしぎな世界
京都大学の研究者らが制作した最先端の光量子もつれの3つの実験装置を動作させ、来場者に不思議な現象を体験していただきます。
<装置1>「量子もつれ光」発生装置
双子の光子はこうして生まれる~「量子もつれ光」の発生~
量子もつれ光を実際に発生させ、その場で発生している量子もつれ光の映像を展示します

<装置2>「二光子量子干渉」実験装置
見分けがつかない双子の光子、出会って、通って、どこいった?
~「二光子量子干渉」の実験~
量子力学の世界では、複数の物理過程の間で干渉が生じ、本来起こるはずの現象が生じなくなる場合があります。光子の対を半透鏡に入射する実験で体験していただきます。

<装置3>「ベルの不等式のやぶれ」実証装置
遠く離れても関わり合う光子たち~「ベルの不等式の破れ」の実証~
物理現象はその場所での物体の状態で決まる(局所実在性)ということが、量子の世界では成り立ちません。その事を検証した2022年のノーベル物理学賞の「ベルの不等式のやぶれ」の実験を、量子もつれ光子対を用いた実験装置で体験していただきます。

ZONE3 いこう! 双子の光子が変える未来
従来の技術の限界を超える量子もつれ光を用いた「光量子センシング」技術について体験型の展示で紹介し、私たちの未来の日常がどのように変わっていくかを想像していただきます。
光干渉断層撮影装置(OCT)(展示装置協力:santec Holdings)
指を入れてその内部を観察する体験ができます。

量子光干渉断層撮影装置(Q-OCT)(展示装置協力:santec Holdings)
量子もつれ光を用いたQ-OCTにより分解能が大きく向上できることを、解説映像と測定データを通じて説明します。

量子赤外分光装置(展示担当:島津製作所)
来場者に、赤外分光装置を利用して、様々なサンプルの分子認識ができることを体験してもらいます。また、量子もつれ光を用いた量子赤外分光では、解説映像と未来の姿を示したコンセプトモデルにより、大幅な小型化が可能となることを説明します。

エピローグ ~光量子センシングのこれから
量子力学の発展と京都大学との関わりについて、1900年からの年表で一望するとともに、量子もつれ光を用いた「光量子センシング」技術とその社会への波及について説明します。また京都大学に発足した「光量子センシング社会実装コンソーシアム」での取り組みを紹介します。
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