表情筋で動くロボを出展?!
Maker Faire Kyoto 2024

表情筋で動くロボを出展⁉ Maker Faire Kyoto 2024

誰でも、どこでも、簡単に動かせるロボットを作ろう――その志に集った島津製作所の若手研究者8人が「Maker Faire Kyoto 2024」にブース出展しました。その舞台裏に迫ります。

 

ものづくり好きの祭典 Maker Faire

MakerFaireのポスター

Maker Faireとは米サンフランシスコに端を発するイベントです。老若男女問わずものづくりが好きな人たちによる展示会で、東京やローマ、パリ、深セン(中国)など世界各地で開催されています。

「失敗や完成度の高さを気にせず、ただただ自分の作りたいものを形にしてみる」という精神の通り、会場にはユニークな発想と新しいテクノロジーを使った装置が数多く展示されています。

「頬に力を入れて動かすロボ」を出展

島津の技術を使って、誰でもどこでも簡単に動かせるロボットを作ってみたい人はいませんか――。そんな突飛な提案に手を挙げたのは、入社5年目の若手研究者、原 康平。島津製作所の要素技術を研究している基盤技術研究所(けいはんな・みらい共創ラボ)で働いています。

 

左端が原 康平

左端が原 康平

「大学生のころ、会話をするロボットの研究に没頭していました。人間らしさやふるまいといった内面的な情報をロボットに覚えさせて、ごく自然にコミュニケーションをとらせるという研究です」。

誰でもどこでも簡単に動かせる――そのコンセプトを受けて考え出したのが「頬に力を入れるだけで自由自在に動かすことができるロボット」でした。原含む制作チームは、筋電(筋肉を動かすために発生する電位)を計測し、その変化をもとに力が入っているかを判定してロボットを操作するソフトウエアを作成しました。右の頬に力を入れると右に、左の頬に力を入れると左に、笑顔だと前に、真顔で停止します。

 

頬に装着しているのが、筋電を計測するデバイス

頬に装着しているのが、筋電を計測するデバイス

土台となる技術には、基盤技術研究所が研究中の「HuME」を使用しています。「HuME(ヒューム)」は、様々な生体信号の複合解析を基にした「感性価値の創出」を目指すプラットフォームであり、表情筋電デバイスは「HuME」の構成技術の1つです。

「喜怒哀楽」「いら立ち」「集中」などといった人間の心理状態は、頬をゆるめる、瞳孔が開く、汗をかくなどさまざまな行動や生体信号として表れます。これらを数値化して解析することで、無意識下を含めた人間の内面を分析することを目指しています。 

  • ※感性価値とは、利用者・消費者の感性に働きかけ、感動や共感を得ることによって顕在化する製品・サービスの価値を指します。

ロボット好きの若手研究者による挑戦

原自身、これまでに同様のソフトウエアを開発して発表したことはありましたが、操作はすべて制作サイドで行っていました。今回の「Maker Faire Kyoto 2024」では一般人が飛び込み参加する形でロボットを操作するため、誰もがすぐに理解して、簡単に操作できるようにする必要がありました。

「誰でも使えるようにする、というところが実は一番難しく、苦労したポイントでした。今回は体験者の多くは子どもということもあり、直感的にすぐに使えるように改良しなければなりません。頬への力の入れ具合を波形にして表示するなどUI(ユーザーインターフェース)にはかなりこだわりました」。

「またイベント前日、チームメンバーと一緒に設営しながら、頭の左右にライトをつけて動く方向が光るようにすればもっとわかりやすいのではという話になり、急遽ライトをつけてプログラムを書き換えました」

 

イベント直前に、ロボットの頭にピンクと緑のライトを取り付けた

 

ブースは大盛況!夢中になって動かす子供たち

操作時間は1人あたり30分。多くの子どもたちが参加しました。

ブースは大盛況!夢中になって動かす子供たち

デバイスを顔に装着すると、すぐに体験は始まります。「動かしたい方向の奥歯を噛みしめてみて」「両方の頬に力を入れるには笑ってみるとやりやすいよ」などと少しアドバイスをするだけで、小学生でも簡単に操作することができました。

制作チームリーダー 原のコメント

夢中になって体験してくださった人もいて、その姿を目の当たりにできたことが嬉しかったです。“誰でもどこでも簡単に動かせる”ということの本当の意味を、身をもって知ることができたことは、今後の研究にも大いに生かせそうです。

 

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