未来の科学技術人材を育てる
韓国の高校生向け教育プログラム
私たちの暮らしを支えるさまざまな場面で活用されている分析科学。技術を未来につないでいくためには、次世代の科学技術人材の育成が重要です。しかし、進路選択を控えた高校生が実際に分析機器に触れたり、研究現場を訪れる機会はそう多くありません。韓国のShimadzu Scientific Korea(以下、SSK)では、未来の科学技術人材の育成を目指し、高校生向けの教育プログラム「Future-Ready Innovators」を実施しています。
質の高い教育が未来を変える
Future-Ready Innovatorsプログラムを企画・運営するのは、SSK技術研究所のメンバー11人です。普段は、分析受託や装置デモンストレーション、分析手法の開発、ユーザー向け教育のほか、分析科学が産業分野や社会課題の解決にどのように貢献しているかという情報発信も担っています。

SSK技術研究所のメンバー。前列中央がLee。SSKのオリジナルキャラクター「Peri&Tube」と一緒に
プログラム発足のきっかけとなったのは、同研究所のLee Minhyeが 「SSKとして持続可能な社会の実現にどのように貢献できるか」を考えたことでした。
サステナブルな社会への貢献を考えたとき、分析科学を生業とする企業として、次世代教育の重要性を強く認識しました。SDGsの目標4に関連して「質の高い教育が未来を変える」という考えのもと、一般の高校では触れる機会の少ない分析技術や分析機器を体験してもらい、その技術が産業の現場や社会課題の解決にどのように役立っているかを伝えたいと考えました。
分析科学への興味を育む体験の場
それからLeeは、テーマの選定や教育コンテンツの構成、実験や施設見学の計画に取り掛かりました。特に、専門的な分析技術や分析機器の原理を高校生の視点に合わせて分かりやすく再構成して、科学技術への興味を深めることを意識したと言います。
高校生に分析科学を身近に感じてもらうため、プログラムでは理論中心ではなく、環境問題や食品安全、バイオテクノロジー分野などの実際の分析事例を紹介しています。また、分析科学に関わる職業についても紹介しており、将来の進路を考えるきっかけづくりにも力を入れています。
また、2026年3月に開設した、SSKのお客様の課題解決のための技術拠点「イノベーションキャンパス」も本プログラムに活用しています。ここでは、ラボの見学や、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)の実機を見ながら分析原理を学ぶほか、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて身近な製品に含まれるプラスチック成分を分析する実習も取り入れました。

分析機器の実機を前に装置の原理を学ぶ学生たち
液体クロマトグラフ(LC)の原理を伝えるために、水性ペンのインクを使ったクロマトグラフィー(分離)の実験をしました。一色だったインクがグラデーションを描きながら分離する様子に、学生たちは興味津々で「なぜこのような現象が起こるのか」と積極的な質問がありました。プログラムの最後には、「このような場所で働いてみたい」「どのような専攻に進めばこうした仕事に就けるのか」と質問する参加者もいて、分析科学への関心が将来の進路選択へとつながる可能性を感じました。
LeeらSSKのチームは、Future-Ready Innovatorsプログラムを1年間で7回実施し、計104人の学生に学びの場を提供しました。未来の科学技術人材が基礎科学を体験できる点などが評価され、Future-Ready Innovatorsは韓国教育部によって「教育寄附・進路体験認証機関」に認定されました。参加校からは早くも継続的な活動を希望する声が届いています。
教育寄附・進路体験認証機関の認定ロゴ
教員からの感想。「学生たちが良い時間を過ごせた」として、満足度・安全度ともに星5が付けられている
SSK Leeのコメント
今後このプロジェクトを、学生たちにとって一回限りの体験でなく、分析科学をより身近なものとして理解し、将来の進路と結び付けて考えることのできる継続的な教育プログラムへと発展させられたらと思います。
特に、新たに整備されたSSKイノベーションキャンパスは、半導体、バッテリー、バイオテクノロジーなどさまざまな産業分野における研究・検証・教育をつなぐ拠点として、学生が実際の分析機器や現場に根ざした科学技術を身近に体験できる学びの場になると考えています。今後もSSKイノベーションキャンパスでのFuture-Ready Innovatorsを通じて学校教育と産業の現場の橋渡しをし、より多くの学生が科学技術を通じて社会課題を解決する可能性を発見できるよう貢献していきたいと考えています。
タイトルとURLをコピーしました


