医薬品分析・研究
新型コロナウイルス感染症治療薬候補の研究・開発支援

当社の仏グループ会社であるAlsachim SASは、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補である6種の既存薬向けに安定同位体試薬を開発しました。

安定同位体試薬は、医薬品候補化合物の効果や副作用、血中の薬物濃度の関係を調べる際などに用いられます。

新型コロナウイルス感染症治療薬の開発は人類にとって急務です。世界の製薬企業は、開発済みの薬の転用によって開発期間の短縮を目指しています。

本安定同位体試薬や液体クロマトグラフ質量分析計をはじめとする当社の分析装置によって、治療薬の開発に尽力する製薬企業や研究機関を支援しています。

ALSACHIM a Shimadzu Group Company
レムデシビル対応の安定同位体試薬
CLAM-2030
LC-MSシステム

注意:記載のAlsachim社製品は試薬製品であり、試験・研究目的での使用に限られ、体外診断、医薬品、食品、化粧品などの目的、および人体への使用はできません。

Alsachim社製の安定同位体試薬が対応する新型コロナウイルス感染症の治療薬候補
一般名称 用途
レムデシビル エボラ出血熱の治療薬
ファビピラビル 新型インフルエンザ薬
ナファモスタット
(製品名:注射用フサン®
急性膵炎治療剤
ロピナビル、リトナビル
(製品名:カレトラ®
HIV治療薬
ヒドロキシクロロキン
(製品名:プラニケル®
抗マラリア剤、全身性・皮膚エリテマトーデス治療薬
クロロキン 抗マラリア剤

※このたび発売する製品はLC-MS(液体クロマトグラフ質量分析計)向け試薬であり、治療薬・体外診断薬ではございません。

詳しい製品情報はこちら
(株式会社島津ジーエルシーのWebサイトへリンク)

現場からのメッセージ

Project Leader, Organic Chemistry Business Unit, Alsachim, France Claire Trécant (left), and Pierre-Olivier Schwartz

Project Leader, Organic Chemistry Business Unit,
Alsachim, France
Claire Trécant (left), and
Pierre-Olivier Schwartz

医薬品の開発に貢献するために

COVID-19の感染拡大が始まって以来、世界の研究機関がその治療法や新薬の研究開発に取り組んでいます。通常数年かかると言われる治療法の開発期間を早め新薬候補の有効性を実証しようとしている研究機関を支援するため、私たちのチームは、COVID-19の治療薬候補であるレムデシビルやヒドロキシクロロキン、ファビピラビルなどの分析に用いられる安定同位体試薬の開発製造を担当しました。

パンデミックが起こり、世界の治療薬研究の動向を注視していた私たちは、試薬の必要性を見越していました。臨床試験がすぐさま始まる中、研究機関への製品供給が急務となり、Alsachimの技術者を総動員しました。

時間との戦いとは別に、新たな課題に直面していました。感染防止のため、より少ない人数で作業し、メンバーの健康を厳格に管理する必要があったのです。(Alsachimが所在する)フランス・アルザス地域が感染拡大のレッドゾーン(危険区域)になり、外の状況に目を向け続ける困難さもありました。

こうした状況においても、Alsachimは島津グループの一員として「科学技術で社会に貢献する」という社是をイノベーションのテーマとして持ち続けました。私たちの仕事は、社是を体現したものだったと自負しています。

困難な時こそ、島津が世界の人々の健康や公衆衛生の課題に果敢に挑戦する企業であると証明することが必要です。 分析機器から消耗品、標準試薬までのトータルなソリューションで医薬品の血中濃度分析の開発に貢献するには、グループの技術の結集が不可欠です。

私たちの家族や友人、同僚と私たち自身の安全を守るために、危険な状況の中で医療現場に立つ方々にとても感謝しています。そうした方々の勇気と献身はかけがえのないものです。医療従事者の尽力に貢献するために私たちも努力を続けます。

現場からのメッセージ

Analytical Engineer, Reagent Kit Business Unit, Alsachim, France Fanny Dayot

Analytical Engineer, Reagent Kit Business Unit,
Alsachim, France
Fanny Dayot

アプリケーションでお客様をサポート

私の役割は、COVID-19治療薬の研究開発において、血漿中の分子を測定するためのアプリケーションを開発することでした。分析にはAlsachimの安定同位体試薬が使用されます。このアプリケーションでお客様をサポートし、COVID-19との闘いに貢献したいと思いました。

国やお客様ごとに異なるターゲット化合物への要望を網羅するのは時間的にも厳しく、対象にする化合物の検討に力を注ぎました。関連する臨床試験法や市場を調査し、多くの要望を満たす分子群をリスト化しましたが、適切な手法が不明確な新しい分子も存在しました。感染拡大の中、1つの分析方法を見出し、早急にまとめることに苦労しました。

このパンデミックは前例のない危機です。今後の予測がつかず、私たちはこれに対処しながら生きなければなりません。COVID-19治療薬研究開発のニーズに応えること。人の命にかかわる重大な社会課題の解決に尽力することは、プレッシャーであるとともに、私は大きな使命感に駆られました。

この未曽有の事態で実感したのは、私たちがお客様と共に最善を尽くすことで科学の発展と社会の持続に貢献できるということです。Alsachimと島津はCOVID-19治療薬の研究開発を支援していきたいと強く願っています。

最後になりますが、最善の方法で患者を救い、感染者に寄り添い闘ってきた医療関係者の方々に敬意を表します。彼らは大きな勇気と献身を示してくれました。そして、“これまでのような”日常や社会のために働き続けるすべての方々に感謝します。