真空熱処理炉の基礎知識
熱処理とは
熱処理とは、所要の性質を付与する目的で行い加熱と冷却のいろいろな 組み合わせをいいます。
すなわち、加熱・冷却により、変態させ、体質改善をはかる操作をいいます。
そして大事なことは
- どんな温度か
- そのときの加熱
- 冷却速度は(必要な温度範囲は)
- どんな圧力か(ガス圧力)
- そのときの雰囲気は(ガスの種類)
などです。
真空とは
ここで紹介する真空は、「気体がまったくない状態(絶対真空)」ではありません。
「大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態」を真空と呼びます。
したがって、定量的に表現する場合は圧力という語を使用します。

[マメ知識]「絶対圧」と「ゲージ圧」の違い
圧力には「絶対圧」と「ゲージ圧」というものがあります。「絶対圧」は絶対真空(大気が全く存在しない真空)を0とし、示したものです。ですから、絶対圧には負(マイナス)の表記は存在しません。
それに対し、「ゲージ圧」は大気圧を0とし測定した圧力となります。真空を示す場合は、主に「絶対圧」が使用され、加圧の度合いを示す場合は、ゲージ圧を使用します。単位はどちらの圧力もSIのPaを使用しますが、二つの圧を区別する為に、「絶対圧」は、Pa・A、ゲージ圧はPa・Gと表記します。
真空熱処理炉とは
特定の空間を真空にし、加熱・冷却する装置です。
主な装置の構成は以下の通りとなります。
真空で熱処理を行うメリット
●真空下で加熱を行う為、処理物の酸化が抑えられます。
●真空ポンプで引きながら加熱を行う為、処理物自身に付着しているガスを除去することが出来ます。
島津真空熱処理炉について
タイトボックス方式とは
ヒーターと処理物の間にタイトボックス(インナーケース)を設けることにより、処理物より発生するガスやバインダー等による炉内の汚染を最小限に抑える方式です。
カスケード制御
カスケード制御参照。
グラファイト(黒鉛)
炭素の同素体。耐熱性が非常に高く、当社では炉内の構成物に使用。(ヒーター、断熱材等)
減圧ガスフロー
炉にガスを導入しながら、真空ポンプで減圧する処理。ガスはタイトボックス外がから導入され、真空はタイトボックス内から引かれる為、処理物から発生したガス等の炉内への飛散を最小限に出来る処理。主に脱ガス工程や脱脂工程等に適用される。
コンタミネーション
汚染物質の意。熱処理により生成される、不要な物質を指す場合がある。当社では、ワックストラップやダストキャッチャー等で回収が可能。
時効処理
性質や状態の変化を安定させたり、逆に促進させたりするために行う処理をいう。時効を常温で行うものを自然時効、加熱によって行うものを高温時効という。ゲージ類のように使用中に寸法の狂いをきらうものに対しては、焼入れ後100~200℃の高温時効を行う。
焼結
非金属あるいは金属の粉体を成形し、融点以下または少量の液相の存在する温度で加熱した場合に、構成粒子間に接合または合体がおこり、ある程度の強さと特性をもつ体系になる現象。粉体が単に集合した状態では、表面エネルギーの総和は最小ではなく熱力学的に非平衡状態にある。加熱処理すると、表面エネルギーを減少させようとする方向、つまり表面積が減少する方向に物質移動がおこり、粒子どうしの結合がおこる。焼結に影響をおよぼす因子には、粉末の粒度、組成、加熱温度、加熱時間、雰囲気、純度、圧縮圧力などがある。
焼成
成形体中の不安定成分(結晶水、塩類、バインダなど)を分解、除去し、各成分間の反応を進行させて安定な化合物を形成し、同時に焼結によって収縮、ち密化させて、一定形状、強度の焼結体を得ること。非金属系の処理物の焼結を焼成と呼ぶ場合が多い。
純化
製品中に溶解したガス量は圧力と温度によりその溶解度が変化し、真空で長時間加熱して材料中に含まれたガスを脱ガス処理ができる。また、純化処理用の塩素ガスや塩化水素ガスを導入し、より積極的に純化する場合もある。
タイトボックス
