Gakken「大人の科学マガジン」×島津理化
感応起電機をテーマにコラボレーション
島津製作所は今年3月に創業150周年を迎えました。これを記念して、当社グループで教育用理化学器械・設備などの製造・販売を行う島津理化が、株式会社Gakkenの「大人の科学マガジン」とのコラボレーション企画として、「ウイムズハースト※式感応起電機」を生産しました。その製作秘話を島津理化の社長 中井泉と、大人の科学マガジンの西村俊之 統括編集長に聞きました。
- ※ウイムズハースト(Wimshurst)について「ウイムシャースト」「ウィンシャルスト」などさまざまな表記がありますが、今回の製品は過去の当社の目録(カタログ)での記載を採用しています。
二代源蔵 15歳で感応起電機を製作
今回のコラボレーションの題材となった「ウイムズハースト式感応起電機」は、創業期の島津製作所にとって成長の礎となった象徴的な製品でした。
1883年、英国の発明家ジェームズ・ウイムズハーストが、金属箔が貼られた2枚のガラス円盤を近距離で逆方向に回転させることで静電気を発生させる手動の発電機(感応起電機)を発表します。その1年後に島津製作所の創業者・島津源蔵の息子である当時15歳だった島津梅治郎(後の二代源蔵)は、図面だけを頼りにこのウイムズハースト式感応起電機を日本で初めて製作しました。
ウイムズハースト式感応起電機(島津製作所 創業記念資料館 収蔵)
この感応起電機は「島津の電気」と呼ばれ、教育や研究の現場で活用されました。さらに、レントゲン博士によるX線発見を受けた第三高等学校(現・京都大学)の村岡範為馳(はんいち)教授による追実験では、同装置が電源として採用されました。そこでは二代源蔵と弟の源吉が村岡教授の助手を務め、1896年10月のX線写真撮影の成功に協力しています。レントゲン博士のX線発見から11か月後のことでした。
対談:「大人の科学マガジン」と島津理化のコラボレーション
島津理化の社長 中井泉と「大人の科学マガジン」の西村俊之 統括編集長は、今回のコラボレーションについて次のように話します。
島津理化の社長 中井泉(左)と「大人の科学マガジン」の西村俊之 統括編集長
コラボレーションのきっかけ
中井 | : | ウイムズハースト式感応起電機は、島津製作所の歴史を象徴するものとして扱われています。島津理化は現在も感応起電機を販売しており、島津製作所の創業150周年のタイミングで何かできないかと思っていました。そんな時、当社と株式会社学研ホールディングスなどが協賛する科学の大会「科学の甲子園」でGakkenの方とお会いする機会があり、すぐに連絡しました。 |
西村 | : | 名刺交換をしたこちらの担当者から、「中井社長から直々に連絡をもらった」と聞き、驚きましたよ。 |
中井 | : | 実は、私は「大人の科学マガジン」の大ファンで、プラネタリウムや楽器のテルミンなどを作ったことがありました。感応起電機は部品点数もちょうど良さそうで、Gakkenさんなら作ってもらえるかもしれないと思いました。 |
西村 | : | 光栄でしたが、「他社から依頼をもらって金型から起こす」というのは初めてで、不安もありました。しかし、以前から「感応起電機がほしい」という読者の方々からのお声もあり、挑戦を決めました。 |
細部へのこだわり
中井 | : |
製品コンセプトからキットの細かいデザインまで、島津製作所 総合デザインセンターのメンバーに協力してもらいました。彼らはパッケージのメインビジュアルを、島津源蔵親子が店舗兼居宅として使用していた建物(現・島津製作所 創業記念資料館)で撮影することを早くから想定していたようです。 ![]() パッケージ写真は島津製作所 創業記念資料館で撮影された |
西村 | : | 試作の初期に明確なコンセプトを提示いただき、全員が統一したイメージを持って進められました。ただ、こだわりとコスト、どこで両者の折り合いをつけるかという難しい調整もありました。 |
中井 | : | こだわりといえば、量産目前にも関わらず、新しい提案をしてくださいましたね。 |
西村 | : | 開発チームから量産開始2日前に、「金属球に突起をつけると静電気がギザギザに見えます!」という連絡がありました。確かに通常は金属球の間に発生した電気は直線的なのに、突起を付けると、毎回異なるギザギザの線を描くようになります。 |
中井 | : | 「コストは上がりますが、いかがですか」という相談をいただき、すぐに採用を決めました。設計後もテストを続けておられた情熱に心を打たれましたし、科学の面白さが伝わる仕掛けになりました。一方で当初のパーツには、島津のメンバーが“電気が綺麗に見える寸法”を追求して決まったという経緯がありました。せっかくなので、2つとも採用して付け替え可能にしました。 |
今回の製品を使用した実験動画(島津理化制作)。金属球の突起の有無で電気の見え方が変わる(20秒~50秒)
プロジェクトを振り返って
西村 | : | 最初は御社や島津グループについて、「最先端の技術を持つ、真面目な企業」というイメージがありました。今回のプロジェクトで、「長い歴史を積み重ねてきた老舗企業」という印象に変わりました。私たちと同じように教育に携わっていた時期もあり、ライバルになっていた可能性もあったと思うと面白いですね。 |
中井 | : | 西村統括編集長には創業記念資料館の見学や、島津の歴代の社史の参照など、丁寧に調査いただきました。今回の製品が多くの方にとって、科学や当社グループに触れるきっかけになればうれしいです。私個人としても大好きな「大人の科学マガジン」とコラボすることができ、夢が叶いました。 |
西村 | : | 「それぞれの想いを共有しながら、いいものを作り上げる」という状態でしたね。良いチームで仕事ができて、楽しかったです。 |
今回のコラボレーション製品の詳細は島津理化のWebサイトをご覧ください。
