2024年5月27日 | お知らせ 質量分析計「LAMS-50K」が「IEEE Milestone」に認定
島津製作所のレーザーイオン化質量分析計「LAMS-50K」(1988年2月発売)が、電気・電子分野の国際学会The Institute of Electrical and Electronics Engineers(以下IEEE=アイトリプルイー) により「IEEE Milestone」に認定されました。認定の理由は「ソフトレーザー脱離イオン化技術を応用した世界初の製品で、分子生物学や医学などの分野に貢献し、新たな診断や創薬へと繋がった。装置開発者の1人である田中耕一は、2002年にノーベル化学賞を受賞した」になります。「IEEE Milestone」は「誕生から25年以上を経た重要な技術業績」を称えるものです。日本に関連した過去の認定実績は、指向性短波アンテナ、黒部川第四発電所、東海道新幹線、20インチ光電子増倍管、QRコードなどが挙げられます。なお今回の「IEEE Milestone」贈呈式は、本年11月に京都市で開催予定です。
「LAMS-50K」は、島津製作所で1984年10月に始まった「レーザイオン化法による高質量イオンの生成とその測定技術」の研究開発で生まれた複数の要素技術で構成されています。1つ目の技術は、ソフトレーザー脱離法(当社エグゼクティブ・リサーチ フェロー田中耕一のノーベル化学賞受賞の対象)によるタンパク質のような巨大分子を壊さずにイオン化する方法です。2つ目が、低分子から巨大分子までを高精度に分離する、傾斜電場リフレクトロンによる飛行時間型質量分離技術(TOF-MS、Time-of-Flight Mass Spectrometry)です。3つ目は、巨大な分子イオンを電気信号に効率的に変換する後段加速検出器(PAD、Post Acceleration Detector)です。4つ目は、刻々と変化するデータを高い時間分解能で高速に信号を積算するためのTDC(Time to Digital Converter)回路およびADC(Analog to Digital Converter)回路です。これらすべてが揃うことで、それまで不可能と考えられていた巨大なイオンの質量分析を実現しました。
「LAMS-50K」は1990年に米国の医療研究機関City of Hopeに納入され、癌などの疾患の研究に用いられました。本製品の発売が「レーザー照射によってタンパク質などを質量分析で調べる手法」の普及の契機となりました。
写真:レーザーイオン化質量分析計「LAMS-50K」
「LAMS-50K」概念図
(島津製作所の田中耕一が1988年に作成した図に説明を加筆)
関連リンク
2002年のノーベル化学賞に関するスウェーデン王立科学アカデミーのプレスリリース
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2002/press-release/
受賞講演の論文 (Nobel Lecture)
https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/tanaka-lecture.pdf
「IEEE Milestone」についてはこちら
https://ethw.org/Milestones:IEEE_Milestones_Program
「LAMS-50K IEEE Milestone関連説明」はこちら
https://www.shimadzu.co.jp/mass-research/ldi-ms.html