バイオマスエネルギー研究を産学連携で推進
中国・華南農業大学と共同ラボを設立
島津グループの島津企業管理(中国)有限公司(以下、SSL)は華南農業大学バイオマス工学研究院と共同で「華南農業大学バイオマス工学研究院-島津共同ラボ」を設立し、5月6日に開所式を行いました。両者は、バイオマスエネルギーに関する研究を産学連携で推進します。
社会課題の解決に向けて
華南農業大学バイオマス工学研究院は、広東省広州市にある研究機関です。中国政府が掲げる「農村振興」、廃棄物ゼロを目指す「Zero Waste社会」、「ダブルカーボン※」の実現といった国家戦略に対応することを目的に、2021年3月に設立されました。
※中国における脱炭素政策で、2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ(カーボンピークアウト)、2060年までにCO2排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すというもの。
同研究院は亜熱帯地域に位置します。その地理的特性を活かし、農業や林業の過程で発生する植物由来の廃棄物(農林業系廃棄物)に対する微生物を利用した環境負荷の少ない処理方法や、効率的な資源化技術を研究・開発しています。
SSLは以前から華南農業大学と共同研究を進めており、その成果には走査型プローブ顕微鏡(SPM)やX線光電子分光分析装置(XPS)向け「リグニン分析のためのアプリケーション」開発が挙げられます。リグニンは樹木や植物中で細胞同士をくっつけ、植物自身を支える役割を持っています。現在、その有効活用方法の確立が期待されている成分です。
今回の「華南農業大学バイオマス工学研究院-島津共同ラボ」の設立は、バイオマス(生物資源)の効果的なエネルギー転換に関する研究における両者の協力関係の強化と、バイオマスエネルギー研究分野における産学連携の推進を目的としています。同ラボには、島津の液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、原子吸光分光光度計(AA)、熱分析装置などが設置されました。
さらなる協力関係の強化へ
両者の代表者はそれぞれ次のように挨拶しました。
華南農業大学バイオマス工学研究院 谢君(Xie Jun) 院長
今回の共同ラボの設立は非常に重要な意味を持ちます。これまでの相互の信頼と協力の証であり、今後の連携強化への期待でもあります。今後さらに島津との協力を深化させ、互いの強みを活かし、より広い分野での交流・協力を共に模索していきたいと考えています。
このラボを基盤に、より先進的な機器・設備を活用して研究院での教育・研究を支援し、産学連携の推進による技術移転の円滑化と産業の変革・発展に貢献してまいります。
SSL 分析計測事業部 事業部長 吴彤彬(Wu Tongbin)
島津と華南農業大学バイオマス工学研究院はすでにパートナーとして、複数の研究課題に取り組んできた実績があります。今回の共同ラボ設立を新たな起点とし、それぞれの強みを最大限に活かしながら、バイオマス工学分野での深い連携を目指します。
島津は今年、創業150周年を迎えました。「科学技術で社会に貢献する」という社是のもと、分析計測機器分野で不断の革新を続けてきました。近年では、新薬・新素材開発を支援する「LCMS-9050」や、脂質や天然化合物の詳細な構造解析を実現する「OAD-TOFシステム」、医薬品・環境・食品分野の製造業や受託分析機関向けの「LCMS-TQ RXシリーズ」などの高性能な機器を販売しています。今後も、こうした革新的な技術を通じて、中国の科学研究事業や研究者の皆様に貢献してまいります。
