科学と社会をつなげる力を育てる
サイエンスコミュニケーター養成プログラムを開講
島津製作所は、サイエンスコミュニケーション分野における社内の人材育成を目的として、「サイエンスコミュニケーター養成プログラム」を開講しました。本プログラムは、学校法人同志社 同志社大学(以下、同志社大学)と締結した協定に基づく、リスキリングやスキルアップの取り組みの一環です。科学をわかりやすく伝えるための基礎的な知識とスキルを、サイエンスコミュニケーションの基礎コースとして位置づけ、オンデマンドで社員に提供しています。
| テーマ | 講義 | |
|---|---|---|
| 1 | 「刺さる広報」魅力的なプレスリリース作り | 科学広報の考え方 |
| 2 | 魅力的な話し方、伝わるプレゼンテーション | 情報が伝わる話し方 |
| 3 | AIの時代をどう生きるか | これからのAIと企業 |
| 4 | 新興・再興感染症と専門家の情報発信 | 感染症の科学発信に学ぶ |
| 5 | ELSI(科学技術の倫理的、法的、社会的課題) | ELSIという視点 |
今回は『1.「刺さる広報」魅力的なプレスリリース作り』と『5. ELSI(科学技術の倫理的、法的、社会的課題)』より一部を抜粋してお届けします。
魅力的なプレスリリースを届けるには
企業や研究機関が発信するプレスリリースは、どのように科学記者のもとに届き、報道へとつながっていくのでしょうか。科学記者として25年の経験を持つ同志社大学生命医科学部の元村有希子特別客員教授に解説いただきました。

左から同志社大学元村特別客員教授、同志社大学ハリス理化学研究所の桝太一助教
<講義より抜粋>
プレスリリースに目を通す記者は、必ずしもその分野の専門記者とは限りません。プレスリリースは、事実に基づいて、研究成果を正確に発信することは大前提ですが、発見や成果に至るまでの経緯やストーリー、さらにその成果が社会や世界にどのような影響を与えるのかを意識して伝えることが重要です。また、世界情勢などの社会的背景によっては、たとえ画期的な成果であっても報道に至らない場合があるため、発信のタイミングも重要な要素となります。
責任ある研究開発
新しい科学技術が社会に実装される際、その成果がもたらす影響は、必ずしも良いものだけとは限りません。画期的な技術であっても、倫理的(Ethical)、法的(Legal)、社会的(Social)な課題(Issue)に直面することがあります。こうした科学技術の「影」の部分を、頭文字を取ってELSI(エルシー)と呼びます。今回は、生命科学の研究者である同志社大学生命医科学部の舟本聡教授とともに、遺伝情報におけるELSIについて考えました。

左が同志社大学生命医科学部の舟本聡教授
<講義より抜粋>
遺伝情報は究極の個人情報です。本人の疾病予測に役立つ一方で、遺伝情報が明らかになることで差別や偏見を受けるリスクもあり、その影響は本人だけでなく親族にも及びます。発病や自覚症状がなくても、雇用を拒否されたり、保険に加入できなかったりといった不利益を被った例が既に出てきています。遺伝情報による差別を禁じる法整備が各国で進んでいますが、問題が起きてから対策を考えていては遅いのです。
遺伝情報に限らず、新しい科学技術を世に送り出すことでどのような課題が生じるのか、社会実装の前から考えることが重要です。未来を見据えた責任ある研究イノベーションが求められています。これは技術者や科学者だけの問題ではありません。法学や倫理学、社会学といった側面からも検討し、市民とのコミュニケーションを取りながら考えていくべき問題なのです。
本プログラム担当者のコメント
人事部人財開発室人財開発G 川下涼子(グループ長)
当社の社是である「科学技術で社会に貢献する」を実現するためには、専門知識や研究開発の成果を、その意義や社会への影響を踏まえながら、的確に発信する力が欠かせません。
本プログラムを通じて、社員が科学技術を分かりやすく伝える視点を学び、多様な受け手を意識したコミュニケーションを考える機会を得られたことは、大変意義深いことだと考えています。
オンデマンド講座の制作・提供にご尽力いただいた同志社大学の皆さまに感謝申し上げます。 今後も、こうした学びを日々の業務に生かし、新たな価値創出につなげていきます。
科学技術を適切に発展させ、社会に実装していくためには、文系・理系といった専門分野の垣根を越えて、さまざまな視点から科学に向き合い、より良い社会や未来の実現に向けてコミュニケーションを重ねていく必要があります。多様なバックグラウンドを持つ情報の受け手を想定して発信できること、また、さまざまな未来の可能性を見据えながら周囲の声に耳を傾けられる人材の育成が求められています。島津製作所は、「科学技術で社会に貢献する」という社是のもと、サイエンスコミュニケーション分野における人材育成にも継続的に取り組んでまいります。
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