お客様が使いやすい製品を追求する
シニア世代と連携したUX向上活動

1882年、創業当時の当社が発行した製品カタログ『理化器械目録表』には、「御好次第何品ニテモ製造仕候也」(ご要望に応じて、どんなものでもおつくりします)と記されています。この精神は現在にも受け継がれ、今年度からスタートした3か年の中期経営計画においては、「技術に立脚したカスタマーイン※1志向のトータルソリューションパートナー」になることを掲げています。
本記事では、当社が現在取り組んでいる、シニア世代と連携したお客様のニーズの把握と使いやすい製品づくりについてご紹介します。
- ※1 お客様一人ひとりのニーズに基づいた、最適な商品・サービスの提供
使いやすい製品を届けるために
当社の製品はさまざまなお客様にご使用いただいており、ユーザーの習熟度や使用環境は多様化しています。そのような状況でニーズに応えるためには、製品性能だけでなく、ユーザーエクスペリエンス(UX:製品・サービスを利用して得られる体験)の向上が重要です。
そのため当社では、国際標準規格(ISO9241-210)に定義された「人間中心設計」のプロセスに基づいて、実際の利用現場での調査や現場を再現した環境での評価を繰り返し、お客様の利用状況やニーズを製品開発に反映しています。この「UX向上活動」は当社の総合デザインセンターを中心に2018年から継続しており、UXの専門人材の育成や資格取得にも取り組んでいます。
製品開発で感じた課題
UX向上活動を進めるなかで、当社は2024年に「島津シニアベンチャークラブ(SSVC)」との連携でシニアユーザーによる製品評価体制を整えました。そのきっかけとなったのは、活動メンバーの吉見邦子(総合デザインセンター デザインユニット デザイン戦略G 係長)が製品開発のなかで感じた想いでした。

総合デザインセンター 吉見邦子
ある製品の開発過程において、病院で高齢の患者さんに使用感をテストしていただいたところ、20代や30代では指摘されない課題がいくつも挙がりました。この経験から、シニア層に評価に参加していただくことの重要性を考えるようになりました。また、製品評価において、製品の専門知識を持つ人材の確保が難しいことや、参加者の年齢層が若年層(20~30代)やミドル層(40~50代)に偏っていたことも課題だと感じていました。
これらの解決策を検討するなかで、当社グループ会社の退職者で構成されるSSVCの存在を知りました。在職中に培った技術や専門知識を活かして退職後も社会と企業に貢献したいという方々と、我々の想いが一致し、連携が始まりました。
シニア層がユーザビリティテスト※2へ参加することで、文字の見えづらさや操作に必要な力の程度、手指の動きの細かさなどにおいて若い世代では気づきにくい課題を見つけることができます。例えば、「ソフトウエアの文字が小さい」「装置の蓋の付け外しに力が要る」、「手が震えて操作が難しい」、「操作する箇所や工程が多いと混乱する」などです。これらを改善につなげることで、特定の世代だけでなく誰にとっても使いやすい製品づくりにつながるといいます。
- ※2 実際のユーザーや、想定するユーザー像に合致する人物に製品を使用してもらい、製品の使いやすさや問題点を明らかにするための評価手法

SSVC会員によるユーザビリティテストの様子。進行役は、緊張感を和らげる適度な声掛けや、水分補給を促すなど参加者の心身の状態に配慮しながらテストを進める
SSVCとの連携の成果について吉見は「現在は分析計測製品や介護施設向け製品などの評価を進めています。連携によって、若年層の評価では見過ごされやすい“使いにくさ”があることが明らかになりました。製品開発における課題として把握できたことで、UX向上の可能性が広がったと感じています。また、シニア層の評価では、参加者を焦らせずに進行し、操作中に考えていることや戸惑いなどを丁寧に聞き取ることが大切です。評価を重ねるなかで、ユーザビリティテストの進行役としての専門性も身に付いてきました」と話します。
未来の製品を生み出す原動力
お客様によりよい製品を提供するために始動したUX向上活動ですが、SSVCとの連携により別の側面も生まれました。
評価に参加したSSVC会員からは、「社会に役立てることが嬉しい」「現役時代を思い出して楽しい気持ちになった」という感想が吉見のもとに届いています。また、ユーザビリティテストは現役の開発担当者と元従業員の交流の場になることもあります。「ある時、最新機種に触れた元従業員が『スペックに感心した』とおっしゃったんです。先輩からのお褒めの言葉に開発担当者がとても嬉しそうにしていたのが印象的でした」(吉見)

活動の今後について、吉見は次のように話します。
よりよい製品を開発したいという従業員の思いと、社会に貢献したいという元従業員の思いが、現在の取り組みにつながり、未来の製品を生み出す原動力となっています。お客様のニーズや、ユーザーの声を大切にしながら、これからも世代を問わず、誰もが安心して使える製品の開発を続けていきたいです。
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