国内外の科学者にとって魅力ある国を目指す
タイ国立科学技術開発庁
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本日は、科学技術振興に注力するタイ国立科学技術開発庁(National Science and Technology Development Agency: NSTDA)を特集した「『タイ・科学技術立国』への道のり」をご紹介します。
タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)の役割
タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は、タイの各研究機関が個々に持つナレッジの集約などを目的として、1991年にタイ政府によって設立されました。科学技術の振興や人材育成を担っています。
NSTDAのNarong Sirilertworakul長官は「研究者たちが垣根を越えて協働し、国のニーズに応えるソリューションを生み出すこと」を狙っており、そのためにも「NSTDAを国外の研究者にもっと知ってもらいたい」と考えています。
島津製品が稼働するNSTDA特性評価試験サービスセンター
2015年に開設されたNSTDA特性評価試験サービスセンター(NSTDA Characterization and Testing Center: NCTC)では、液体クロマトグラフ質量分析計やガスクロマトグラフ質量分析計をはじめとする島津製作所の分析計測機器が数多く稼働しています。
同センターは物性評価や化学分析など幅広い分析試験サービスを提供しており、2019年に受託したサービス件数は4,000件にものぼります。
NSTC・Natthaphon Wuttiphan所長は「島津製作所は、分析科学の技術やノウハウを共有し、NCTCの職員がテクノロジーの専門家になれるようサポートしてくれています。科学技術の習得はタイの産業発展において非常に重要な役割を果たします」と言います。
NSTDA・Narong Sirilertworakul長官(左)と NCTC・Natthaphon Wuttiphan所長(右)
NCTCで利用されている島津製作所の液体クロマトグラフ質量分析計
科学者の国際ネットワーク構築に向けて
NSTDA・Narong長官は、NCTCのような研究機関における最先端の装置の導入や企業との連携は、研究自体を促進するだけでなく、科学分野にさらに多くの人材を呼び込む力になると考えています。
カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナムなど近隣諸国から、多くの研究者が学位取得のためタイを訪れます。Narong長官によれば、タイに魅力を感じて学位取得後も滞在を延長すること、そうした研究員が自国へ戻ることが国際ネットワークの拡大につながるといいます。
「我々には、大きな目標があります。それは、タイの人々の生活の質を向上させること。タイの豊富な天然資源という強みに加え、島津製作所の分析科学のノウハウと幅広い機器があれば、その達成に近づけるに違いありません」と道のりを思い描いています。
■ インタビュー記事「『タイ・科学技術立国』への道のり」全文を読むにはこちら
※ 本記事内における人物の所属団体および肩書等の情報は、インタビューを実施した2020年1月時点のものです。
現地で取材した当社の担当者から
NSTDA/NCTCには若手の研究員・化学者が多く、活気がありました。一方で、NSTDAのNarong長官は、タイで科学者を目指す学生が少ないことを懸念されています。この要因の一つに、科学者の仕事がどういうものか、医師などと比べて分かりにくい点があるとして、次世代への科学教育や情報発信の重要性も訴えていました。
取材を通してNarong長官とNatthaphon所長からは、科学者同士のネットワーク構築や企業から科学者へのノウハウの共有など、グローバル規模での“人のつながり”への強い意識も感じました。