食品からサステナビリティを考える
「Shimadzu 4th Global Food Summit 2025」
「フード」と「テクノロジー」を組み合わせた造語である「フードテック」。いま、食糧不足や環境負荷の増大といった「食」を取り巻く様々な問題を背景に、世界中で急速に取り組みが進んでいる分野です。島津製作所はフードテックの最先端であるシンガポールの顧客を中心に、食にまつわる最新情報や持続可能性についてディスカッションする「Shimadzu 4th Global Food Summit 2025」を開催しました。
シンガポールを中心とした食品業界の有識者209人が集まった
未来の「食」を支える技術を
SHIMADZUから
世界的な人口増加にともない、食糧の安定供給や環境保護などの課題が明らかとなりました。さらに健康志向の高まりを受けた機能性食品の開発やアレルギーへの対応、食品中の有害物質の検出など、「食」に対するニーズは多様です。
シンガポールは食糧の90%を輸入に依存しているため、気候変動や地政学的リスクに左右されない持続可能な食糧供給システムの構築に国をあげて取り組んでいます。そのため「食」に対する関心が高く、フードテック研究の最先端であると言われています。
2024年にシンガポールで開催したフードサミットの様子
島津グループの同国拠点であるShimadzu (Asia Pacific) Pte Ltd.(以下SAP)は2011年から「Shimadzu Food Summit」を開催し、世界中の有識者らと親睦を深めてきました。今年は大阪・関西万博と合わせて日本で初めて開催し、「Reborn & Sustainability: Safeguarding Our Future」をテーマに議論しました。
「タンパク質危機」の解決策になり得る培養肉
人口増加や食生活の変化に伴い、タンパク質の需要と供給のバランスが崩れる「タンパク質危機(プロテインクライシス)」が近い将来に起こるといわれています。解決策の1つが「培養肉」です。島津製作所は「培養肉未来創造コンソーシアム※」の一員として培養肉の社会実装を推進しています。
※「培養肉未来創造コンソーシアム」とは、「3Dバイオプリントによる食用培養肉製造技術に関する社会実装の具体的な取り組み」を目的に、2023年に大阪大学大学院工学研究科、株式会社島津製作所、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社、凸版印刷株式会社(現・TOPPANホールディングス株式会社)、株式会社シグマクシスによって設立。現在ではZACROS株式会社を加えた6者で活動を推進している。
「3Dバイオプリント技術」を用いた培養肉
培養肉は、動物から採取した細胞の培養によって作られる、代替肉の一種です。「細胞を培養して作る」という点で、ほかの代替肉と異なります。培養肉は食糧問題や環境問題の解決策の一つとしての可能性を持っています。
「3Dバイオプリント技術」を開発した松﨑典弥教授(大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻)が登壇
「Shimadzu 4th Global Food Summit 2025」では、採取した動物の細胞から筋肉や脂肪・血管をそれぞれ培養し、各繊維を実際の食肉の配置と同じように組み合わせる「3D バイオプリント技術」を開発した松崎教授が登壇し、培養肉の意義や大阪・関西万博の展示などを紹介しました。
培養肉のムスリム市場進出の
鍵を握るハラール対応
Mohamad Hafizi Abu Bakar博士(マレーシア科学大学)
さらに培養肉のハラール対応について、Mohamad Hafizi Abu Bakar博士が登壇しました。世界ではイスラム教徒が約20億人いると言われています。シンガポールではすでに培養肉が食用として市場に出回っていますが、イスラム教徒にとって培養肉が「食べられるのかどうか(ハラールか否か)」は極めて重要です。
Mohamad Hafizi Abu Bakar博士は、「ムスリム市場へ参入するためには、培養肉の製造プロセスにおいてハラール基準を満たす必要がある」と伝え、特にどの動物から細胞が取られたのか、またその動物が許可された方法で屠殺(とさつ)されたかなど、細かな注意が必要であると強調しました。
「食の未来」を支える
SHIMADZUのソリューションを紹介


岩田奈津紀(分析計測事業部 Solutions COE ヘルスケアソリューションユニット 食品G)
合わせて、島津製作所の主力製品の一つであり、食品業界で広く使用されているHPLC(液体クロマトグラフ)を用いたソリューションを紹介しました。食品の安全や品質向上に貢献することはもちろん、分析を行うために必要な前処理を自動化し、37種類のD/Lアミノ酸を迅速に同時測定した事例をもとに研究者の作業効率化も叶えることができる点を強調しました。
「CULTIVATED MEAT JOURNEY 2025」を
大阪・関西万博で開催

「CULTIVATED MEAT JOURNEY 2025」の様子

報道機関も多数訪れた
「Shimadzu 4th Global Food Summit 2025」の参加者は、翌日に大阪・関西万博を訪問しました。合わせて、「培養肉未来創造コンソーシアム」が主催した「CULTIVATED MEAT JOURNEY 2025」を見学しました。
「CULTIVATED MEAT JOURNEY 2025」動画(1分22秒)
本イベントは、培養肉を広く・正しく認知してもらうことを目的とし、ステージ上で培養肉を焼き、観客に匂いを楽しんでもらうというコーナーが設けられました。実際に香りを体験した人からは「想像以上にリアルなお肉のにおい」などといった感想が寄せられ、培養肉のある未来をより身近に感じてもらうことができました。
「Shimadzu 4th Global Food Summit 2025」担当者のコメント
Shimadzu Global Food Summitは、2011年にシンガポールで始まり、食品安全や分析技術の専門家が集うプラットフォームイベントとして成長してきました。今年は島津製作所の創業150周年を祝う形で日本開催とし、アジアから世界へネットワークを拡げる絶好の機会となりました。今回のテーマは「Reborn & Sustainability: Safeguarding Our Future」とし、持続可能な食品の未来を表現しました。さらに開催中の大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン「Nest for Reborn」のテーマともリンクさせ、Summitと万博が連動したスケールの大きなイベントとなりました。
