有給休暇、公休を
半休ずつに分けて
治療と仕事の両立に奮闘

副作用で、朝起き上がれない

治療をするなかで一番大変だった点をお聞かせください。

体力的にも大変でしたが、有給休暇が足りなくなって困りました。手術、放射線、通院の治療プランで有給休暇を割り振っていたのに、抗がん剤が加わったことで治療日が増え、さらに副作用で朝起き上がれず、吐き気に悩まされ、仕事に行けない日が増えてしまいました。仕方なく有給休暇をすべて半休ずつに分けて、それでも足りずに公休も半休に分けて午前中に仕事、午後から治療に当てていました。

職場の方のご理解、サポートはありましたか?職場の方のご理解、サポートはありましたか?
闘病前に総合案内を担当していた頃、
勤務先の広報誌で紹介された。
(写真右から2番目が前田さん)
職場の方のご理解、サポートはありましたか?

総合案内の立ち仕事からデスクワークの仕事に変えてもらいました。上司は「しんどかったら休んでいいよ」と言ってくださって、本当に有難かったです。
ですが、私も同僚もがん患者がどれだけしんどいのかわからず、今後の見通しもつかず、手探り状態が続いていました。いま振り返るとかなり無理をしていたように思います。
抗がん剤をしていたときは、月曜日に抗がん剤をして、しんどくなるのを見越して金曜土曜に有給休暇をとっていました。

有給、公休でやりくりをされての治療ですが、費用面での苦労はありましたか?

京都市の「ひとり親家庭医療費支給制度」で医療費は無料だったのでとても助かりましたが、闘病生活には医療費以外のお金も必要です。体がしんどくてもタクシーは使わずバスに乗り、外食を控えて子どもたちのごはんを作り、とにかく節約していました。

95%の人が脱毛する抗がん剤を使っていたのでウィッグも必要でしたが、高価なものは買えず、できるだけ安いものを探しました。

治療はしばらく続けられたのですか?

1年ぐらいでやめてしまいました。
5年間ホルモン剤を飲み続けなければいけなかったのに、副作用がひどすぎて治療を断念したのです。

抗がん剤の副作用で、ミスの連続。
うつ傾向に。

どんな副作用が?

体が重くて以前できたことができないのです。さらに認知機能が衰えて、生活や仕事に支障をきたしていました。
毎日何かを買い忘れ、用事は一日一つするのが精いっぱい。仕事のミスも増えて、作った書類を見直すとミスだらけで自信がなくなりました。今までの自分ではないことが怖く、ショックでした。これが薬の副作用で認知機能障害だと気づく余裕もなかったのです。毎日毎日がただしんどく、うつ傾向にもなりました。

仕事のミスが副作用のせいだと職場で理解されなかったのですか?

直属の上司は、副作用でミスをしたり眠気や貧血を起こしている私を見守ってくれていました。
一方で闘病中だと知らない他部署の人からは、怠けていると思われていたのです。それを聞いて、職場に迷惑をかけている、このままではダメだと気づき落ち込みました。仕事はきっちりしたいのに、思うようにできない。仕事と治療の両立の難しさを痛感して、治療をやめることを決断しました。

抗がん剤をやめて、主治医の先生からは何も言われなかったのですか?抗がん剤をやめて、主治医の先生からは何も言われなかったのですか?
抗がん剤をやめて、主治医の先生からは何も言われなかったのですか?

自らやめて、その後報告したので「仕方ないね」と言われました。あのとき、第三者や精神科の先生、産業医の先生に相談できていたら、治療をやめずに済んだかもしれません。
両立の情報も相談窓口も知らなかったので、一人でパニック状態になり、薬を全部捨ててしまいました。

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