小型・高効率なEV駆動モーターの量産・品質管理に
貢献するバランシングマシン

電動化対応ソリューション | モーター関連

温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、いわゆる「カーボンニュートラル」の実現に向け、自動車業界ではCO2を排出するガソリン・ディーゼル車から電動化されたEV・HEV・PHEV・FCV車が注目され、各国、各社で電動化の取組みが加速しています。

自動車の電動化に向け、駆動用モーターの小型化・高出力化・大容量化への開発、量産化の取り組みが活発に進められています。一方で、小型・高出力化しながら高品質を保つためには、より厳密なアンバランス管理が必要となってきています。同時に、生産量を増やしコストを下げることが必要です。島津製作所はバランシングマシン(動釣合試験機)で、高品質なモーターの品質管理と生産拡大に貢献します。

高回転化が進む電動車の駆動モーター

EVなど電動車の駆動システムには、航続距離伸長のための車体軽量化、車内空間拡大のための小型化、低騒音・低振動化、低コスト化が求められます。

特に、駆動モーターには小型・低背化しながら高出力化することが求められており、そのためにモーターの回転数を高速化するアプローチが検討されています。モーターの出力はトルクと回転数の掛け算で決まり、トルクはおおよそモーターの大きさによって決まります。モーターの小型化のため、その出力向上は回転数を上げることによって果たそうとするためです。

ガソリン・ディーゼル車の駆動部品の最高回転数は6,000rpm程度ですが、EV車の駆動用モーターの最高回転数は現在20,000rpm程度に達し*1、さらなる高効率を求めるべく将来的には50,000rpmまで高める取り組みが進められています*2

より厳密に、より速く
アンバランスの測定と修正が必要な理由

一方で、高い品質のモーターを生産するにはモーターに残留するアンバランスを除去することが重要です。アンバランス(不釣り合い)とは、回転体の重心が回転中心からズレている状態のことで、アンバランスな回転体は、振動や騒音を生み、エネルギーロスや故障のリスクを高めます。

アンバランスのある状態では遠心力が発生します。遠心力は回転数の二乗に比例するため、モーターの回転数が上がることは、アンバランスの検査・管理をより厳密に行う必要があることを意味します。

また、自動車におけるEV比率は今後ますます高まると予想され、駆動モーターの需要も高まり、今までにない生産量が求められるようになります。さらに、電気自動車自体の低価格化のためにモーターのコストダウンも求められることになります。

そこで、モーター製造においては、サイクルタイム短縮による生産性向上とコストダウンが必要になり、製造検査におけるアンバランスの測定・修正工程も同様に短縮する必要があります。

こうしたアンバランスの高精度な測定、高速な修正を可能とするのが、島津製作所のバランシングマシンです*3

【 図1 島津製作所のバランシングマシンの外観一例 】

バランシングマシンによるアンバランス測定・修正の仕組み

アンバランス測定の仕組み

  1. 装置にモーターのロータなど、測定対象(ワーク)の軸をバネで懸架された振動架台にセット
  2. ワークを回転させる
  3. アンバランスがある場合は揺れが発生し、その振動をセンサが計測し、アンバランスの角度と大きさを算出

【 図2 島津製作所のバランシングマシン構造図 】

アンバランス修正の仕組み

  1. 「ワーク測定ステーション」で一次測定をおこない、アンバランスがあった場合は、搬送ローダーで「ワーク修正ステーション」に送られる。
  2. 「ワーク測定ステーション」で測定したアンバランス値から、修正箇所、量が自動で指示される。
  3. 「ワーク修正ステーション」で、アンバランスを修正すべく、アンバランスの原因となる部分で指示された量をドリルで削る。
  4. 再度「ワーク測定ステーション」に戻されアンバランスを測定する。
  5. アンバランス量が設定値以下になるまで、「測定」と「修正」を繰り返し、ワークのアンバランスを解消する。

【 図3 バランシングマシンの測定・修正プロセス 】

EVモーター専用バランシングマシンを開発

島津製作所では測定精度と高スループットを両立したEVモーター専用の全自動バランシングマシンを開発しました。

高速・高精度化を可能にする舟形架台構造

島津製作所の「DBM-AE50」は、装置の測定部に舟形架台構造を採用しています。ワークと駆動ベルトを直角に保ち、アンバランスに起因するノイズの影響を最小限にすることで、正確な測定を可能にします。これにより世界トップクラスの高い分解能を実現し、精密なアンバランス測定を可能にしています。例えば、弊社ラインナップでは300g、直径50mmのワークの外周に付着した0.6mgというごく微小なアンバランスを検出することができます。さらには、繰り返し測定による結果のばらつきも抑えます。

【 図4 舟形架台構造 】

高速修正によりタクトタイム短縮を可能に

また、修正ステーションのドリルを3次元動作させる島津製作所の独自技術によってワークの左右両面を同時切削することで、タクトタイムを削減しています。あるワークでのテスト結果では、測定からアンバランス箇所の切削まで約50秒で完了し、これは島津製作所の従来モデル比で約40%の時間短縮が図れたことになります。

※φ8ドリルで深さ10mmの修正穴を片面当たり2ヶ所、且つ1次修正で検査合格の場合

次世代モビリティ市場への展望

島津製作所は、長年にわたって自動車部品向けのバランシングマシンを提供してきました。これまで培ってきたノウハウを生かし、モビリティ領域で用途の拡大が見込まれるモーターの製品開発や量産ラインでの品質向上に貢献していきます。

島津製作所のバランシングマシンは、機械本体をモジュール化したことによりあらゆる測定条件・修正条件に対して柔軟に対応できます。今回ご紹介した製品以外にも、多数のラインナップを取り揃え、また特注仕様にも対応しております。詳しくは「問い合わせフォーム」からお問い合わせください。

*3 バランシングマシンは島津産機システムズ株式会社にて製造・販売しています。

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