中国におけるメタボロミクス研究への取り組み
パートナーと共に革新的な研究の推進、関連技術の開発と普及を目指して

島津企業管理（中国）有限公司が中国科学院大連化学物理研究所と共同で開設した
「オミックス研究創新実験室」 

島津製作所は社会課題の解決に向け、世界中の研究機関との協働を進めています。本記事では、島津グループの中国におけるメタボロミクスに関する取り組みをご紹介します。

メタボロミクスとは

生体中に存在する分子全体を網羅的に解析・研究する学問「オミックス」は、近年注目されている研究分野です。「メタボロミクス」はオミックスの一つで、個体や組織、体液など主に生体内に含まれるアミノ酸や有機酸、脂肪酸などの低分子化合物を中心とした代謝物（メタボライト）を網羅的に分析・解析することで、生命現象を明らかにしようとする研究分野です。メタボロミクスは、疾患の診断や創薬のほか、食品などの専門分野の研究において広く用いられています。

島津グループのメタボロミクスへの取り組み

島津製作所は中国国内において、2015年、北京に「島津中国質量分析センター」を開設し、KOLとの協働によるアプリケーション開発に取り組んできました。2019年には、さらなる顧客・市場の開拓力強化と革新的な共同研究開発を目的に、「島津中国質量分析センター」を取り込んだ研究開発組織である、「島津中国イノベーションセンター」を設置しました。

島津中国イノベーションセンター

オミックス研究創新実験室

さらに2021年10月12日にはメタボロミクス分野での革新的な研究の推進、関連技術の開発、技術の普及を目指し、当社グループ会社・島津企業管理（中国）有限公司（以下、SSL）が中国科学院大連化学物理研究所と共同で「オミックス研究創新実験室」を開設しました。中国科学院大連化学物理研究所のGuowang Xu研究員の研究グループは、メタボロミクス分野で関連研究を中国で最も早く実施したチームの一つで、関連分野の研究を牽引しています。

メタボロミクス研究において、試料中に含まれる代謝物を一斉かつ網羅的に測定するためには、解析対象の物性に合わせて、ガスクロマトグラフィー質量分析（GC/MS）と液体クロマトグラフィー質量分析（LC/MS）の両方の分析技術が必要です。当社の高度な質量分析技術、高品質の機器・サービスと、中国科学院大連化学物理研究所の卓越した技術を組み合わせ、協働で新しいイノベーションを創出し、それらを臨床、環境、食品分野等のアプリケーションに適用することを目指しています。

「オミックス研究創新実験室」の紹介映像（中国語）

SSLが中国でメタボロミクスに関するセミナーを開催

6月28日、SSLは中国科学院大連化学物理研究所と共同で「包括的および空間分布メタボロミクス新技術」に関するセミナーを開催しました。メタボロミクスの最先端の解析手法を探ることを目的に、メタボロミクス研究に関する最新の進捗状況と成果を紹介する場として実施されました。

当日は中国国内から130名以上の研究者が参加し、Guowang Xu研究員（中国科学院大連化学物理研究所）ほか、各分野の専門家が講演を行いました。セミナーの冒頭でXu研究員は講演を行い、中国各地のメタボロミクス研究者を歓迎しました。 島津中国イノベーションセンター・所長のXiaodong Liは、「この先のメタボロミクス研究が、より実り多いものになることを楽しみにしています」と述べました。

Guowang Xu研究員（中国科学院大連化学物理研究所）

Xiaodong Li (島津中国イノベーションセンター・所長)

その後の報告会では、Xu研究員が、近年のメタボロミクス研究の発展、SSLとの協力プロセス、および「包括的なメタボローム解析にむけて」というタイトルで最新の研究成果を紹介しました。

その他、以下の内容で発表が行われました。

セミナー参加者はオミックス研究創新実験室を訪問した

セミナーの最後には、SSLマーケティング部の教育マネージャー・Yanhong Houが、参加者に感謝の意を表し、「今後、各分野の専門家である皆様とのコミュニケーションの機会が増えていくことを楽しみにしています」と話しました。

SSLと中国科学院大連化学物理研究所は今後もオミックス研究創新実験室を通して、研究と人材育成の分野で継続的に協働し、メタボロミクスの分野でのさらなる革新的な研究実施を目指します。