すべては、夢から始まる。島津製作所が目指す人と地球の健康

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共感あふれる社会に向けて

2022年4月1日に島津製作所十三代社長に就任いたしました。就任にあたり、島津製作所はどのような会社でありたいのか、社会にどのように貢献していくべきか、自らと島津製作所を改めて見つめ直し、さまざまなことに思いを巡らせています。

ここ数年、新型コロナウイルス感染症の蔓延や紛争などの影響で私たちは大きな試練に直面しています。日常生活や働き方は変化を余儀なくされ、企業活動においてもサプライチェーンや物流の混乱など幾多の試練を受けています。

もちろんそれ以前から、気候変動や格差の拡大、多様性に関する価値観の変化への対応など、社会は大きな課題を抱え、変革を求められ続けてきました。これから先、人類社会や地球環境がどのように変わっていくのかは不透明ですが、人の健康と命の尊さ、地球を守ることへの願いはますます大切になるでしょう。

そのような状況だからこそ、当社社是である「科学技術で社会に貢献する」に愚直に取り組むことこそが、島津製作所が進むべき道である、私はそう確信しています。

山本 靖則
島津製作所十三代社長 山本靖則

科学技術は、人類が生み出した最大の資産の一つでしょう。医療も薬も、鉄道も車も、パソコンもスマートフォンも、科学技術があればこそつくり出すことができました。しかし、科学技術があるだけでこれらの進歩は実現したでしょうか。私は、科学技術だけでは実現しなかったのではないかと思っています。

大切な人の病気を治したい。遠くにいる人に会いたい、話したい。空を飛び、月へも行ってみたい―。いずれも誰かの強い想いから始まり、強く夢見た人が夢を語り、そこに共感する人たちが力を合わせ、知恵を絞り、失敗を乗り越えて科学技術を進化させることで夢を実現してきました。人類の進歩はいつもこういう道筋を経て生まれてくるのだろうと考えています。

島津製作所が進むべき道は、まさにこの方向です。お客さまの夢に私たちの夢を重ね、ともに育むことで事業を生み、社会やステークホルダーの皆さまとの間に信頼関係を築き、積み上げることで事業を育てる。そのためにこそ、私たちは皆さまの夢をお聴きしたい。そして夢の実現のために、持てる科学技術の力を一層磨いていきたい。

お客さまと社員が持つ夢をともに実現できる環境を整え、この地球に生きるすべての人とともに、“共感あふれる社会”に向けて歩み続ける島津製作所にすることが、私に与えられた使命だと考えています。

人の健康と地球の健康

私たちは、「『人と地球の健康』への願いを実現する」ことを経営理念としています。人の健康の実現に関して、これまでも力を注いできました。医用機器や検査用分析装置、創薬や食品の衛生管理に役立つソリューションの提供など、多岐にわたります。いま私たちはこれらの製品やソリューションを「アドバンスト・ヘルスケア」と銘打ち、先を見据えた取り組みを行っています。

たとえば、世界各国で高齢者人口が増加するなかで、パンデミックも相まって人との接触機会が減り、心身両面で健康不安を抱える人が増えることが懸念されています。発症してからでは治療が難しい心や身体の病気も少なくありません。しかしながら、発症前に兆候をとらえて予防策を講じることができれば、より長い期間、健康を維持できる可能性が高くなります。

健康で長生きという夢の実現に向けて、私たちは血液数滴から、認知症や生活習慣病、がんなどの超早期診断を行う技術の実用化を目指し、さらに、メンタルヘルスの鍵となる人の感情や脳の働きの解明にも取り組んでいます。長期的には、個人のゲノム情報も活用した一人ひとりに最適な予防法、治療法を提案するパーソナル(オーダーメイド)医療の確立に貢献し、文字通り、すべての人が心身ともに健康な人生を送ることができる社会を目指します。

山本 靖則
技術者として長年手がけてきた試験機の前で

地球の健康に関しても、今後さらに力を注いでいきます。「カーボンニュートラル」については、これまでも自動車の軽量化に貢献する新材料の評価やEV用バッテリーを検査するための多くの装置を提供してきました。現在は水素やバイオ燃料の品質管理ソリューションなど、脱化石燃料の動きを見据えた製品やサービスの開発を着々と進めています。

さらに、CO2排出量を減らすだけでなく空気中のCO2を利活用する技術の開発支援にも取り組んでいます。化石燃料に代わり人工光合成や微生物の働きを利用してCO2から燃料や樹脂の原料を製造するといった開発が世界中で進められ、多くの成果が報告されています。私たちは、分析・計測・プラント制御の面でCO2利活用の実用化に挑戦し、「カーボンリサイクル」を現実のものにしたいと夢見ています。

言葉という粒子

自然界には重力、電磁気力、弱い力、強い力という4つの力があります。これらの力はすべて、力を伝達する“粒子”を交換することで実現されています。それぞれ異なる“粒子”を交換するのですが、届く距離も強さも見た目の現象もまったく異なる力が、同じ方法で伝えられています。物理学ではこの力を“相互作用”と呼び、4つの相互作用によって自然界のあらゆるものができあがっています。

私はマネジメントに携わるようになって、しばしば学生時代に学んだこの自然界の相互作用を思い返すようになりました。「人も同じ。相手に何かを伝えるには“言葉”という粒子をやりとりすることが必要なのだ」と。人は感情の生き物として、また、考える葦として、常に何かを感じ考えますが、感情も考えも“言葉”という粒子をやりとりすることで相手に伝わり、相互作用により共感や新しい何かが生まれるのだと思います。人の成長もまた、相互作用があればこそだと思っています。

社内はもちろん、お客さま、協働するパートナー、そしてステークホルダーの皆さまと対話を重ね、相互作用により、共感あふれる社会を実現したい。これが社長として私が実現を目指す夢です。これからも進化を続け、「科学技術で社会に貢献する」島津製作所にどうぞご期待ください。

※所属・役職は取材当時のものです。

山本 靖則 山本 靖則
株式会社島津製作所 第十三代 代表取締役 社長山本 靖則(やまもと やすのり)

<略歴>

学歴

1981年 3月福井大学 工学部 応用物理学科 卒業
1983年 3月大阪大学大学院 工学研究科 電磁エネルギー工学専攻 修了

職歴

1983年 4月株式会社 島津製作所 入社
2003年10月分析計測事業部 試験機 ビジネスユニット統括マネージャー
2013年 6月Shimadzu Europe GmbH(ドイツ)社長
2014年 6月執行役員
2017年 6月常務執行役員 就任 製造・情報システム・CS担当、技術研究副担当
2020年 4月経営戦略・コーポレート・コミュニケーション担当
2020年 6月取締役 就任
2021年 4月専務執行役員 CFO
2022年 4月代表取締役社長 就任

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