NIRSニューロリハ

NIRSニューロリハとは

NIRSニューロリハは、近赤外光イメージング装置(以下、NIRS)と当社独自のニューロフィードバックを組み合わせた、リハビリテーション(以下、リハビリ)システムです。
NIRSニューロリハにより、脳の活動状態がリアルタイムに提示可能となるため、脳活動の意識的な制御による運動機能の効率的な訓練を促すことになり、特に脳卒中リハビリ中の患者に対して従来よりも高いリハビリ効果が得られると期待されます。

リハビリの重要性について

近年は、生活環境の変化に伴い、認知症、うつ病、脳卒中等、脳の病気を発症する患者が増加しています。特に認知症及び脳卒中は、発症後に要介護となる可能性が高い疾患として知られています。
現在、脳卒中については、治療中の患者数が約118万人、年間発症数は約29万人(出典:厚生労働省 平26年患者調査)にも達しており、さらに高齢化社会への移行に伴い、脳卒中が発症することで要介護者が増加することも懸念されています。
患者に対して介護を実施すると、活動性の低下を招き、介護量の増加にもつながるため、患者の運動機能や認知機能の維持・向上を目的としたリハビリの重要性が増しています。特に、近年は少子化により福祉・介護人材の確保が困難になることが予想され、できるだけ、人手をかけずに患者のリハビリを実施できる方法を確立することが求められています。

図:要介護の要因及び介護人材の現状について

患者の効果的なリハビリを実施する上で、脳活動を可視化することが考えられ、脳活動を簡便に可視化できる装置としてNIRSが知られています。NIRSは、近赤外領域の光が皮膚や頭蓋骨に対して高い透過性を有する性質を利用して、大脳皮質の血流変化を非侵襲的に計測する装置であり、日常的な動作課題を遂行している間の脳活動を測定することが可能となるため、運動機能の回復を目的としたリハビリ中やリハビリ後の脳活動の変化を評価する際に利用されています。

NIRSニューロリハの概要

NIRSニューロリハは、当社独自のニューロフィードバックを用いて運動機能の訓練にNIRSを使用する新たなリハビリシステムです。
これまでNIRSは、医療従事者が様々な脳活動の評価を目的とした評価ツールとして利用されてきましたが、今回、新たに患者の運動機能の回復・訓練を目的とした訓練ツールとしてNIRSを適用しました。

図:NIRSニューロリハにおける評価ツールと訓練ツールの概要

ニューロフィードバックとは

NIRSなどの脳機能計測機器により、計測・解析した脳の活動状態を、リハビリ中の患者に対して提示することで、患者自身に脳活動を意図的に変化させ、特定機能を回復・訓練する方法です。

図:運動時と運動想像時における脳活動イメージ

手や足等、運動器を動かすリハビリでは、運動により刺激から脳と感覚をつなげて運動機能の改善が促進されます。一方、ニューロフィードバックは、運動想像を行う患者に脳の活動状態を提示(フィードバック)し、脳内の機能的ネットワークに直接介入することで、患者自身が脳活動を意識的に制御し、運動機能の訓練強化を実現しています。
患者に対して脳活動の変化する様子をフィードバックする際、プログレスバー、強度スケール、円形スケール等、直観的に理解し易く、患者が興味を持つ形式で提示することで、患者の運動機能の訓練に対するモチベーションの向上も期待することができます。

図:脳活動を患者にフィードバックする様子と提示例

ニューロリハで実施する工程

  • 評価工程

  • 訓練工程

  • 評価工程

図:NIRSニューロリハの工程

NIRSニューロリハは、患者の運動機能を医師などの専門家によって評価される評価工程と、運動機能を訓練する訓練工程からなります。

① 評価
評価工程は、訓練前後の患者の運動機能が医師により診断され、訓練内容の決定、訓練効果の判定、訓練工程の再実施の要否等を判断します。

② 訓練
訓練工程では、運動想像による運動機能の訓練中に、NIRSで計測・解析した脳の活動状態を、患者へ提示することで、意図的な脳活動の変化を患者に促し、運動機能の訓練強化を図ります。

共創

本技術は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発」における、慶應義塾、大阪大学、川崎医科大学、森之宮病院との共同研究開発成果となります(AMED課題番号:JP18he0402257)。
今後、川崎医科大学 三原教授を中心に、本システムを医師主導治験へと進め、医療現場での実用化を目指していきます。

<関連特許>
当社は、ニューロリハに関連する以下の特許を保有しています。
1. 特許第6477280号
2. 特許第6502488号
3. 特許第6489018号

<関連論文>
NIRSニューロリハの技術が記載された論文は以下の通りです。
1) M.Mihara, I.Miyai, N.Hattori, et al, “Neurofeedback Using Real-Time Near-Infrared Spectroscopy Enhances Motor Imagery Related Cortical Activation.”, PLoS ONE 7(3): e32234 (2012)
2) M.Mihara, N.Hattori, M.Hatakenaka, et al, “Near-infrared Spectroscopy-mediated Neurofeedback Enhances Efficacy of Motor Imagery -based Training in Poststroke Victims : A Pilot Study”, Stroke, 44(4):1091-8 (2013)

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