「LAMS-50K」が「IEEE マイルストーン」に認定
ノーベル賞を受賞した田中耕一が開発者の一人

「LAMS-50K」開発メンバー

「LAMS-50K」開発メンバー。左から吉田多見男さん、吉田佳一さん、
エグゼクティブ・リサーチフェローの田中耕一、秋田智史さん、井戸豊さん。IEEEの銘板とともに記念撮影

2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一らを含む5人が開発したレーザーイオン化質量分析計「LAMS-50K」が、米国電気電子学会(IEEE)の「IEEE マイルストーン」に認定されました。贈呈式と記念講演が11月15日に三条本社で開かれ、島津製作所のエグゼクティブ・リサーチフェローの田中耕一は「大学で電気が専門だった私にとって、IEEEの認定は憧れ。ノーベル賞より感慨深かったかも」と笑顔を見せました。

 

「IEEE マイルストーン」とは

IEEE(アイ・トリプルイー)とは、米国に本部を置く電気・電子分野における世界最大の専門家組織です。IEEEが認定する「IEEE マイルストーン」は誕生から25年以上経た製品や技術などから選ばれます。過去には「東海道新幹線」(JR東海)や「電卓」(シャープ)などが認定されています。
「LAMS-50K」は1990年に米国の医療研究機関「City of Hope」に納入され、ガンなどの疾患の研究に用いられました。「IEEE マイルストーン」では、分子生物学や医学などの分野に貢献し、新たな診断や創薬へと繋がった点が評価されました。

ノーベル化学賞の技術を搭載した世界初の製品「LAMS-50K」

LAMS-50K

「LAMS-50K」は、たんぱく質のような巨大な分子を壊さずにイオン化する手法「ソフトレーザー脱離イオン化技術」を搭載した世界初の製品です。田中は2002年にこの技術でノーベル化学賞を受賞しました。

 

「LAMS-50K」の基板を手に説明

「LAMS-50K」の基板を手に説明

贈呈式に先立ち行われた記者会見で、田中は「LAMS-50K」の基板を手に装置の開発について説明し「日本のエレクトロニクス産業が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と言われた時代の装置で、基板を見ると当時の最先端技術が詰まっていたことがよく分かる。かつて日本でしか量産されておらず『ジャパニーズ・パウダー』と呼ばれた金属超微粉末や、当時最高性能の国産電子部品を多数使って作り上げた。日本の統合的な技術開発力が重要だった」と振り返りました。

 

実際に使用していた大学時代の電気工学の教科書を紹介

また、自身が実際に使用していた大学時代の電気工学の教科書を紹介し「大学ではアンテナ工学が専門だったが、島津製作所に入社して化学という畑違いの分野に足を踏み入れた。戸惑いもあったが、電気で学んだ考え方は化学分野にも応用できた事例がいくつもあり、ノーベル化学賞を受賞できたこともそのうちの一つだ。異分野融合の大切さを実感している」と述べました。

40年前の開発プロジェクトメンバー
「5人衆」が集結し、喜び合う

実際に使用していた大学時代の電気工学の教科書を紹介

贈呈式には1984年10月に始まった開発プロジェクトのメンバーである通称『5人衆』が集まり、受賞を喜びました。田中は「LAMS-50Kに対する私自身の貢献は本当に一部。他の4人がいてこそ完成できたもので、チームの業績が評価されてうれしい」と述べました。

 

実際に使用していた大学時代の電気工学の教科書を紹介

IEEE 2020年度会長の名古屋大学 福田敏男名誉教授から、島津製作所の社長 山本靖則に「IEEE マイルストーン」の銘板が贈呈された

田中と同期入社である社長 山本靖則は「技術が認められるまでには長い時間がかかることがある。チームで作り上げた革新的な製品が認定され、格別の喜びだ。改めて敬意を表したい」と称えました。

 

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