「使いやすさを、もっと一般の人にも」

分析装置は精密機械であり、特別な場所で繊細な作業を行うものです。それを「家電並みの使いやすさ」を目指すのは並大抵のことではなかったと開発に携わったスタッフは語ります。
記事でも語られたように、分析装置は、いまや特別な人が特別なシチュエーションで使うものではなくなってきています。世の中の安心・安全を目指す研究者や開発者のツールとして、もっとストレスなく使いやすいものにすることは、分析計測機器のトップメーカーとして、歴代の技術者がプライドをかけてアイデアを出し続けてきたことでした。それを、試作を一気に飛び越えて現実の装置として世に出すことを目指した今回のプロジェクト。メンバーがクリアしなければならない項目は予想をはるかに超えた量でした。プロジェクト開始から全員で全速力。会社としても期待していた装置だけに、プレッシャーは大きく押しつぶされそうになったと言います。
しかし、そんな状況でも、メンバーの人間関係や結束力は崩れることがなかったと、全員がうなずきながら笑顔で答える姿が印象的でした。リーダーが全員を、大切な役割とプライドを持ったメンバーとして扱い、メンバーが実現したい具体的な姿を共有し、ベクトルを同じ方向に向け続けられたことが、今回の大きな改革につながったのだと感じる取材となりました。

今回の取材現場は小さな会議室で、本誌史上最多の8名が、まさに片寄せ合うようにぎゅうぎゅうになりながらの取材でしたが、取材中、不思議と部屋に漂う空気が優しいと感じていました。全員が必ず話せるようにリーダーがそっと話を振ったり、お互いを思いやりながら話をする姿に、理想の開発を現実のものとしたチームの見えない力がにじみ出ていた気がしました。