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2022年6月22日 | プレスリリース 新薬・新素材開発を支援する世界最速の正負イオン同時測定可能なQ-TOF型質量分析計
高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-9050」を発売

(左)高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-9050」(右)システム構成例(超高速液体クロマトグラフNexera+LCMS-9050)

(左)高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-9050」
(右)システム構成例(超高速液体クロマトグラフNexera+LCMS-9050)

島津製作所は、6月22日に高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-9050」を発売します。「LCMS-9050」は、当社主力製品である質量分析計(MS)のうち「Q-TOF型MS」と呼ばれる製品です。当社は2018年に「LCMS-9030」で初めてQ-TOF型MS市場に参入しており、本製品はその後継機種となります。分析時間を従来の半分に短縮しつつ信頼性の高いデータ提供を可能にした、当社最高級モデルです。

MSとは、物質を原子・分子レベルに分けてその大きさや数を測定することにより、何の物質がどのくらい含まれているかを調べる分析機器です。試料を導入する導入部、原子・分子をイオンにするイオン化部、質量ごとにイオンを分離する質量分離部、そのイオンを検出する検出部、データ処理部などから構成されます。Q-TOF型MSは、四重極(Quadrupole)と飛行時間型(Time-of-Flight、TOF)という二種類の質量分離部を持ち、非常に精密な分析が可能なMSです。主に製薬、化学、大学、研究機関で使用されており、「高精度」かつ「高感度」「高速」「高分解能」という要素が求められる最先端の研究機器です。ただ従来の「Q-TOF型MS」は高精度なデータがとれる一方、「装置構造が複雑で、データの信頼性と分析時間短縮を両立することが難しい」「繊細な取り扱いと頻繁な質量校正が必要で手間がかかる」といった課題がありました。

 

Q-TOF型MS構造図

Q-TOF型MS構造図

本製品は、質量分離部の電圧切替を高速化したことで、正イオンと負イオンの同時測定を可能にしました。正負イオン双方の測定は、1つのサンプルから得られる情報量が増えてデータ信頼性が向上するため、製薬の新薬開発や化学の新素材開発用途で必要とされています。本製品では正負イオン双方を測定した場合の分析時間が競合比最速、従来比半分になります。また、ヒーターや温度センサーの配置最適化により質量校正の頻度を抑えつつ、信頼性の高いデータを取得できます。分解能は従来比1.5倍に向上しました。加えて、当社の有する幅広いラインナップの装置と組み合わせて、用途に応じた装置構成にすることが可能です。顧客ごとのニーズに合わせた使い方を、製薬の新薬開発や化学の新素材開発用途に提供していきます。

当社は本製品を通じて、より簡単に信頼性の高い分析データが取得できる環境を実現していきます。また、今後更にMSのラインナップを充実させ、製薬、化学、食品、環境など様々な分野の研究開発・品質管理に貢献してまいります。

新製品の特長

1. 分析時間を従来比半分に短縮

MSの質量分離部では、正負それぞれのイオン測定に必要な電圧が異なるため、両極性の電圧を安定的にコントロールする技術が必要です。特にQ-TOF型MSでは、電圧変動によるデータへの影響が生じないよう電圧を切り替えた後の待機時間を長くとることが通常で、一度の分析中に正イオンと負イオンを同時測定することは難しいとされてきました。本製品は、電圧を安定的に制御する装置設計と、独自のデータ補正技術UFStabilizationを搭載したソフトウェアにより、電圧変動によるデータへの影響を取り除くことができました。正負イオンの同時測定を実現し、信頼性の高いデータが競合比最速かつ従来の半分の時間で取得できます。正負イオンの同時測定は、製薬の新薬開発、化学の新素材開発や、食品安全・環境での不純物規制対応用途など、正負イオン双方の測定が必要な用途に特に力を発揮します。

2. 使いやすさを追求し優れた基本性能を実現

Q-TOF型MSには、測定精度の安定性、つまり室温などが変化してもデータが変動しないことが求められます。Q-TOF型MSは質量分離部の金属部品が室温変化で数十マイクロメートル膨張しただけでもデータに影響が生じるため通常は、使用する都度、質量校正が必要です。本製品では、ヒーターや温度センサーを最適配置し、外的要因によるデータへの影響を抑制したことで、頻繁な質量校正なしで長期間安定したデータが取得できます。また、本製品は質量分解能が従来比1.5倍に向上し、より精密な質量測定が可能になりました。バイオ医薬品など高分子のサンプルでも正確に分離・確認することができ、解析業務の負担を低減できます。

3. 高い拡張性で顧客ニーズに合わせた分析結果を提供

島津独自の多様なオプションユニットと組み合わせ可能な高い拡張性を有しています。例えばDPiMS QT(探針エレクトロスプレーイオン化キット)と組み合わせると、微量サンプルでも前処理無しで分析できるようになります。iMScope QT(イメージング質量顕微鏡)との組み合わせによる、顕微鏡による光学イメージと質量分析イメージの同時表示にも対応します。製薬の新薬開発や化学の新素材開発用途で特に必要とされる、顧客ニーズに合わせた高い拡張性と広い選択肢を提供していきます。

 

※あらかじめ質量の分かっているサンプルを分析して、検出された信号から質量数を算出する際の補正要否やその程度を決定すること。日本質量分析学会は「質量較正」との表記を推奨。

価格 5,980万円~(税別)
目標販売台数 発売後1年間で国内外合わせて40台

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