北米市場のアフターサービスを強化
島津グループに新加入した米国・Zef Scientific Inc.
島津製作所は2023年4月、「世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーへ」を基本方針とした3か年の中期経営計画をスタートさせました。その中で、北米製薬企業を重要市場と位置づけ、液体クロマトグラフ(LC)、質量分析計(MS)の先進的技術を有する研究者やお客様との共同研究・共同開発を推進しています。2024年4月には北米R&Dセンターを設立したほか、製薬企業向けのアフターサービス市場で高い評価を得る米国・Zef Scientific Inc.が島津グループに加わりました。
研究開発体制を強化:北米R&Dセンター設立
R&Dセンターメリーランド本部(SSI本社に併設)
2024年4月、当社の米国における計測事業を統括するShimadzu Scientific Instruments, Inc.(メリーランド州コロンビア、以下SSI)は、北米3か所にR&Dセンターを設立しました。同センターは製薬市場および臨床市場を主要なターゲットとしており、SSI本社に併設するメリーランド本部と、東海岸、西海岸で構成されます。先進的な技術・製品投資が旺盛な北米市場において、このR&Dセンター通じてお客様のニーズを正確に把握し、研究開発体制を強化していきます。
島津グループはSSIの拠点を活用して製薬企業向けに事業を拡大し、2022年度に510億円であった北米での売上高を、2025年度に700億円超まで伸ばす計画です。
アフターサービスを強化:Zef Scientific Inc.が島津グループに加入
北米R&Dセンターの開所と同月、SSIは北米で分析機器メンテナンス・サービスを手掛けるZef Scientific Inc.(カリフォルニア州オレンジ郡、以下ZEF)を子会社とし、ZEFが新たに島津グループに加わりました。
左からSSI社長 前田愛明、Zef Scientific Inc.創業者兼社長 Z. El Fallah、島津製作所分析計測事業部長 冨田眞巳
分析機器には、消耗部品の交換や修理・点検といった据え付け後のアフターサービスが欠かせません。近年、品質管理が厳格化している医薬品業界では、効率的な装置管理が重要です。こうした背景から、製薬企業が保有する分析機器に対して製造元を問わず一括したアフターサービスを提供する「マルチベンダーサービス(以下MVS)」の需要が高まっています。
ZEFはLCおよびLC-MSのサービスを手掛けるMVS専業会社で、製薬企業向けのアフターサービス市場で高い評価を得ています。所属するエンジニアは、幅広いメーカーの機器のメンテナンスに対応可能です。今後はZEFのサービスをSSIのお客様にも展開し、装置管理の効率化や品質確保に貢献していきます。
ZEFを構成する3つの拠点
ZEFは、2005年にZ.El Fallahらにより米国で設立されました。その後、カナダとモロッコにも事務所を構え、現在は3拠点に約90人の社員が働いています。
米国本社:創造と流通の拠点
米国本社はカリフォルニア州レイクフォレストに位置します。高まるサービス需要に対応するため、装置・メンテナンスのトレーニング、機器の改修、部品のテストに特化したラボスペースを拡張しました。本社はZEFの物流拠点でもあり、米国およびカナダのすべてのお客様とエンジニアのニーズに応えています。
モントリオール事務所:カナダでの島津装置販売とMVS提供、IT、品証、人事機能の拠点
モントリオール事務所は、カナダのお客様のための機器・部品販売拠点です。ZEF全体のIT、品質保証、人事業務を担っています。事務所には「Shimadzu Demo」が併設されており、当社の最新LCやLC-MSを体験いただくことができます。
モロッコ事務所:新興市場へのドアオープナー
モロッコ事務所は、ZEF全体の会計や管理業務を担い、エンジニアが修理部品を迅速に入手できるようサポートしています。今後数年間で、食品の安全性や残留農薬分析、環境市場での大きな成長が期待されています。
ZEF副社長 戸村武史のコメント
90名の小さい会社ですが、米国、カナダ、モロッコでグローバルに機能分担しながら事業を展開しています。社員も3拠点はもちろん、台湾、中国、韓国、フィリピン、インド、ロシア、アルメニア、アルバニア、パレスチナ、フランスをルーツに持つ者がおり、国際色豊かです。
北米に点在する技術者、3拠点の時差、それぞれのスキルの違いを理解し、相互に助け合う姿勢で業務に取り組んでいる姿が印象的です。SSIでの島津装置のトレーニングや定期的なミーティングなどを通じてSSIとの協力体制も構築され、具体的な情報交換を行い業績の拡大を目指しています。
1月にはSSIの技術者に対して、他社装置のトレーニングを開始予定です。そのほか、モロッコにおけるShimadzu Middle East&Africa FZEとの協力体制を構築し、同国での拡販に貢献すべく活動をしています。ワンストップでサービスを受けられるMVSの北米での需要は拡大しており、大手競合やエクイティファンドがひしめく中で、LCMSに特化した小さくてもキラリと光るサービスを提供して成長してゆこうと皆一丸となって進んでいます。
前列左から3番目が戸村