グラファイト製もしくは、耐熱金属製の円筒。(角型もあり)処理物とヒーターゾーン、断熱材を隔離することにより、処理物から発生するガスや、ワックス成分による炉内汚染を防ぐ装置。
脱脂
成形に用いた有機(物)結合剤を加熱除去すること。圧粉体(グリーン成形体)の混合粉末には、成形時における金型の磨耗防止、及び成形体の強度維持にパラフィンなどの有機バインダが添加される。これは高温に加熱すると、すすに分解して製品の性能劣化の原因になるため、取り除く必要がある。脱脂とは、バインダが分解してすすになる温度以下の低い温度で、ゆっくりと加熱して、グリーン成形体からバインダ類を揮発除去することをいう。同意語:脱バインダ、脱ワックス、脱パラ
脱ワックス
脱脂と同意
超硬合金
広い意味では炭化物、窒化物または炭窒化物などの硬質粒子をFe,Co,Ni及びそれらの合金などの鉄族金属で結合した複合合金を示すが、一般的にはWC-Coを主成分とした合金をいう。
バインダー
本来、結合材(材料)のことを意味し、次の物質の総称である。樹脂、あるいはセメント上の物質の一種で、粒子と共に保持して機械的強度、均質接合性、固化、表面被覆の粘着性を向上させる。異質物質を固着させる。セラミックスやMIM、超硬業界では、結合材のみを示すのではなく、同時に混合して使用される滑材や可塑剤を含んだ複合系のものをいう場合が多い
半焼結
原料粉末の組成均一化や、成形体の脱バインダ、強度増加を目的に,最終焼成温度以下の温度で行う予備焼成。
半焼成
原料粉末の組成均一化や、成形体の脱バインダ、強度増加を目的に,最終焼成温度以下の温度で行う予備焼成。
ファインセラミックス
粉末射出成形(MIM,CIM)
プラスチックの成形と同じように金属を成形する方法であり、複雑形状品がニア・ネット・シェイブ(ほぼ完成品に近い姿)で精度よく量産できる成形法のことをいい、粉末が金属である場合はMIM、粉末がセラミックスの場合はCIMという。
ホットプレス
ダイス内に粉末または成形体を充てんし、加圧下加熱すると、応力によるイオンや原子の拡散が助長され、低い温度で高密度の焼結体が得られる。ダイスの種類と使用条件に制限があるが、ち密化が困難な組成物または急速にち密化したい場合に用いる。優れた点は、焼結温度を低くすることができることで、温度が低いため粒子成長が起こりにくく、そのため微粒子からなるち密な製品が得られる。または、熱間でプレスによる加圧を加える処理自体をさす。当社では、熱間プレスに真空を加えた処理が可能。
メタライズ
セラミックスと金属の接合をいう。固相-気相系、固相-液相系および固相-固相系で行うのが普通である。
焼入れ
オーステナイト化温度から急冷して硬化する操作をいう。また、急速に冷却する操作をいうこともある。鋼を急冷すればマルテンサイト組織になり硬くなる。冷却が遅ければトルースタイト、ソルバイト、パーライトの順に各組織が得られ、柔らかくなっていく。
焼なまし
鉄鋼を適当な温度に加熱し、その温度に保持したのち徐冷する操作をいう。目的は、内部応力の除去、かたさの低下、被削性の向上、冷間加工性の改善、結晶組織の調整あるいは所要の機械的、物理的またはその他の性質を得ることなどである。
焼戻し
焼入れで生じた組織を、変態または析出を進行させて安定な組織に近づけ、所要の性質および状態を与える。焼きならしのあとに用いることもある。目的は、焼入れのままでは切欠靭性が低くかつ応力腐食割れなどを起こしやすいので、その改善におこなう。
溶体化処理
合金成分を固溶体に溶解する温度以上に加熱してじゅうぶんな時間保持し、急冷してその析出を阻止する操作をいう。オーステナイト系ステンレス鋼の基本的な熱処理で、Cr炭化物あるいはσ相などの脆化相を固溶させるとともに加工ひずみを除く処理をいう。
ろう付け
母材間に溶融金属(ろうと称す)を添加し、母材間とのぬれ現象と毛細管現象を利用して流し込み接合する方法をいう。この際、ろうの融点は母材のそれよりも低くする必要がある。母材は原理的には溶融しないが、微視的には溶融ろうとの間で合金層の生成や母材の溶解など複雑な界面反応が起こる。
CIM
粉末射出成形参照
MIM
粉末射出成形参照