創薬に貢献する四重極飛行時間型質量分析計
島津製作所の製品や技術がどのように役に立っているのかご紹介します。今回のテーマは質量分析計です。
この機種の中でも最高クラスの精度を有する四重極飛行時間型装置について、製薬分野との関係をご紹介していきます。
質量分析計の概要
物質は、原子やその集まりである分子から構成されています。原子や分子をイオン化して、それらの質量を測定する装置が質量分析計です。
原子や分子は、それぞれ固有の質量を持っています。質量分析計を用いて質量を特定することで、どのような物質がどれだけ含有しているかを調べることができます。
原子や分子の質量は非常に小さく、天びんやはかりに乗せて計測することはできません。そこで、質量分析装置によってサンプルをイオン化し、それぞれのイオンを分離して検出、計算処理することで初めて質量を測定することができます。
四重極飛行時間型装置とは
質量分析計には様々なタイプがあります。四重極飛行時間型の装置は、次の方法でイオンを分離します。
① | 電圧のかかった4本の金属ロッド(四重極)による電気的作用で、選択的にイオンを通過させる。 | |
② | イオンをフライトチューブ内に通し、検出器まで飛ばす。イオンごとに飛行した時間の差を導き出し、質量の差に変換する。 |
四重極飛行時間型の装置は、分解能や感度に長けていることが特徴です。
創薬への貢献
質量分析装置は、食品、化学、環境など各分野で用いられます。中でも、多数の質量分析計が稼働する業界として、製薬が挙げられます。製薬企業が研究開発に注力しているのは言うまでもありません。
難病の治療薬となる有効成分の候補化合物探索といった領域を支えています。
フラッグシップ機開発担当者の声
当社は、2022年6月に、四重極飛行時間型質量分析計「LCMS-9050」を発売しました。世界最速の正負イオン同時測定を可能とし、分析時間を当社従来製品比で1/2に短縮、質量分解能を1.5倍に向上させた当社最高級モデルです。
開発担当者の声をご紹介します。
当社は質量分析メーカーとしては50年以上の歴史がありますが、四重極飛行時間型の装置としては後発メーカーになります。そこで、実績のあるトリプル四重極質量分析計で培った高速性と高感度を両立する測定技術を応用し、短期間でフラッグシップ機のリリースを成し遂げました。
「LCMS-9050」で実現した正負イオン同時測定は、このタイプの装置ではオンリーワンの特許技術によって実現しており、従来機に対してユーザビリティの面で明確な優位性があります。
質量分析は難しい技術であるからこそ、簡単に扱えるようにすることが、幅広い分野における製品開発や品質向上の下支えに繋がります。今日のフラッグシップ機が当たり前の汎用機になる未来に向けて、私たちは知恵を絞り続けます。
システム構成例